第4話 モブのくせに生意気な幼馴染

幼馴染の園田悠がもう何年も生意気だ。昔は買い物やクレーンゲームに延々と付き合ってくれたのに、いつの間にか私の言うことをろくに聞かなくなってむかつく。


陰キャのくせにミス甲北に構ってもらって感謝もないなんてありえない!私のファンがどんなに私を崇拝しているか見せつけても動揺しないなんてどうかしてる!


同率1位でミス甲北になった佐藤萌もよりによって同じゼミだけど、ズーズー弁で訛ってる田舎者と東京生まれ東京育ちの私を比べるまでもない。


私が風邪で大学を休んだ日、よりによって佐藤が私の悠にコナかけた。私の友達が駅前のムーンバックスで偶然、佐藤と悠が一緒にいるところを見たって言ってた。でも悠はきっぱり佐藤を振ったみたい。佐藤は半泣きでムーンバックスを出て行ったらしい。ざまぁ見ろ!


でも何を話していたか、悠に聞かなくちゃ!毎日一緒に帰るとありがたみが薄れるから昨日は取り巻きと帰ったけど、今日は悠と一緒に帰ってやろう。そして佐藤と何を話したか問い詰めてやる!


最後の授業の後、悠のところへ行った。悠も今日はこれが最後の授業のはずだ。

ん?なんで佐藤が悠と話してるの?!


「悠~!一緒に帰ろっ!」

かわいく悠を呼んで腕を取った。


「あ、うん、でも佐藤さんと話してるところだから、ちょっと待っててもらえる?」


わかったって言ってその場にとどまっていたら、悠と佐藤の両方がなんだか居心地悪そうにもじもじしていて話を再開しない。


「…真理には関係ない話だから、ちょっと席はずしてもらえる?」


なっ!どういうこと?!悠がそんなことを言うなんて生意気なっ!でもそんな態度はおくびにも出さず、目をウルウルさせて健気な美人の振りをする。っていうか、私、ほんとに美人だし。


「…うん、わかった…早くしてね」

「うん、そんなにかからないから大丈夫」


ほんとにそんなに時間かからず、体感的に2、3分話しただけで悠はこっちに来た。少し離れた所で見ていたけど、悠と佐藤が甘い雰囲気とかいうわけでもなかった。


でも当たり前よね!私みたいに美人な幼馴染がいるんだから!というか、私達、両片想い?!ムフフ!悠も意地っ張りなんだから!じれじれもほどほどにしてくれなきゃね!でも私から告白なんてしない!こういうのは男から告白しなきゃいけないの!私は美人なミス甲北なんだし、モブ男の悠に私から告白するのはありえない!ダサい男は美人の幼馴染に恋焦がれて告白するの。逆じゃいけない。それが当たり前!


「ねえ、悠、この間佐藤さんと2人でムーンバックスにいたって聞いたよ。どうして?」

「どうしてって…なんてことないよ。たまたま駅前で会ってちょっとコーヒー飲んだだけだよ」

「嘘!待ち合わせしてたんでしょ?時計塔の前で待ち合わせしてたの、見た人がいるよ」

「だとしたら何?真理には関係ないよね?」

「なっ…!私が知りたいから聞くの!!何話してたの?!言いなさいよ!」

「なんだっていいじゃん。俺、今日バイトだから、反対方向。じゃあな」


プンプンしながら電車待ってたら、反対方向のプラットフォームに悠が見えた。私をちゃんと見て手を振りなさいよ!って思ってじっと見たら、よりによって佐藤と話していて私に気付かない。

何なの?!悠のくせに!頭来る!


真理はあまりに頭に来ていて萌の友達リコもプラットフォームに一緒にいるのが見えていなかった。


--------------------------------------


津軽弁がズーズー弁とか、訛ってるというのはあくまで登場人物『新田真理』の偏見です。私の考えではありません。

新田真理は、自分に自信満々でそんな自分に惚れない男はいないぐらいに思ってます。そして自分が園田君の気持ちをへし折ったきっかけを作ったのを覚えていません。まあ、私が男なら、いくら美人でもそんな女性はゴメンですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る