第13話 採取クエストでの戦い①

 1体は既に倒した。目の前にいるのは3体のスケルトンだ。カタカタと骨を震わせ武器を構えてこちらを見ている。


 奥に進んでいるクラスメイトの1組が心配だ。右端のスケルトンから殴り粉砕していく。ロクサリーヌも神聖魔法ホーリーライトを唱えてスケルトンを浄化させ減らしていく。さすが聖女というべきか。スケルトン4体の殲滅せんめつがあっという間に完了だ。


「前に進んだみんなが心配だ。急ごう!」

「そうですね。でも魔法学校が安全だと判断した洞窟になんでこんなにスケルトンがいるのかしら……」

 首をかしげるロクサリーヌだ。ほんとにそうだと思った。


 満月草を採取していたことで、そんなに奥に進んでいなかったことが幸いした。それにみんな思ったより善戦したようだ。俺も戦闘に加わり、ロクサリーヌは負傷者に回復魔法をかけていく。本人は回復魔法が苦手なんて言っていたけど、使えるだけで心強い。それが回復魔法って存在だ。


 周りを警戒しつつ慎重に進む。そして最初に突入していったクラスメイトたちに追いついた。


「無事ですか?」

「あぁ、なんとか。スケルトン2体が現れて勝つには勝ったけど、こっちも魔力切れでどうしようもなかったんだ」

「歩けない人はいるか? いたらロクサリーヌに回復してもらってここから急いで出よう」


 俺は盾役、アタッカー、ヒーラーの3人に声をかけた。パーティのバランスがよかったから勝てたんだろうなと思った。ロクサリーヌは負傷したみんなに回復魔法をかけた。

 この場から移動しようとした俺たちの前に


「逃がすわけにはいかないな」


 ボーンヘッドが1体現れた。スケルトン6体を従えてのご登場だ。話せるくらいだから知能もある。


「また魔物が……」

「俺たちはここで死ぬのか」

 と今まで見たこともない数の敵を見て絶望しているクラスメイトもいた。

「まだ、そうと決まった訳じゃないだろう?」

 と、俺は話しかける。


「あんなにいるスケルトンとボーンヘッドを倒せるっていうのか!?」

「死ぬ気でやれば、やってやれないことはないと思うぜ? それともこのまま何もしないで死を選ぶのか?」


 押し黙る生徒たちを見て俺は話す。

「みんなはスケルトンを倒せる実力はあるんだ。もう一度スケルトンと戦って勝てばいい。さっきは勝てたんだ。同じスケルトン相手にできないなんてことはないと思うぜ?」

 俺は不安を感じるクラスメイトを落ち着かせるように話した。


「でも、ボーンヘッドを相手に勝てるのか? ボーンヘッドなんてBランクの魔物じゃないか!」

「勝負はやってみなければ分からない。生き残りたければやるしかない。冒険者って元々そういうもんだろう?」


 と言ってニッと俺は笑う。

「きっと勝てますよ。さっきスケルトンを倒したんですから!」

 ロクサリーヌも援護してくれる。パニックになるのが一番危険で相手の思うつぼだ。


「さっきと同じように戦えばこっちには聖女様がいるんだ。回復魔法と神聖魔法で援護してくれるからきっと勝てる。みんなが問題だっていうボーンヘッドもなんとかする。今のみんなに必要なのは絶対生きて帰るっていう覚悟だ」

 と俺は話した。


 魔力の回復する手段は①睡眠②マジックポーション③瞑想めいそうがメジャーだ。戦闘しながら睡眠がとれる訳がない。死ぬって話だ。だから当然、お手軽さも考えてマジックポーションをがぶ飲みするのが主流だ。


 問題は③瞑想だ。これはどういう状態かというとらくな態勢をとってリラックスすること。目をつぶる必要は。魔力が回復すればそれでいい。戦闘中にリラックスできるのかっていうのはあるけど、そこは慣れだ。立った状態で寝れる人だっているのだ。だからこそ、この楽な態勢っていうのは人によって様々という訳だ。基本的には座るって人が多い。


 一番だいじなのは敵の攻撃から一時的に無防備になる。攻撃されれば無条件にダメージを受けてしまう状態になる、と念頭にいれることだ。でもこの瞑想の時間が長ければ長い程、魔力の回復量は多くなる、という仕組みだ。


「ロクサリーヌ! 魔力の回復をしているヒーラーを守りつつ回復を! ロクサリーヌの魔力が尽きればその時は回復役は交代だ。瞑想を交代で繰り返して回復してくれ」

 と俺は指示をとばす。ロクサリーヌとヒーラーの子は「「分かりました!」」と応えてくれる。


「最期の話し合いは終わりでいいか?」とボーンヘッドは聞いてくる。

「悪い悪い。待たせたな。こっちの話し合いは終了だ」と俺は話す。


 そこで俺は強化魔法を自分自身に唱える。

「我がまとうは風の舞」

 この風の強化魔法でスピードアップし、身体全体を強化したいとイメージして詠唱したことで、ユニークスキルが発動し俺の身体は強化される訳だ。準備完了。


「気合入れてヒーラーたちを守りつつ戦闘だ!」

 とげきを飛ばし戦いが始まった。比較的近い位置にいたスケルトンに殴りかかり粉砕する。やるしかないと覚悟が決まればなんとかなる。


 みんな不慣れながらもスケルトンと戦った。聖女がいるとなれば希望を感じる。崖っぷちだと追い詰められガチガチに固まるのと、そうではないと思う場合では心の余裕が違いすぎる。


 油断したらダメだけど、追い詰められると視野が狭くなって動きが鈍る場合がある。致命傷になりかねない。それ以前にあきらめたらそこで終わりだ。こちらは俺とロクサリーヌを含めて5人いるのだから絶望的という程でもない。


 近づいてきたスケルトンを殴って粉砕、回し蹴りで吹き飛ばす。ボーンヘッドは高みの見物のようだ。ありがたい。スケルトンの数をまず減らすことにした。

 盾役がきっちりスケルトンの攻撃を集めているから、他のメンバーが自由に動けるようだ。タコ殴りになっている盾役は可哀そうだけどそういう役割だ。アタッカーの1人もスケルトンに追い打ちをかける。


 スケルトンは2体に減った。ロクサリーヌの魔力は尽きていたから、ヒーラー役は交代だ。ボーンヘッドが高みの見物してる間に、アタッカーがスケルトン1体にとどめを刺す。みんなの動きも良くなってきた。そして最後のスケルトンを俺は殴り倒した。


「待たせたな。次はお前だ」


 とボーンヘッドに向かって俺は宣戦布告した。

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