Day.2 降臨!アテナ!?
「あ、あの違っ! これは!!」
う、嘘っ……!?
この人、いつから?
全く気づかなかった?!
「えっと……いつから見てました?」
「……お金を入れるあたりから」
「そ、そうですか……スゥー」
こ、殺してぇぇぇぇええええ!!
よりによって1番見られたく所を!?
む、無理!!
死ぬ!!
恥ずかしさで死にそうになりながら、両手で必死に顔を抑える。
すると、
「あのー、何かお困りですか?」
と駅員さんは同情交じりの声で話しかけてくれた。
「いやー、その、領収書が欲しくて……」
「あぁ、それでしたら直ぐにお作りしますよ!」
「えっ!? ホントですか!」
「はい、少々お待ちください」
そう言って、トコトコと窓口に入っていく駅員さん。
そんな天使の後を、
「は、はずぅ……」
顔を真っ赤にしながらついて行く私。
もういっそ殺してくれ…。
そんなことを考えていると、
「すみません、その……」
突如天使が私の方を振り返った。
「……はい?」
「ここから先は関係者以外立ち入り禁止でして……」
「えっ?!」
驚いて辺りを見回すと、いつの間にか立ち入り禁止と書かれた扉の中に入っているでは無いか!
「あ! すすすすみません!」
「ふふ、そんなに謝らなくても大丈夫ですよー」
……何この生き物、抱きしめたい
くそっ、この国が法治国家じゃなければこの天使を家に持ち帰って愛でることが出来たのに……
悔しさに打ちひしがれながら、トボトボと窓口に立つ。
「すみません、乗車券をお見せ頂けますか?」
「は! はい!! どうぞ!」
「あ、ありがとうございます……」
コミ障だけが持つと言われているユニークスキル「謎の語尾上がり」と「視線キョロキョロ」を発揮しながら駅員を圧倒する私。
「これで……、よしっと! 宛名は如何されますか?」
「あ、アテナですか?」
「はい、宛名です」
……何それカッコイイ。
もしかして、この子、私がバッドステータス「厨二病」に犯されていると知って話を振ってる?
けど、
「……?」
こんな清楚で真面目そうな子がそんな話を振って来るとは思えない。
ここでふざけて、
「アテナは私だ。地上の民を救いに来た」
なんて返事をしようものなら、警察沙汰になりかねない。
一体どうすれば……。
こうなったら、
「い、良い感じにお願いします!」
適当に返事をして乗り切ろう!
大丈夫、私はこの技を使って留年スレスレの大学生活を乗り切ってきた。
きっとうまく行く。
……そう思っていたのだが、
「い、良い感じにですか!? こ、困ります!」
目の前のヴィーナスはあたふたしながらそう答えた。
「え、あっ、そうなんですか!?」
「は、はい……、その、こういうのはきちんお客さまにお聞きしないと……」
「あ、あぁ、そ、そうでした! そうでした! はは……」
「……?」
完全に不審者を見る顔で首を傾げている駅員さん。
……やってしまった。
まさか、誤魔化し作戦が通用しない相手がいるなんて。
腕を組み、項垂れる私。
すると、
「あの、もし良かったら先に但し書きを……」
「え、あ、はい!」
待って。
勢いで返事しちゃったけど但し書きって何?
もしかして、お品書きの亜種?
じゃあ、料理名とか書けばいいの?
……分からない。
アテナと言い、領主書はなぜそんなことを書かなきゃなんだ?
……まて、これは領主に見せる領主書。
ということは地名を書けばいいのでは?
そうか、 そういう事か! 分かったぞ! 攻略法が!!
「……東京で」
「はい?」
「東京でお願いします」
「えぇ、あの、その……」
……この反応間違いない。
しくったな。
「えっ、あの、これは違うんです!」
「ち、違うんですか?」
「いや、違わなくてー」
必死に取り繕おうとしてる私と、パニックを起こしているちいかわ。
やばい、収拾つかない……。
そう思い、泣きそうになっていると、
「あ! そうです! もしだったらこのままお持ちしますか?!」
女神様は私に救いの手を差し伸べてくれた。
「そ! そうですね! そうしましょう!」
その案に乗り、素早く紙を受け取る私。
「ありがとうございます! 他にお困り事はございませんか?」
優しく微笑む天使。
「あっ、はい! 困り事なんて……」
待って、あるじゃん……。
一つ大事なことが……。
「……」
「……どうかされましたか?」
忘れてた。
「あの、新幹線のチケット……」
「新幹線のチケットですね。了解しました。いつご乗車の予定ですか?」
「今日……ですね」
「本日ですね。乗車区間はどこからどこまでですか?」
「えっと、ここから東京ですね」
「かしこまりました。ここから、東京までですね……。新幹線の指定席はどれも満員なので、自由席になりますが、よろしかったですか?」
「あ、はい……」
……新幹線って、座る席指定できるの?
なら、普通に運転席に座りたいんだけど……。
……次は絶対座ろうっと。
「今、乗車券と特急券を発行しますねー」
「え? 特急ですか? 要らないです」
「それでは……、はい?!」
「……?」
「……??」
静かな構内で見つめ合う2人。
……この空気、間違いない。
やらかしたか!?
でも、いったいどういうことだ?
この子はなぜ「新幹線のチケット」ではなく「特急券」を差し出そうとしたんだ?
……分からない。
こういう時は……、
「あ、あはは、と、とりあえず特急券はいいので新幹線の領収書を貰えますか?」
誤魔化す!
「え? あ? えぇ? い、良いんですか?」
「はい!」
「分かりました……」
渋々と了承する駅員。
「勝った!」
私はここの中でガッツポーズをした。
しかし次の瞬間、とある一言が原因で私は地獄の底に叩き落とされることになった。
「それでは、宛名を……、あっ……」
咄嗟に口を抑える駅員。
「……」
構内に沈黙が流れる。
結構私はこの後、先程と同じ流れをもう一度繰り返しすのだった。
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