第7話 キラカタルとの決闘①

「んー、ちょっと待ってくれ。ロクサリーヌの宣託は普通なら時刻、場所、内容という順番で神から授かるのか?」

「そうです! よく分かりますね」

 ロクサリーヌは俺を感心した顔で見る。そんなロクサリーヌに俺は

「だとすると、②の温泉が湧いたっていうのはどういう解釈になるんだ? その場に誰もいなくても温泉は湧くんじゃないか?」

 と聞いてみる。


 するとロクサリーヌは首をかし

「言われてみればそうですね。人がいなくても温泉は湧きますね。回避できません。これはどういうことなんでしょう?」

 とロクサリーヌは俺を見る。俺を見られても答えなんて分からないから困るんだが。


「温泉のことも分からないし、今回は『俺について行くように』という内容だけで、時間と場所がない宣託だったという訳か。さらによく分からない話になってるんだな」

 考えてみるに、宣託は外れるときも割と多いってことなのか? でも当たってる場合もあるんだし、どういうことなんだろう? と俺は不思議に思った。


「私もよく分からなくて。でも神からの宣託なのは間違いないと思ったんです」

「寝ぼけた時の妄想だった可能性は?」

「ないです! 私は朝は強いんです!」

「へぇ、それはもう特技だな。うらやましい」


 キョトンとした顔で「そんなたいしたことじゃないですよ?」と首をかしげていた。朝の5分の大切さが分からないなんてと言いかけて、まぁ、いいか。人の感覚って色々だもんなと1人で勝手に納得した。


 とロクサリーヌと善後策を考えていたら、

「ガザセルさん、そろそろ決闘の時間ですよ!」

 ロクサリーヌに言われて気づく。あっという間に1時間だ。負けたら下僕になってしまう戦いだっていうのに。


 闘技場に行くとかなりの人が集まっていた。ほとんどはキラカタルの応援のようだった。

「逃げずに来たのか。図太い奴だな」とキラカタルは相変わらずあおってくる。

「生きてると自然と図太くなるんだよ。学べよ若人」

「お前は俺と同い年だろうが! いちいちしゃくに障る奴だな」

「将来禿げるぞ?」

「うるさい!」


 よく分からないがお怒りのご様子だ。

「困ったもんだ。怒ってもいいことなんて何もないぞ?」

 と心配してやったら

「お前にだけは言われたくない!」

 とさらにキレてた。最近はほんとに見境なくキレる奴が多すぎだな。この世界の行く末が心配だとか思っていたら、シュワルツマー先生がやってきた。


「2人とも時間通りにちゃんときたか。仕方ない。この闘技場は魔道具のおかげでケガは治るから命の心配はない。後悔のないように戦いなさい。ガザセル君が実力を出せなくても、負けることは恥じゃない。仕方ないことなんだ」

 シュワルツマー先生がなだめるように話す。それに俺が負ける前提で話しているようだ。


「勝つか負けるかはやってみないと分からない。そういうものだろう?」と俺は当たり前の事実を言った。

「平民が貴族に勝てる訳がないだろう? そんなことも分からないのか?」とキラカタルが鼻で笑う。

「貴族か平民かで戦いの結果が変わるのか? それこそ関係ない話だろう。勝負は実際にやってみないと分からない。それが当たり前だからだ」

「お前はほんとに減らず口ばかり叩いているな! 目にもの見せてやる!」


 当たり前の事実を話すと怒りだすのはなんなんだ。俺が勝つとは一言も言ってないのに。頭にすぐ血が上りすぎだろうと俺は思った。シュワルツマー先生が手をあげてみんなの注目を集める。闘技場がシンと静まりかえる。


「これからキラカタル君とガザセル君の決闘を開始する! 気絶するか、まいったと宣言することで勝敗を決する。賭けるものはガザセル君がキラカタル君の下僕となるかどうかだ! それでは始め!」

 合図と同時にキラカタルはまず探りだろうか? 殴ってきた。俺はそれを右に避け難なくかわす。

「クソッ! 逃げるな! 卑怯者が!」

 理解不能なことを言っているキラカタル。俺は両手両足を強化するイメージを開始する。


「逃げないと攻撃を喰らうだろう。この決闘は攻撃を避けることもお前の許可をいちいち、とらないといけないのか?」

 俺は思ったままを話をした。

「ほんとにうるさいやつだな。手加減なしだ。次は本気でいく!」

「お前は明日から本気出すタイプか?」

「黙れ!」


 キラカタルは叫び、呪文を詠唱し始める。

「あれは上級魔法の詠唱だ! キラカタルが一気に勝負をつけに来たぞ! ガザセルを殺す気か!?」

 というギャラリーの声を聞き闘技場は死なないようにできてるんじゃないのか? と心の中でツッコミを入れる。

「周りの反応を見るにお前は俺を殺す気なのか?」

「舐めた口きいてるお前に手加減なんて必要ないだろう。死ね! ヘルファイア!」

 文句を言いながら詠唱を完了したキラカタル。上級魔法ヘルファイアが俺に向かって飛んでくる。


 既にユニークスキルで両手両足の強化は済んでいる。ヘルファイアを避けるためキラカタルの死角になる斜め後ろ目掛けて俺は飛びこんだ。上級魔法のヘルファイアをあっさり回避する。

「それでお前の攻撃は終わりってことでいいのか?」と俺は問いかける。声を聞いてキラカタルは俺の居場所を確認したようだ。

「バカな! ヘルファイアだぞ? あの広範囲こうはんい殲滅せんめつ魔法を回避したというのか!?」

 と目をむいて驚愕きょうがくしているようだ。広範囲殲滅魔法なんて物騒な魔法を、たかが学生の喧嘩相手に使うなよと俺は思った。


「殺す気なのか、分かった。じゃぁ、俺も手加減なしでいいよな?」

 と俺はキラカタルに向かって話す。

「殺しに来る奴を相手に手加減なんて失礼ってもんだよな? 俺は神様でも天使でもない。たんなるフラタルム魔法学校の生徒の1人だ。いや~悪かった。俺の認識が甘かったよ。甘すぎた」

 俺は頭に手をあてて勘違いしてたと話をする。

「何をごちゃごちゃ言ってやがる!」

 キラカタルは短気か。当然、俺は両手両足を強化するイメージをしながらしゃべっていた。

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