クエストをこなせ!①

第11話 探し物クエスト

 それから2ヶ月くらい経った頃だ。ランネル先生は今日の授業で何をするのかな。と思いながら俺は話を聞いていた。


「さて、今回は実際に冒険者が受けるクエストを体験してもらいます。ほんとうに依頼がでているクエストですよー? 報酬も、もちろんでます。シュワルツマー先生が中心になってクエストは検討してくれました。基本的にはこの街の中で済む内容と判断したものです」


 ということだった。クエストの一覧をみせてもらったんだが、討伐系のクエストはなかった。生徒の安全を考えれば当たり前だよな。じゃぁ、何があるのって話だけども家屋の清掃クエスト、薬草などの採取クエスト、色んな探し物クエストなどなどだ。


「このクエスト一覧は全て完了する必要があるものです。誰か1人がクリアしても皆さんがクリアしたと見なします。基本的にはクラスみんなでクエストを受けてもらい、全てクリアしてもらいます。10日間かけて全てクリアできなければ、みんな未クリアのクエスト数に応じてペナルティを受けてもらいます。逆に短い期間でクリアできればそれだけ評価がアップします。世の中そういうものでしょう? 頑張ってくださいね! 先生も応援してます!」


 にっこり笑うランネル先生だった。


「皆さんがどうクエストに取り組むか、は基本的にお任せします。自由にやってください。そのための評価とペナルティですから」


 ほんとうにこの先生は、にこやかに厄介なことを言うねと思った。そうはいっても授業なら仕方ない。


「クエストの内容は、実際に依頼人に会ってお話を聞いてください」とランネル先生は言った。

 とりあえず俺は探し物クエストの依頼人に会いに行った。ロクサリーヌもついてきた。


「あのね。いなくなったイヌのポコタを探してほしいの。おウマさんにおどろいてにげちゃってかえってこないの」


 5才くらいの女の子に目に涙を浮かべながら話をされた。

「おれいはあるの!」と女の子は言った。

「えらいね。みんなが頑張ってきっとポコタ君を探すからね。あなたのお名前はなんていうの?」

 とロクサリーヌは言った。

「あたしはレンっていうの!」

 お礼だと言ってレンが必死になってかき集めただろう小銭を見て、この子の依頼をまずは受けようと決めた。


 ロクサリーヌが女の子に話しかけた。

「いなくなったポコタ君はどんなイヌなの?」

「シロとクロの小さなイヌなの」

「他に何か見てポコタだってわかるものはないかしら?」

「あたまにキズがあってね、でもかわいいの」

「そうね。分かった、私たちに任せて。きっとポコタ君を見つけてきてあげるから!」


 とロクサリーヌは言った。俺も特にいうことはない。すぐに行動を開始した。街中をロクサリーヌと散々、歩き回ったが迷子のポコタは全く見つからない。どこに行ったのか分からない。


「頭のあたりに傷があるなら、見れば分かると思うんだけどなぁ」

「早く見つけてあげたいですよね」

 

 ロクサリーヌと話しながらポコタを探す。

「あっ!」と小さく叫んでロクサリーヌが走り出した。俺もその後を追う。ロクサリーヌを追いかけて路地裏の道に入りそこから出て広い道を横切った。


 俺にも白黒の小犬が見えた。さらに小犬は走り続け裏道を通り抜けた先にあったすたれた教会の中に走り込んだ。ポコタを追いかけていた俺たちは、当然その教会の中に入って小犬を探した。誰もいない廃墟の教会だった。


 なかなかみつからなかった小犬は廃墟の教会の一番奥のところで必死に床を前足で引っかいていた。何かあるのか? と思い丹念に調べると扉があった。


 扉を開けた瞬間、現れた階段を駆け下りていく小犬。ロクサリーヌが明かりを魔法で灯し、追いかけた。そのロクサリーヌを追いかけて俺も中に入る。


 長い階段のその先には白と黒のまだら模様の額に傷のある小犬がいた。恐らくポコタに間違いない。なにかを食べているようだった。


 ふとその横を見ると大きな逆さの十字架があった。なんで逆さになった十字架があるんだ? と不思議に思った俺は十字架を調べようとし、ロクサリーヌはポコタを捕まえようとしていた。そこへ男が現れ「なにをしてるんだ!?」と怒られた。


「ごめんなさい。このポコタ君を探してて、ここに入ってしまったんです」

 ロクサリーヌが答えると

「その犬を連れて早く帰れ!」と男は怒鳴った。


 怒鳴り声を聞いてポコタは怯えた。怯えたポコタを見て、

「そんなに怒鳴らなくても……」

 とロクサリーヌが言った。男は

「最近、見慣れない犬がいるから気にしてたんだ。さっさと帰れ!」

 俺たちはポコタを捕まえた。

「そんなに怒る話でもないでしょう? 小犬が迷い込んだだけなんですから」と俺は抗議したが、男は「早く出て行け! シッシッ!」とうるさそうにするだけだ。


 この人は残念だけど話を聞いてくれない、と思った俺たちはポコタを連れてレンのところに急いだ。そしてレンに小犬を無事に届けた。


「ポコタ!」とレンは小犬を見て叫んだ。

「この子がポコタ君でいいの?」とロクサリーヌが聞いたとたん、ポコタはレンに飛びついた。

「間違いなさそうだな」

「ですね」 

 俺とロクサリーヌはポコタを可愛がるレンを見て安心した。


「おにいちゃん、おねえちゃん、ありがとう!」

 ワンワンとほえるポコタとレンからとても感謝され、報酬もありがたく頂いた。これで探し物クエストは完了だ。クエスト完了のサインをもらい「レンの笑顔を見れてよかったね」と俺とロクサリーヌは笑ったのだった。

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