第26話 魔獣の王1

 遠吠えのような鳴き声が聞こえた気がしてレンは目を覚ます。

 隣のベッドでは気持ちよさそうに寝息を立てるノアがいた。

 窓の外を見るのだが平常で静かだった。

「気のせい……っ!!」

 強烈な悪寒に襲われて巣があった方角から何かが来ると実感する。

「ノアっ!! 起きろ!!」

 レンは寝ているノアを揺らして起こす。

「あ、何だよ。さっき寝たばかりだぞ」

「いいから起きろ!!」

 レンの尋常ならざる様子にノアは仕方がないというように身体を起こす。同じように窓を見るが何もいないので大きく欠伸をして一体どういうことかとレンに目で聞く。

「まだ来ていないだけ。ロサリアにリンカーで巣の辺りを調べてくれと言えばわかる」

「……なんもなかったら怒るからな」

 ノアはリンカーを身に着けロサリアを呼ぶ。

 少しすると繋がったようで話を始め。レンに言われたように聞く。

「……正体不明? それが直進しているってリンカーにそう出たのか? ああ。わかった。アッシュ、リンカーの検知できる魔獣の大きさは?」

「最大で親クジラより少し大きいくらいまでわかるはずだ」

「それよりも大きい魔獣か。ロサちゃん。そっちは頼めるか? 俺は偉いさんに報告してくる」

 リンカーを切るとレンのことを見る。

「すまん」

「いい。それよりも対処だ」

「言った通り報告に行く。お前も来てくれ」

「いや。俺は足止めをする。撤退することになるから時間を稼がないと」

「……すまん」

「謝るくらいなら一つ頼みを聞いてくれ」

「なんだ」

「ティアを頼む」

「っ……ああ。わかった。だけど絶対帰って来いよ。帰ってきたら激辛料理付き合ってやるから」

「それは楽しみだ」

 レンは装備を固めて正体不明の魔獣の居場所に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る