第12話 お掃除と採取クエスト
次のお題はお掃除クエストだ。
「この家を綺麗にしておくれ!」
このお掃除クエストを依頼したのはお婆さんだった。ゴミが散乱し悪臭もしてひどい有様だった。けれども俺たちには人手がある。クラス全員で乗り込んできたからだ。
家の掃除くらい楽勝でしょと思っていたんだけど、これはなかなかにやっかいそうだった。俺たちは手分けしてとりあえず家の中のゴミを外に全て運び出した。
想い出の品がもしかしたらあるかもしれないと思ったので、お婆さんに見せて興味なさそうなら、外でどんどん
分担して作業しゴミを手渡しで搬送するという流れ作業でどんどんゴミは片付いた。1日かけて想い出の品と分けた。いらないゴミは全て燃やした。
お婆さんにネックレスをみせると「これは想い出の品だね。懐かしいねぇ」なんて言って両手でしっかり握っていた。
そのうち「あれもこれも懐かしい」なんて言いだして困ったが、とりあえず懐かしいものは置いておこうという方針に決まり仕分けしていった。
そして俺たちは床の見える家を見たわけだ。ここから掃き掃除や床の雑巾がけするしかないのかなと思っていた。
するとロクサリーヌが両手を腕まくりして
「ここからは任せてください! 生活魔法ウォッシュ!」
と叫ぶとホワホワと丸いシャボン玉より
「「「さすが聖女様! あんなに綺麗になるなんて!」」」
みんなが称賛する中、ひたすらウォッシュを唱え続けるロクサリーヌとウォッシュを使える生徒たち。外壁まで綺麗に掃除が終わっていた。傷まではなおせないけど、まるで新築のように綺麗になった家が最後に残った。
「ウォッシュってこんなに高性能なの?」と俺は素直に驚いた。ロクサリーヌは
「孤児院では便利な魔法だったので、覚えてよく使ってたんです。でも毎日身体を綺麗にできるから、旅を快適にできるっていうのが本来の使い道なんですよ」
ロクサリーヌは孤児院にいたのかと思いつつ
「このウォッシュって魔法は便利すぎだろう」と俺は答えた。
「教えてあげましょうか?」
ニヤリとするロクサリーヌに、「ぜひに」と俺はお願いした。あとは想い出の品々を家に整然と並べてお掃除完了だ。
「ありがとうねぇ」
とお婆さんは約束していた報酬より多めにくれた。もちろんクエスト完了のサインも頂いた。頭割だから一人分の報酬としては少ないけど、掃除代としてはかなり多めだった。
みんなで「「「「ありがとうございました!」」」」と答えた時のお婆さんの嬉しそうな顔が忘れられない。これでお掃除クエストは完了だ。
◇
そして最後のクエストが満月草取りの採取クエストだった。満月草はこの近辺では、ノーストラム墓地にある洞窟にたくさん生えている薬草だ。そして満月になると薬になる花を咲かせることで有名だった。基本的には満月草はあちこちで見つけられる薬草だ。
それに今回のクエストでは花が咲いてなくてもいい。だから満月限定という条件もない。さらにノーストラム墓地の洞窟には魔物は生息していない。それも手伝って難易度は大幅に下げられたということだった。
とりあえず俺とロクサリーヌは後発組となった。先発組は30分くらい前に出発している。装備品を身に付けたままの移動も訓練になる、とのランネル先生のお話だ。だからみんな装備品をきっちり着ていた。
とはいえ実力を発揮することができない生徒がでてきてしまっている。その生徒たちの活躍の場を作るため、俺とロクサリーヌは後発組にしたとランネル先生が言っていた。
そんなことを聞いていたので俺としてはお気楽である。何もしなくていいと言われたようなものだしな。こりゃ楽でいいね~くらいに思っていた。だから生活魔法のウォッシュの練習をひたすらしていた。
これって使えば使うほど綺麗になっていくのが分かる、という優れた魔法だった。魔力量だけはでたらめにある俺だから1日中、使っていてもまだまだ使える。
お湯に浸かるお風呂とウォッシュで洗うのと、どっちがいいかというと悩ましい。お風呂に入れるほどのお湯を沸かすのは異世界では手間がかかりすぎるからだ。
でも旅してるときにウォッシュが使えると便利だというのには頷くしかない。時短ってやつだ。そんな俺はウォッシュを自分に使いまくり綺麗さっぱり人間である。お肌もつやつやだ。
適当にウォッシュを使いながら待っていたら俺たちの出番がきた。ロクサリーヌはあんまり活躍するなよ、と言われたようなものなのに気合が入りまくりだった。
「じゃぁ、気楽に行くか」
と言って俺たちはノーストラム墓地の洞窟に入るのだった。
しかしロクサリーヌの緊張感は消えていない。当然、先に出発していたメンバーが満月草も採取済みだ。敵もいないと魔法学校が認めた極めて安全なクエストだ。
ところがだ。クラスメイトが悲鳴を上げているのを聞いた。すぐに駆けつけた俺たちはそこにスケルトンを4体発見した。
ノーストラム墓地の洞窟に敵はいないという前提だった。スケルトンはそんなに強い魔物じゃない。実際問題として考えれば雑魚だ。幸運だったのは装備品を訓練のためということで装備していたこと。けれどクラスメイトのほとんどは実戦が初だ。さらにスケルトンの数が多かった。バラバラに洞窟に入った各3人パーティでは対処しきれなかったのだ。
「スケルトンが出現してる。魔法学校とギルドに報告して救援を出してもらうように頼んでくれ!」
俺はスケルトン1体を殴り飛ばしながら答える。そしてクラスメイト達は
「分かった。急いで救援を呼んでくる、頼んだぞ!」
と戦略的
「じゃぁ、スケルトンには再び眠りについてもらうとするか!」
と俺は気合を入れ、ロクサリーヌと共にスケルトン4体を視界に収め構えを取るのだった。
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