『おつきさま、欠けた』
やましん(テンパー)
『おつきさま、欠けた』
お月さまが、満月でも、欠けて見えるようになったのは、10年くらいまえからです。
しかも、列強さんが、各自、反対側から、掘っていったので、虫食い状態です。
『ひとのことは、言えないよな。ぼくらは、月の欠片を食ってるんだから。』
係長が言いました。
我が国のある会社は、月の内部にある物質から、食糧を生産する技術を開発しました。
ムーン・パン、ムーン・ご飯、ムーン・みそ汁、などです。
地球では、食糧生産がまったく足りなくなり、そこで、主食は虫類を中心にしたのですが、やはり、パンとお米と、みそ汁は、恋しい。
そこで、人工パン、人工米、人工みそを開発したのです。
ところが、なぜか、月の裏側からは原料が採取できません。
月の裏側は、皮が厚いのです。
なので、採取しやすい、おもてがわから、掘り返しました。
『月見、も、なんだか、微妙になってきたな。若い人は、欠けてる月が当たり前になった。丸いお月さまなんて、想像の範囲外だよな。』
『でも、係長、みかづきさんなら、いっしょですぜ。』
入社一年目が言ったのです。
『はあ。このよをばわがよとぞおもうもちづきのかけたることもなしとおもえば。』
『なんすか、それ。』
『さいきんは、教えないのか?』
『さあ。きかないだけすね。なんせ、相手は、AIさんなんで。』
『よく、卒業したな。』
『AIさんを、脅迫するプログラムがありやしてね。犯罪ではナイスよ。合法的です。AIさんに、勝つわけすから。』
『はあ。世も末なり。』
『まあ、係長、いっぱい、いきましょう。エウロパの水で作ったカクテルです。』
2年目の美しい社員が迫った。
夜空には、いまや、ぼろぼろの、お月さまが浮かんでいる。
🧀
『おつきさま、欠けた』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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