第3話




 姿勢正しく、細い目はやや伏せがちに。

 両の手は軽く合わせて下丹田の上に添えて。

 内巻きの髪の毛と同じ淡い若草色の広がったスカートも、透け感が美しい東雲色のフレスコタイも乱れがないように、華麗に優雅にやおら歩を進める。


 ごきげんよう。

 暗殺者として育てられた令嬢は世話係に物腰やわらかく挨拶をしながら、床が桜色の大理石調タイルで敷き詰められた廊下を進んで、ボスの元へと向かった。




 いつもと変わらない日だった。

 変わらない日になるはずだった。




 暗殺する対象者の写真を見せられるまでは。













(2023.4.12)



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