24 動じない心

「しょ、処刑だって!」

「本気で言ってるの!?」


クラウスとオフィーリアが悲痛な叫びを上げる。


「ええ、当然でしょう……? 私達一族はお前たちによって滅ぼされたのよ? そうね……二人には生きながら焼け死んでもらおうかしら? 私とは真逆の死に方をしてもらうわ。この二人を捕らえてちょうだい」


「承知いたしました、ユリアナ様。お前たち! あの者たちを縛り上げろ!」


エドモントがうなずき、騎士たちに命じた。


「「はい!」」


するとすぐ背後にいた二人の騎士が返事をし、素早くクラウスとオフィーリアの背後に回り込んで持参していた縄で縛り上げた。


「ギャア! い、痛い!!」


「や! やめろ! 背中の火傷がぁ!!」


背中に大火傷を負った二人は、縄で縛られて苦痛に満ちた悲鳴を上げる。


「立たせて歩かせて頂戴。城の外で処刑するわ」


冷たい声で言い放つ。


「はい、ユリアナ様。ふたりを立たせろ!」


エドモントの言葉に、二人を縛った騎士たちが乱暴に縄を引いた。


「おい! 聞こえただろう!? 立て!」

「さっさと立つんだ!!」


「ヒイッ!! な、縄をひ、引っ張らないでくれ!!」


「痛い! 痛いのよ!! お願い! 許して!!」


火傷が相当痛むのだろう。ふたりとも涙を流しながら、叫ぶ。けれど、私の心は動じることはない。


「立ったようね。では外に連れ出しなさい」


「はい」


騎士は頷くと、乱暴に縄を引っ張った。


「おい! 聞こえただろう!? とっとと歩け!」


何とか立ち上がった二人を今度は引きずるように歩かせる。


「先に城の外に出ているわ。何人か、ついてきてちょうだい」


私はそれだけ言い残すと、エドモントと数名の騎士たちを引き連れて城の外へ向かった。



****


1階のホールに足を運ぶと、私は少しだけ眉をしかめた。なぜなら、一面血の海で物言わぬ無数の遺体が転がっていたからだ。


「これは……なかなかの光景ね」


むせ返るような血の匂いに、ハンカチで鼻を抑えながら隣を歩くエドモントに話しかけた。


「はい、ここにいた騎士及び兵士は皆殺しにしましたので」


「そうなのね。よくやってくれたわ」


「ありがとうございます。何より、彼らは我らの敵ですから」


「ええ、そうよ。それに……このことが、敵対している『モリス』国に知れ渡れば、先方の士気が上がるでしょう」


その時、背後で悲鳴が起こった。


「うわああああ!! な、何だ! これは!」


「キャアアア!!」


振り向くと、凄惨な光景を見て悲鳴をあげているクラウスとオフィーリアの姿があった。


「この程度のことで悲鳴を上げるなんて……いかに自分たちは安全な場所で生活してきたのかが分かるわね」


すると私の言葉に同意するエドモント。


「ええ、そうですね……ユリアナ様は十三歳の頃から戦場で戦ってきたというのに……」


そう。私は十三歳の頃から戦場で敵と戦ってきた。数え切れないほど、凄惨な現場を目にしてきたのだ。この程度で悲鳴を上げるなど、本当に情けない男だ。


「でも、これくらい怯えさせれば……もう逃げようとする気も起こらないのではないかしら?」


尤も縄で縛られている状況で逃げるなど、もはや不可能だろう。

やがて、大扉の前に到着した。


「ユリアナ様、今扉を開けます」


「ええ。お願い」


わたしのことばにエドモントはうなずき、大扉を開けた――

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