第6話 魔獣を狩る者1

 ティアが<バベル>に所属して一週間が経った。

 レンが任務に向かったのは一回だけだったが、ティアはパートナーとしての仕事にも慣れて早く仕事ができるようになった。

 だがレンとの関係は相変わらずで信頼を得ている気がしなかった。

 何か嫌われるようなことをしたのだろうかと思う。

 悩むティアの元にウッドマンの使いがやってきて書類を渡してくる。

 忙しいのか使いの者はすぐにその場を離れてしまった。

 気持ちを切り替えてティアは渡された書類を読む。

「南方百キロ付近の区画の大型、中型複合の群れの排除。数は大型二十、中型六十体」

 この数ならレンなら簡単に倒すだろうが、任務の概要を書かれた紙の最後に書かれた一文に不安を覚えた。

「できるだけ周囲の魔獣を討伐すべし。成果によって今後行われる大規模作戦に影響を及ぼす。何なのですか。これ……」

 ティアが穏やかではないという風に眺めているとレンがやってくる。

「あの……」

「あんたの顔を見ればわかる。任務の最後に何か書いてあったんだろ。例えば大規模作戦のために魔獣をできるだけ倒せとか」

「な、なんでわかるのですか!?」

「よくあることだから。それに最近のノアたちを見たら何かあるんだろってわかる」

「確かに皆さん南の方で忙しいって言っていますけど」

「大規模作戦のことは頭の片隅に置いておく程度いい。今はその任務だ」

 渡せというように手を出してくるのでティアは任務の書かれた紙を渡す。

 暫く読むとティアに返し大きく息を吐く。

「それが来たってことはすぐに行けってことだ。用意する」

「わかりました。私もすぐに準備します」

 レンはそのまま準備をして目的の場所に向かってしまった。

 レンが目的地に着くまでティアは目的地の情報を資料室から地図や資料を集めてこなければならない。

「今回の場所だとこの辺りですね。早くテーブルに持って行って読まないと」

 ティアは両手に資料を持ちティアのテーブルに戻り一枚一枚端まで読む。

「目的地の付近で盗賊団のアジトがあるのですね。ブルーローズさんに教えないと」

 資料をあらかた読み終えたがレンからの連絡はない。

 バイクを運転しながらだと騒音や視点の揺れが酷いためレンがリンカーを切っている。

「それにしてもバイクいいなぁ」

 バイクに跨り平原を走るレンの姿を想像して、ティアは自分も風を感じてバイクに乗って平原を走りたいと思う。

 だが免許がいるため今すぐは無理だ。

「ブルーローズさんに頼んだらサイドカーとかに乗せてくれるのでしょうか」

 多分断ってくる想像がすぐに思い浮かぶがやはり乗ってみたいと思ってしまう。

 ティアはバイクに乗った時を想像する。

「こうやってエンジンを動かして」

「えっとお邪魔だったかしら」

「えっ? うわあっ!?」

 ロサリアがいたと知らずティアは驚き飛び上がる。

「い、いえ。だいじょうびゅです」

「噛んでいるわよ」

 くすくすと笑いながらロサリアが近づきティアの隣に座る。

「それでアッシュは?」

「今、移動中です」

「そう。じゃあ、私は見ているから頑張ってね」

「はい」

 気合いの入った返事をするとレンからの通信が入った。

『目的地に着いた』

「はい。わかりました。視界の共有をします」

 ティアはリンカーを操作しレンの視界を見る。

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