第6話 酒の一滴は血の一滴

ちょっと閑話的な話。でも青春なんで。え、青春ぽくないですか?!


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「はぁ~……最近、飲み会ないねぇ……」


 飲み会好きな萌はリコに愚痴る。


「新歓の時期は、もうとっくに過ぎたから当たり前よぉ」


「でもパパが言ってたんだけどなぁ。大学生になったら週3回は飲み会だって」


「萌のパパが大学生だったのって30年前でしょ! それに飲酒は20歳以上からでしょうが!」


「え、28年前だよ。も、もちろん、うちのパパはハタチになってから飲んでたよ!」


「ふ~ん……28年って四捨五入したら30年だよ」


「そ、それはともかく、テニスサークルなんて飲み会と合コンが目的だったって聞いてたんだけどなぁ……パパなんて『酒の一滴は血の一滴』ってテニスサークルで習ったって言ってたよ」


 ――何それっ?! 聞いたことない! 親父クサッ!


 リコが軽蔑した目つきで萌をじとっと見る。


 リコも萌に無理矢理一緒にテニスサークルに入らされていた。結局、2人とも運動は苦手で厳しい練習にすぐに挫折、幽霊部員兼(めったにないけど)飲み会要員になっている。


「ねぇ、萌。それもパパ情報? 古いよ、古い! いい加減、ファザコンから抜け出したらどう? そりゃ、萌のパパはうちのパパと違って(まだ)かっこいいけどさぁ」


「そうでしょ、うちのパパかっこいいでしょ!」


「はぁ~……そんなこと言ってるから彼氏できないんだよ。彼氏欲しいなんて本気じゃないでしょ?」


「な、何言ってるんず! リコだって彼氏いないっしょ!」


 わぁわぁと飲み会談義から彼氏談義へ会話の花を咲かせた数日後、萌はテニスサークルの1学年上の先輩相良さがらりょうをキャンパスで見つけ、気づかれないうちに忍び足でソロソロと逃げようとした……が、失敗! 見つかってしまった!


「佐藤さん! 久しぶり! いつ練習に来る? 中野さんにもおいでって言っておいてよ」


「すいません。私達、最近、金欠でバイト入れまくってるんです」


「そうか、残念……でも週1でもいいからおいでよ。皆待ってるよ」


 相良先輩は人当たりがよくてスポーツ万能なイケメンだからもてている。先輩が萌達に練習に来てよって誘うのを他の女子に見られると、嫉妬の炎がすごい。だから面倒は避けたくてなるべく彼に遭遇しないように萌達はしていた。


 萌とリコは、新歓の時期が終わってから練習が辛くてテニスサークルから足が少しずつ遠のいた。去年、萌が1年の時にミスコンで優勝してから『うちの部員がミス甲北』と自慢したり、無理矢理練習に連れてこようとしたり、口説いたりする輩が増えた。それで萌達は、鬱陶しくなってますます行きたくなくなってしまった。2人っは今年の新歓コンパには行ったけど、先を争って萌の隣に座ろうとしたり、どんどん酒を飲まそうとしたりする部員がいてそれきり練習も行かなくなった。


 ――はぁ……めんどくさいなぁ……サークルなんて入らなきゃよかった。


 萌は上京してきた1年半前、東京で見ること為すこと全てがキラキラしてるように思え、憧れのテニスサークルも輝いて見えた。テニスサークルに入っている東京の女子大生ってなんかキラキラしてる、そんな風に思っていた。


 萌には田舎者の自覚があって1人じゃ恥ずかしかったので、渋っていたリコを無理矢理誘って一緒にテニスサークルに入部した。新歓コンパの後、連日のテニスの練習が始まり、ふくらはぎがって全身筋肉痛になった。毎日バタンキューで授業の課題もろくにできず、萌はふと思った。


 ――あれ? 私が東京でやりたかったのってテニス?


 そこから幽霊部員への道は早かった。


 ――私の女子大生ライフにこのテニスサークルはいらない!


 先輩との再会後まもなく、萌とリコは引き留めにあいながらも、『勉強とバイトが忙しくてぇ』なんて大嘘(一部本当)をついてなんとかテニスサークルを辞められたのだった。


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 テニスサークルに恨みはありません。別に別のサークルでもよかったんですが、リア充が多そうなイメージがありまして……大学で真面目にテニス頑張ってる方々、すみません。

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