第58話 帝国と皇帝21

  それから一通り街の様子を見回り、城に戻る前に銃器が頼んだ店に向かった。

 店主が三人を出迎える。

「ちょうど城に連絡を入れようと思っていた。頼まれていた品ができた」

「そうか」

「ちょっと待ってろ。持ってくる」

 店主は奥からレンの頼んでおいた拳銃ともう一つ大きい鞄を持ってくる。

「モーントシャインだな。そっちはシャルロッテの注文品か?」

 シャルロッテに聞くが首を横に振り否定する。

 ティアは銃を頼んでいない。

「まあ次来る客のだろうな」

「お前にだと」

「いや。俺は注文していない」

「お前にって注文を受けた」

 そう言って店主はレンに手紙を渡す。

『親愛なるレン様。貴方に銃を送ります。貴方のRより』

 二人でそれを読み、首を傾げる。

「誰なんでしょう?」

「知り合いでRから始まるのって」

「ロサリアさんとか?」

「いやいや。流石にロサリアはない。あいつが帝都で銃を用意している方が誰かわからないよりも怖いくらいなんだから」

「じゃあ誰なんでしょう?」

「さあ?」

 レンはよくわからないとしながら鞄を開けてみる。

 青い炎をイメージさせるような白銀のライフル銃が入っていた。

 レンは手に取り構えてみる。

「俺の好みに合わせてある」

 レンの好みを完全に理解しているかのようにライフル銃はカスタマイズされていて、注文者はレンのことを良く知っている人物だとわかる。

「本当に誰が」

「帝国政府からではないのですか?」

「いえ。政府からそのような報告は聞いておりません」

「そうですか。レンくんどうします?」

「この感じだと凄く高いからな」

「高いどころじゃねぇぞ。完全にオーダーメイド。複数の企業が協力して作った銃だ。そこの侍女の給料数年分くらいかかっている」

 シャルロッテはイングリットの侍女だが、普通の侍女の仕事だけでなく護衛、役人と多岐な仕事をしている。

 相当高額な給料をもらっているはず。だとしたら相当な値段の銃となる。

「使えってことだろうが。店主。依頼主は誰なんだ?」

 レンが聞くと店主は相当困ったというような顔をして後頭部を手でかいていた。

「なんつったらいいか。あれだ。お前のことを思っている女だ」

「はあ?」

 意味が分からないという反応を返すしかなく本当にどうしたものかと悩む。

「まあ、銃は良い銃なんだ。後からの要求とかが怖いが使わせてもらおう」

「わかりました。じゃあ、その子にも名前をつけないとですね」

「名前か。そう言ったセンスはないからな。ティア、何かアイディアあるか?」

「アイディアですか……シャルロッテさん。力を貸してください」

 まさか話を振られると思っていなかったようで油断していたシャルロッテは驚いた表情を見せる。

「えっ? 私でございますか!?」

「はい。折角この場にいるのですから」

「左様でございますか……」

 突然言われてもというように困りながらもすぐに思いつき話す。

「シュテルンなどどうでございましょうか? 帝国の言葉で恒星という意味でございます」

「いいですね。シュテルン。可愛い感じですし」

 ティアは気に入ったようにしているのでレンもそれでいいというように頷く。

 料金を払い二丁の銃をそれぞれしまう。

 予期せぬ形で新たな武器を手に入れたレンは城へ戻のだった。

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