第18話 フルールにて6
夜も更けてもう寝るだけとなったところ。
レンは窓を開けて夜風を浴びて体の熱を取っていた。
するとリンカーが反応していることに気がつき身に着ける。
「どうした?」
『今、いいですか?』
「ああ。問題ない。風呂上がりで涼んでいるだけだから。そうだ。今、上半身裸だから視界共有はやめてくれよ」
『っ――!? し、しません』
リンカーから少し遠くで何か大きな物が落ちる音が聞こえたのでレンは少しだけ笑いシャツを着る。
「それで、何か用か?」
『えっと、リンカーのリハビリです』
「それだけじゃないだろ? 暇だから話を聞くから話してみろ」
『……よくわかりますね。えっと少し聞きたいことがありまして』
「なんだ?」
『ずばりレンくんは女の子にモテますよね?』
予想外な質問が来て固まるレン。
そんなことに興味があるのかと思うが興味があるのだから聞くのかと思いレンは今までのことを思い出す。
「俺としては全くそういったことはないと思っている。仲が良かった異性とかいなかったわけだしな」
『デボラさんは仲良くないのですか?』
「あいつか。信頼しているが根本的には嫌いだからな。向こうだって実験体としては優秀だがそれ以上は何も思っていないだろうし」
あくまでも利用し合う関係であると思うレン。
『えっと誰かから想われているとかは?』
「ないな。告白された経験どころかそういう噂すらない。ノアに言わせたら俺は愛想という物が全くないらしく、その所為で女子受けが悪いらしい」
『そうですか? レンくんはそれ抜きでも凄くかっこよくて……こほん。そうではなく。レンくんは凄く女性に好かれるタイプなので距離感に気をつけてください』
「それはティアに対してもか?」
『わ、私はもっと近い感じでもいいです!!』
何やら気迫の籠ったティアの言葉にレンは少し驚くがもっとパートナーとして信頼してくれという事なのだろうと理解する。
「わかった」
『っ――!!』
「どうした?」
『い、いえ。大丈夫です。それにしても熱いですね』
「そうか? 涼しい方だと思うが。何だったら窓開けると風が入って気持ちが良くなる」
『そうしますね』
リンカーから窓が開く音がする。
『確かに涼しいですね』
リラックスしたようなティアの息がリンカーから聞こえてくる。
「……」
変な感覚を感じたレンは無言で何か話題はないかと考える。
「今日は色々あったな。ガブリエルと話して、ティアの両親に色々聞かれて、それからティアとフルールの名所を巡って、ティアの友人に会った。前の俺だったら絶対しないことばかりだ」
『嫌ですか?』
「嫌なように聞こえるか?」
『いえ。そんなことはないと思います』
「ああ。実際に嫌じゃなかった。たぶんティアのおかげだろう。全部ティアが一緒に居たから嫌じゃなく楽しい思い出にすることができた」
『そ、そうですか!?』
上ずった声を出すティアにレンは今思ったことを話す。
「今、思ったことを言ってもいいか?」
『な、なんですか?』
「こうやって顔を見ないで話すってのもいいがやっぱり顔を見て話したいって」
『どうしてですか?』
「やっぱりティアの顔が視たいって」
『えっ?』
「自分でも理由はわからないがティアの顔を見たいって思った」
『――』
レンの言葉にティアからの返事がなくリンカーからの通話が切れてしまう。
どうやら何か気に障ることを言ってしまったかもしれない。
「明日。謝った方がいいかもな」
レンはリンカーを外してテーブルに置く。
窓を閉めてベッドに身体を任せて目を閉じた。
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