第23話 大規模作戦3
二日後、二人は他の隊員と共に前線基地に<バベル>の車両で訪れる。
「結構遠かったですね」
「まあ、危険地帯に入るまできたからな」
長時間の移動で固まった身体を伸ばしながら二人は会話をする。
同じように身体を伸ばす隊員がいる中でティアは周囲を見回す。
「なんだかすごい武器のような物もあります?」
「あの塔みたいなのか? ドリルに見えるが何だあれは?」
「レンくんも初めてなのですか?」
「ああ」
レンとティアが眺める兵器だと思われる鋼鉄の物は塔のように高く先端にはドリルのような物がついて下の方に投入口のような物があった。
「あれは対巣用の大型砲台、通称ストライカーだよ」
「ウッドマンさん」
後ろからウッドマンが二人に声をかけて疑問に思っていた物の説明をする。
ティアは嬉しそうにするがレンはなんでいるんだという表情をする。
「こちらにいらっしゃっているのですね」
「ああ。今回は大事な作戦だからね。人類の運命を分ける戦いだって上からも言われているから流石に私も来たのだよ」
「あの。対巣だとおっしゃっていましたが」
「アッシュが失敗した時の保険だよ。失敗しないと思うけどもしもの時はあれでドカンと巣を破壊するんだ。それにもう一つ強力な切り札があるんだよ」
「凄いですね」
ティアは感心するような反応を見せるがレンは全く興味がないというようにその場を離れようとする。
「レンくん。待ってください。どこに行くのですか?」
「明日に備えて宿舎で寝ておく。ティアも早めに休んでおけよ」
レンはティアを置いて宿舎に向かった。
「ティアくんがパートナーになって多少は柔らかくなったかと思ったけど、相変わらずだね」
「あの。いつもはこんな風じゃないのですが」
「それは仕事だからだね。気持ちを切り替えるというところもあるだろうけど、やはり何も失いたくないからだろうね」
「……それは家族と故郷のことですか?」
「そうだね」
「どんなところだったのですか? 父からウッドマンさんも一緒に訪れたことがあると聞いたのですが」
「あそこは一種の楽園だったよ。人は優しく、自然は豊か、辺境でも魔獣に襲われることない場所だった」
「えっ? 魔獣に襲われない。それはどういうことですか?」
魔獣は人間であれば誰だろうと平等に襲ってくる。防衛機能が高い街の中ならともかく辺境の村で魔獣に襲われないとはどういうことなのか。
「理由はわからなかったが、私はきっと罪のない善い人ばかりだったからだろうと思っている」
「魔獣に襲われて、レンくんがブルーローズで倒したその影響で村は灰になったはずです。魔獣はどうして村を?」
「<バベル>の戦闘員がその村の付近で作戦を行ったことがあってその時に倒しそこなった魔獣が村に来たんじゃないかと思う。そうだけどアッシュはどこかで自分だけ生き残ってしまった。村人を殺してしまったのではないかと思っているから魔獣を殺すためにストイックになっているんじゃないかって。それで最後は誰にも見られることなく死ぬつもりなんじゃないかって」
「……なんだか悲しいですね」
「私としてはアッシュが普通の青年として人の道を歩いて欲しいんだけどね。私じゃあ何もできなかったからね。プレッシャーになるかもしれないけどティアくんには期待しているんだ」
ウッドマンは優しくそう言うのだが言葉の一つ一つに重さが込められていて責任重大だと思わせる。
だけどティアは真っ直ぐウッドマンのことを見た後頷く。
「はい。頑張ります」
「ありがとう」
ウッドマンは救われたように優しげにティアに微笑んだ。
ティアはレンのことを支えていこうと決心を再び固めたのだった。
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