第11話 魔獣を狩る者6
次の日。
ティアは約束の時間の十分前に駅前にやってきていた。
白色のリボンカラーブラウス、黒いボールガウンワンピースを着てフリルのついたお気に入りのブーツを履いて、かなり気合の入った格好だった。
レンと出かけると考えていたら自然と気合の入った格好をしてしまったのだ。
「レンくんはもういるのかな?」
ティアは周囲を見回して時計を探す。
すると駅からすぐの目立ったところに金色の時計があり、その下で雰囲気はかなり違うがレンがいた。
白いワイシャツの上に紺のブレザーを着て、黒いズボンを穿いていて凄く大人の様だ。
あの人は私のパートナーですよと言いたくなるほど魅力的な大人の雰囲気をしていた。
まだ時間には早いから少し見ていようとティアは物陰に隠れレンの様子を見る。
すると若い女性二人組がレンに話しかけてくる。どうやら道を聞いているようだ。
それからも何人もの若い女性がレンの寄っていき話しかけていく。
それを見てティアはなんだかもやもやしてくる。
もう我慢できないと物陰からレンの元に走って行く。
「お待たせしました」
「いや。時間より少し早いから問題ない。ティア、その服よく似合っている。可愛いと思う。……すまないな。こういう時に何かいい表現の言葉が言えるような男でなくて」
「いえ。そんな褒めてくれるだけで嬉しいですから」
ティアはほんのり頬を紅くしながら嬉しそうに笑う。
「レンくん。凄く大人っぽくてかっこいいです。凄く似合っています」
「そうか。それは安心した。人が寄って来て話しかけにくるから何か変なところがあるのではないかと思っていたところだ。ティアにそう言ってもらえたのならノアに協力してもらって選んだだけはあったな」
「そうですか」
ティアは笑顔でそう言うが内心ではノアさんナイスですという感想を持っていた。
「さて、いこうか」
時間は待ってくれないとレンは街の中心に向かって歩き出す。
「待ってください」
ティアはレンの手を掴む。どうしたと足を止めるレン。
「レンくん。はぐれそうなので手繋いでもいいですか?」
「ああ。問題ない」
レンから許可を得るとティアはレンの手を握る。
大きいなと思うティアにレンはじっと見つめてくる。
「ど、どうしましたか?」
「いや、両親へのプレゼントは何にしたのかと思ってな」
「あっ。それですか。それなら決まっています。お父様にはワインを、お母様にはティーセットをあげようと思います」
「そうか。ワインとティーセットか。かなり難しいチョイスだがまあ何とかしよう」
「お願いします」
レンはティアを連れてワイナリーの販売所に来た。
「凄く大人な感じですね」
「大人の場所だからな」
いかにもワインを嗜んでいるという大人が集まる店内にティアは委縮してしまうがレンが手を引いて店内に入る。
ティアだけだと止められるかもしれない店内でレンは気にすることなく近くにいる比較的若い店員に声をかける。
「すまない」
「はい。何でしょうか?」
店員はレンとティアのことを見ると、蒼い顔をしてその場から離れて店長らしき人物を連れてくる。
「いかがしましたか?」
「彼女が父親にワインを送りたいそうだ。いいワインを紹介してやってくれ」
「かしこまりました。アッシュ様。では彼女様。お父上が好きなワインの銘柄をお教えいただけますか?」
「えっと」
ティアは助けを求めるようにレンのことを見る。すると優しく教えてくれる。
「よく飲むかもしくは特別な日に飲むようなお気に入りの銘柄を教えるとその好みに合ったワインを出してくれる。名前と年号を覚えているなら言ってみてくれ」
「なるほど。確か、西風の九十七年だったはずです」
「西風の九十七年ですか。酸味が薄く甘味が強い年ですね。少々お待ちを」
「はい」
数分待っていると中年の店員がワインを二本持ってくる。
「この二つがオススメです」
「違いはなんですか?」
「こちらの夕日の八十三年は夕日の差す平原のような温かな香りが強く、酸味がほのかなワインです。もう一つの潮風の七十七年は甘味が強く、海を彷彿させるさわやかな香りが抜けていきます。いかがでしょうか?」
いかがでしょうかと言われてティアは困ったようにレンのことを見る。
言葉だけじゃあどちらを選ぶなんてできない。
「こういう時は試飲をするのだがティアは未成年だ。飲むわけにはいかない」
「それでは香りで比べてみるのはどうでしょうか?」
「なるほど。やります」
「かしこまりました」
中年の店員はワインのコルクを持ってくる。
「では、こちらを」
「はい。あっ。凄く優しい感じの香りです。もう一つのは爽やかな感じです」
「どちらが好きだ?」
「最初の方です」
「かしこまりました。それでは贈り物用の梱包をしますのであちらでお会計を」
「はい」
会計を終わらせてワインを受け取るとレンが持つ。
そのままティーセットが売っている場所に向かう。
「重くないですか?」
「平気だ。俺が重いって感じるのならティアには重いだろ?」
「そうですね。ありがとうございます」
「気にしなくていい。それよりもティーセットは大体どんな風のにするか決めているのか?」
「方向性は決めています」
「そうか。いいのがあるといいな」
「はい」
陶器製品を扱った店に行くとティアの想像していた通りのティーセットがすぐに見つかった。
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