第30話 魔獣の王5

 二十分後、<百獣の王>の核の活性化により想定よりも早い活動再開となりレンとティアは茂みをかき分け急ぎ攻撃ポイントに向かう。

「レンくん。前方に魔獣の反応が」

「回避は?」

「できません」

「わかった。最小限の消費で突破する」

 レンは飛び出してきた魔獣五匹をブルーローズの一薙ぎで倒し先を急ぐ。

「他の状況は?」

「皆さん、<百獣の王>と戦っています。基地に損傷はありませんし、負傷者もいないみたいです。ただ足止めは上手くいっていないようで爆弾の設置がギリギリというところです」

「そうか」

 レンでなければ足止めは難しいということがわかっているため、足がそちらに向かいそうになるがそれでは意味がなくなると堪え目的地に走る。

「もうすぐです」

 ティアの声の後、茂みが無くなり開けた高台に着く。

 まだ<百獣の王>との距離はあるが上を見なければ角を確認することはできない。

「爆弾で穴を開けて頭部を下げさせる。それでレンくんが角を斬るのですね」

「ああ。だけど、その前に魔力を集めなければならない。その時、俺は戦うことができない魔獣が寄って来たりしても対処できない。だから一番危険だ」

「そうですね。下手に魔力を使って魔獣を呼ぶわけにはいきませんし。加減が難しいですね」

「だけど、足りないと角を斬れない。だからやるときは全力で」

「はい!!」

 ブルーローズを鞘から抜くと魔力を少しずつ集めていく。

 蒼い炎が蛍のように周囲に飛ぶ。

「いきます」

 ティアは両手の手の平でレンの背中に触れる。

 ドクンッ。

 ティアの魔力が体内に送られ異物だと心臓が拒否する。

「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫だ。少し驚いただけ。続けてくれ」

「は、はい!! あ、あの方法変えていいですか?」

「ん? ああ。ティアのやりやすいような方法でいい」

 ティアは後ろからレンに抱きつきその状態で魔力を送る。

「レンくん。私はレンくんと出会えてパートナーとしていられて凄く嬉しいです」

「俺こそ。俺の人生の中で一番楽しい時間だった。正直、ティアなしの生活なんては考えられないくらいに。だからずっと俺の傍にいてくれ」

「はい、ずっと一緒にいます」

 ティアはさらにぎゅっと腕に力を入れる。

 すると蒼い炎が舞いブルーローズの輝きにティアの瞳の色と同じ碧色の炎が混ざる。

 レンは大きく息を吐くと魔力を展開する。

 ティアが期待以上の力を示してくれた。ならば今度はレンが答える番だ。

「レンくん。もうすぐ起爆します。皆さん上手くやれたようです」

「ああ」

「<百獣の王>起爆地点に到達、爆破します。3、2、1」

 ティアの声通りに起爆音と土埃が舞う。

「頭部は!?」

 次第に土埃が晴れ<百獣の王>の頭部が見える。

「下がっています。角が私たちの下にあります」

「ああ。ティア」

「はい」

 ティアは身体を放すとレンは振り返り頷く。

「行ってくる」

「いってらっしゃい」

 ティアに見送られ、レンは崖から飛び出した。

 ティアは疲れたというようにゆっくり腰を下ろし乱れた呼吸を整えようと息をする。

「レンくん」

 祈る様にティアは胸の前で手を握った

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