第4話 モブのくせに生意気な幼馴染

 幼馴染の悠がもう何年も生意気で真理はイライラしていた。昔は買い物やクレーンゲームに延々と付き合ってくれたのに、いつの間にか真理の言うことをろくに聞かなくなって真理はむかついている。


 ――陰キャのくせにミス甲北に構ってもらって感謝もしないなんてありえない!


 ――私のファンがどんなに私を崇拝しているか見せつけても動揺しないなんてどうかしてる!


 同率1位でミス甲北になった佐藤萌も同じゼミだけど、ズーズー弁で訛ってる田舎者と東京生まれ東京育ちの真理を比べるまでもない。


 でも真理が風邪で大学を休んだ日、よりによって萌がにコナかけた。


 真理の友達が駅前のムーンバックスで偶然、萌と悠が一緒にいるところを見たのだ。でも悠はきっぱり萌を振ったらしい。萌が半泣きでムーンバックスを出て行ったのを友達が見たそうだ。


 ――ざまぁ見ろ!


 でも何を話していたか、真理は悠に聞かなくちゃいけない。


 ――毎日一緒に帰るとありがたみが薄れるから昨日は取り巻きと帰ったけど、今日は悠と一緒に帰って


 ――萌と何を話したか問い詰めてやる!


 最後の授業の後、真理は悠のところへ行った。悠も今日はこれが最後の授業のはずだ。


 ところが、悠は萌と話していた。それを見て真理の怒りがメラメラと燃え上がってきた。でも真理は、何食わぬ顔してかわいく悠を呼んで彼の腕を取った。


「悠~! 一緒に帰ろっ!」


「あ、うん、でも佐藤さんと話してるところだから、ちょっと待っててもらえる?」


 真理がわかったと言ってその場にとどまっていたら、悠と萌の両方がなんだか居心地悪そうにもじもじしていて話を再開しない。


「……真理には関係ない話だから、ちょっと席はずしてもらえる?」


 ――なっ! どういうこと?! 悠がそんなことを言うなんて生意気なっ!


 真理はそう思ったけど、そんな態度をおくびにも出さず、目をウルウルさせて健気な美人の振りをする。


 ――っていうか、私、ほんとに美人だし。


「……うん、わかった……早くしてね」


「うん、そんなにかからないから大丈夫」


 本当にそんなに時間かからず、体感的に2、3分話しただけで悠は真理のほうに来た。真理は少し離れた所で見ていたけど、悠と萌が甘い雰囲気を醸し出していたわけではなかった。


 でもそれは真理にとって当たり前だ。なんと言っても悠には真理みたいに美人な幼馴染がいるんだから!


 ――幼馴染っていうか、私達、両片想い?!


 ――ムフフ! 悠も意地っ張りなんだから! じれじれもほどほどにしてくれなきゃね!


 ――でも私から告白なんてしない! こういうのは男から告白しなきゃいけないの!


 ――私は美人なミス甲北なんだし、モブ男の悠に私から告白するのはありえない!


 ――ダサい男は美人の幼馴染に恋焦がれて告白するの。逆じゃいけない。それが当たり前!


「ねえ、悠、この間佐藤さんと2人でムーンバックスにいたって聞いたよ。どうして?」


「どうしてって……なんてことないよ。たまたま駅前で会ってちょっとコーヒー飲んだだけだよ」


「嘘! 待ち合わせしてたんでしょ? 時計塔の前で待ち合わせしてたの、見た人がいるよ」


「だとしたら何? 真理には関係ないよね?」


「なっ……! 私が知りたいから聞くの!! 何話してたの?! 言いなさいよ!」


「なんだっていいじゃん。俺、今日バイトだから、反対方向。じゃあね」


 真理は一緒に帰れると思っていたのに、悠は行ってしまった。


 その後、真理がプンプンしながら電車を待ってたら、反対方向のプラットフォームに悠が見えた。真理は自分をちゃんと見て手を振りなさいよ!って思って悠をじっと見たのに、悠はよりによって萌と話していて真理に気づかなかった。


 ――何なの?! 悠のくせに! 頭くる!


 真理はあまりに頭に来ていて萌の友達リコもプラットフォームに一緒にいるのが見えていなかった。


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津軽弁がズーズー弁とか、訛ってるというのはあくまで登場人物『新田真理』の偏見です。私の考えではありません。

新田真理は、自分に自信満々でそんな自分に惚れない男はいないぐらいに思ってます。そして自分が園田君の気持ちをへし折ったきっかけを作ったのを覚えていません。まあ、私が男なら、いくら美人でもそんな女性はゴメンですね。

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