第33話 式典へ1
レンが病院で目覚めてから一週間、病院から退院することとなりアパートの部屋に戻る。
「久しぶりの自分の部屋だ」
レンは椅子に座り外を見ながら身体を伸ばす。
「そうですね。レンくんは病院にいたのが半月で、その前は首都フルールに行っていましたし」
「ほんと任務でもここまで帰ってこられなかったことはなかった。大家の婆さんにもクーナを預けたままだし、紅茶の茶葉の一つでも持って礼を言わないとな」
「ということは、茶葉を買いに行きますか?」
「ああ。行く」
「じゃあ行きましょう」
二人で出かけようとしたところ玄関のドアが叩かれる。
『アッシュ。いるよな?』
「ああ。ノアか。いる」
ノアとロサリアが扉を開けて入ってくる。
「おっと、出かける前だったか?」
「ああ。ちょっとな。何かあったか?」
「お前とティアに招待状だ」
ノアはレンとティアに封筒を投げて渡す。
わざわざ封筒に蝋の印璽がされ宛名も丁寧に書かれている。
「これは共和国の公式の印璽ですね」
「やっぱりか」
レンは中身を見るまでもないと興味を失うがティアはナイフで封筒を開けて中の手紙を出す。
「えっと。魔獣の巣の破壊を祝う式典への招待です」
「興味がない。俺の代わりにノア行ってくれ」
「今回は無理だ。お前を指名しているし、国民の前でやるから代役が効かない」
「さらに面倒だ」
「レンくん。出ましょう」
「ティア……」
なんでそんなことを言うんだというように眉をひそめる。
「だって、あれだけ大変だったことの一番頑張った人をみんなに知って欲しいですから」
「……わかった」
レンはティアの想いの籠った表情の説得に諦めたというように封筒を開ける。
「ノア。確かに受け取った。わざわざありがとうな」
「いいってことよ。じゃあ、俺らはこれからデートだからいくぜ」
「はいはい」
ノアたちを見送るとレンは封筒から自分の分の招待状を出す。
するともう一枚手紙が入っていることに気がつく。
「これは……」
「私のには入っていませんでした」
「そうだな」
レンは手紙を広げて内容を読む。
「……」
「レンくん?」
「少し待ってくれ」
レンは集中して読み間違えの無いように真剣に手紙を読んでいた。
ティアはどんな内容なのか気になるようでそわそわしている。
数分後、読み終えたレンは手紙を招待状と共に封筒に戻す。
「レンくん。どんな内容だったのか聞いてもいいですか?」
「ああ。式典の夜会に会えないかっていう内容だった」
「どなたが?」
「一人で来いって書いてあった相手だからな。流石に言えない。すまないな」
「いえ。大丈夫です。ただ心配で」
「なるほど。罠ってことを考えたのか。大丈夫だ。今、俺は神創兵器を二つ起動できる男だ。価値的に殺そうとしてくることはない」
「……なるほど。確かに殺した方がデメリット大きいですから」
「そういうことだ。気楽にパーティー行くって感じで行こうか」
「はいっ。でもフルールにまた行くことに」
「それは本当に困った。大家の婆さんには世話になったじゃなくて世話になるのか。あいつらがこっちにこればいいのに」
「貴族は色々大変ですから」
「そうか。まあ、一応、予定通り買い物行くか」
「はい」
二人は仲良く買い物に向かった。
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