25 醜い二人

ギィィィ〜……


エドモントが扉を開けると、美しい緑に囲まれた光景が広がる。


「全く……人々は焼け落ちた荒れ地で生活をしているというのに、戦争を起こした張本人たちはこんなに素敵な場所で暮らしているなんてね……呆れたものだわ」


私は背後を振り返った。そこには騎士たちに縄で縛り上げられ、上半身ボロボロに焼け焦げた服を身にまとうクラウスとオフィーリアの姿がある。


「お、お前……ほ、本当に……我々を処刑するつもりなのか……?」


これから処刑される恐怖のためだろう。全身をガタガタと無様に震わせたクラウスが私に訴えかけてくる。


「ええ、そうよ。同じことを二度も言わせないで頂戴」


するとオフィーリアが叫んだ。


「い、いやよ!! 死にたくないわ!!」


「皆そうよ。誰だって死にたくは無かったわ……なのにお前たちは私利私欲のために、我が一族を滅ぼし……挙げ句に戦争を興したのよ。未だに終わりを見せない、悲惨な戦争を……!」


私は吐き捨てるように言った。


「お前たちが処刑されたことが知れ渡れば、『アレス』国の騎士たちは戦争から手を引くでしょう。そして『モリス』国の勝利となる。十年に渡るこの戦争は終わるのよ。だから、なんとしてでも二人にはこの場で死んでもらうわ」


「ひ……!!」


怯えるクラウスに対し、オフィーリアは命乞いをしてくる。


「お願い! わ、私を殺す意味はないわ! 処刑するなら……クラウスだけにしてちょうだい!」


「何だと! お前ひとりだけ助かるつもりか!!」


「そうよ! 悪いの!? クラウスが死ねば丸く収まるのよ! 元々あなたがユリアナと婚約破棄をしたがっていたから私は手を貸しただけよ!」


「黙れ!」


醜い言い争いを続ける二人。


「黙りなさい!」


私は炎の玉を右手で作り出すと、二人はとっさに口をつぐむ。


「ユリアナ様、どこで二人を処刑するのですか?」


エドモントが尋ねてくる。


「そうねぇ……」


あたりを見渡すと、城の中庭に大きな木が植えられている様子が目に止まった。


「そうねぇ。あの木に二人まとめてくくりつけてちょうだい」


私は一本の巨木を指さした。


「「御意!」」


二人の騎士が返事をすると、クラウスとオフィーリアを縛り上げた縄を引いた。


「来い! お前ら!」


「ヒッ! い、痛い! 引っ張らないでくれ!」


「痛い! やめて! やめてー!!」


激痛の為だろう、涙を流しながら懇願するふたり。私は彼らが巨木に連れて行かれるクラウスとオフィーリアを冷静な目で見つめていた。


「や、やめてくれ!! た、た、頼む! 謝る! 謝るから!!」


「神様! どうかお助け下さい!」


最期のあがきとばかりに騒ぐ二人はなすすべもなく木にくくりつけられた。


「ユリアナ様、準備が出来ました」


騎士が私に声をかけてくる。


「ご苦労さま。上出来よ」


私は笑みを浮かべると、ふたりに近づいていく――

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