第40話 ポンコツ聖女はあきらめない ☆ロクサリーヌ視点☆
☆ロクサリーヌ視点☆
ガザセルさんは決してあきらめなかった。周りから見たら往生際が悪いと言われるかもしれない。でも……潔くあきらめて奇跡が起きたおとぎ話なんて、見たことも聞いたこともない!
そうよ。
唱えながら周りを見る。収容所で死んだ人の骨だろうか? 人骨に巻きついた鎖、他には木片、木の板、破壊された花瓶、壊れたタンスにベッド、下の部屋が見えてしまいそうな腐った床。
このカオスリッチが腐敗の魔法を使ったのかしら? 朽ち果てた残骸になった収容所を見て思う。
「ホーリー!」
私は神聖魔法ホーリーを連続で唱えた。もうもうと
私は泣くもんか、嘆くもんか、こいつを喜ばせてたまるもんかと思った。私にはカオスリッチは倒せないかもしれない。元々得意ではなかったけど回復魔法も意味がない。魔力のない聖女なんて普通の人間と変わらない。
この状態で暗黒魔法を使われたら、じわじわと身体は腐り、私はこの人骨と変わらない姿をここに晒すことになる。
だけど……私はあきらめない。最後の最後まで足掻くんだ。そう考えた私は、
「ホーリー!」
再び神聖魔法を撃ち続ける。悪くなる視界、それは目視で確認している可能性を潰すための保険よ。それにカオスリッチが生体感知の能力で私の動きを把握していてもいいように動くべき。
こっちに悠然と歩いてくるカオスリッチ。
「こっちに来ないで!」
と叫びつつ木の板や壊れた花瓶、腐った木片、手に取れるものを次々にカオスリッチに投げつける。投げつけた物はくるくる回ってカオスリッチに命中する。
「何を騒いでいる。こんなものはワシには痛くも痒くもない。時間の無駄だ。往生際が悪い聖女だな。美しくない、最後につまらぬものを見てしまったなぁ。カッカッカ」
油断して嗤っていればいい。私は生きるために足掻くんだ。ガザセルさんに会うために足掻くんだ!
「生きるために足掻くのよ!」
近寄ってきたカオスリッチに私はそう叫んで鎖を持ち、腐った床めがけて走り思いっきり飛びあがる。手に持った鎖を振り上げカオスリッチの胴体に鎖を巻きつける。
壊れた花瓶やら木の板や木片を拾って、私はただ怯えて無力に投げつけてるように見せかけた。花瓶を投げつけ鎖の音をそこに紛れ込ませた。それは鎖でざっくり円を描くよう配置するためだった。
罠へ導く囮は私自身。そして円のように配置した鎖の中心にへカオスリッチが入った瞬間を狙って、腐った床へ飛び込んだのだ。案の定、腐った床を踏み抜いた私は下の階へ落ちる。計算通り!
カオスリッチに巻きついた鎖は私の体重でカオスリッチの胴体を両断せんと絡みつく。このままカオスリッチの身体を切断できればと願うけど、そこまでうまくいかないわよね。でもそれでも全く構わない。
「小娘!
私の鎖の罠を耐えきったカオスリッチは叫んだ。
けれどもその間に下の階の床に華麗に着地し、この場から颯爽と私は逃げ出した!
私のすぐ後ろにカオスリッチの死の気配がする。必死になって走る。足掻くんだ! そう決めていた。なけなしの魔力を使ってホーリーを撃ち逃げる。
出口に向かって走る。最後の曲がり角、明かりが見えた。あとは一直線に逃げるだけ。そう思って走った。
けれども、息が続かない。焦る手足はうまく動かず転んでしまった。立ち上がってすぐに逃げないと、と思った。濃密な死の気配が近づいてくる。
手は震える、足も震える。立ち上がれない身体と跳ね上がる心臓の鼓動がひどくうるさい。慌てて立ち上がろうとした私は、カオスリッチに髪の毛を引っ張られて無様に転んだ。
「残念だったな。ここでお前の命は終わりだ。もう追いかけっこも飽きたしなぁ。ヒッヒッヒ」
カオスリッチは髪を引っ張り私の顔を睨みつける。そして右手を振り上げるのをみて、私は思わず目を
「待たせたな、ロクサリーヌ」
カオスリッチの振りあげた右腕を握り、ニッと笑うガザセルさんがそこにいた。そしてカオスリッチを吹き飛ばして距離をとる。
「お前は1人じゃない。俺がいる。俺たちはパーティだ。だから役割分担がある。得意分野がある」
涙が出てくる。ガザセルさん、また会えた!
「俺は近接戦闘が専門。そしてロクサリーヌは回復が専門。それが聖女ってジョブの役割だ。お前が回復魔法が苦手だとしてもな。身体を張って殴るのは俺の役割だ。だからお前の怒りは一旦すべて俺に預けろ」
私は思いっきり頷く。
「今の姿をみれば分かるさ。足掻いたんだろう? よく頑張った! ここから先は俺の出番だ」
ガザセルさんに思いっきり頭をワシワシと
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