第39話 会いたい!
そしてライトの魔法で明かりを灯した俺たちは建物に入った。建物の内部も、あらゆるものが腐っていた。
これは内部も改造されているかもしれない。罠があってもおかしくない。慎重に行く必要がありそうだ。
床も天井も扉も床すらもボロボロになってしまっている。扉はガタガタだし、開かなくなってしまっている扉もあった。これは気を付けないとダメそうだ。
それでもアンデッドは現れる。ボーンヘッドがスケルトンを引き連れてきた。敵の特徴は何度も戦ってきたから分かる。
「ロクサリーヌ、油断するなよ?」
と俺自身を強化した。そしてまずはボーンヘッドを葬り去る。そのあとスケルトンを処理した。
アンデッドも難なく撃破した俺たちは最上階の3階に来ていた。カオスリッチはいない。床はヌルリとして滑りやすいし今にも崩れそう。慎重に足元を確認して移動する必要があった。
「ここ滑りやすいから気をつけろよ?」
とロクサリーヌに話しかけた。またしてもボーンヘッドとスケルトンが現れた。俺たちは戦闘態勢に入った。しかし、ロクサリーヌは移動しようとして床のヌルッとした部分で滑り、慌てて壁に手をついたら、その壁はクルンと回転した。
ロクサリーヌの「ひゃあぁぁぁ~~~」と小さくなっていく悲鳴から、下へ落ちたなと判断した。こうして俺は1人でボーンヘッドとスケルトンの軍団と戦うことになった訳だ。ほんとにロクサリーヌは……、と俺は嘆かずにはいられなかった。
☆ロクサリーヌ視点☆
「いやあぁあぁぁぁ~~~」と叫び声をあげながら、私は見事に罠にひっかかり、壁の中をゴロゴロと転がり落ちていった。ドン! と背中をしたたかに打ち付け、声もでないし息もできない。
自分にたいした効果がないと分かってはいるけど回復魔法をかける。ちょっと楽になった私は周りを見るため魔法で明かりを灯す。
目の前には混沌の不死王カオスリッチが立っていた。
「きゃああぁああぁぁ~~~~」
と悲鳴をあげて逃げようとした。でも逃げ場なんてなかった。この落ちた小部屋の隅に私は追い詰められていた。
「簡単に罠にかかってくれたな。バカよな、お前は何もできずに死ぬんじゃ。家族と村人の仇も討てずにみじめになぁ、カッカッカ」
カオスリッチは骨を震わせて、私を嗤った。
「許さない! 私はあなたを絶対に許さない!」
殴られ転んだ私の頭をカオスリッチは踏みつけた。私の頭蓋骨がきしむ音が聞こえてくる。
「ああぁぁっぁ」
「いい悲鳴だ。ワシの心を躍らせる、実に小気味よい悲鳴だ。小娘よ。ワシを嗤わせてくれるなぁ」
「し、死んでもあなたを許さないんだから!」
「涙を流して言いたいことはそれだけか? 勝手に恨むがいいさ、嘆くがいい。ワシにとっては子守歌。これ以上ない安らかな怨嗟だからなぁ」
「あ、頭が割れるぅ」
「ひと思いにこのまま潰すか? いやいや、それではこの心地いい怨嗟の子守歌が聞けなくなってしまう。アンデッドにしてしまうのもそういう意味では惜しいな。どうして欲しいよ? 小娘」
頭を踏みつける力が弱まった。私はその瞬間、後ろへ退いて距離をとる。
「あなたなんかに絶対に屈しない。母さんと父さんの恨みは私が晴らします!」
と私はカオスリッチから距離を取り私は武器を構えた。武器を構えた私に、カオスリッチは悠然と嗤いかける。
「お前になんの力がある? 聖女なんて回復魔法だけが頼みの綱だろうが? たった1人でワシの前に現れたことを嘆くがいいさ。自らの不運を恨むがいい。ワシの進む先に、家族そろって生きていたことを呪うがいいさ。まさにそれこそが不運よな! ワシにとっては愉快だがなぁ」
私の不運を声に出してカオスリッチは嘲笑う。私はアンデッドの軍団を浄化した神聖魔法を使う!
「光よ、我に力を! 神聖魔法ホーリーライト!」
叫んだ私は全力で神聖魔法を唱える。私が使える神聖魔法。魔力が減ったのを感じる。でも、これで倒せなければじり貧ね、と思ったところに
「そよ風よな、小娘」
と平然と嗤いかけてくるカオスリッチ。母さんと父さんの仇は私では討てないの? いえ、諦めるのはまだ早いわ。
できることを積み上げていくしか私にはできないんだから。あきらめる訳にはいかない。ガザセルさん……!
「なんだ、覇気がないな。もうあきらめたのか? やる気がない小娘だな。まぁ、ワシの力を見れば当然か? まだまだワシの力はこんなものじゃないぞ? どこまで見せられるかなぁ? ワシの力から生き延びられるのか? 小娘よ。カッカッカ。」
カオスリッチは私の全力の神聖魔法でもダメージを喰らった様子はなかった。絶望しそうになってしまう。思い出すのはガザセルさんの笑顔だった。死ぬ間際に思い出すのが母さんと父さんでもなくガザセルさんの笑顔か……。思ったより重症ねと私は思った。でもガザセルさんに無性に会いたくなった。
罠にかかった先でカオスリッチに会うなんて、やっぱり私は運がないのかなぁ。心残りがないと言えば嘘になる。
ガザセルさんの『どうしようもないと思っても周りを見ろ。そして
だから私は最期の瞬間まで足掻くんだ!
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