20 ジェイクの過去話 2 

――バンッ!


隠れ家に到着すると、ミレーユを抱きかかえたまま扉を開けた。


『待ってろ、ミレーユ。すぐに暖炉の火を起こしてやるからな』


暖炉の前に意識を失ったミレーユを寝かせると、暖炉の準備を始めた。

既に薪は大量に用意しておいた。急いで薪を暖炉にくべると、マッチを擦って火を放つ。


すると――


パチパチパチパチ……


やがて暖炉の火が爆ぜる音が聞こえ始めてきた。急いで濡れた服を着替えると、次にミレーユに視線を移す。


『ミレーユ……着替えさせなければな……けれど着替えもないし、第一……』


困ったことになった。

いくら婚約者とは言え、まだ俺とミレーユはそのような関係を持ったことはない。

それ以前に意識が全く無い女性の服を脱がすのは抵抗があった。


やはり、彼らに頼もう。


俺はすぐに小屋を飛び出すと、隣の家に向かった。



――ドンドン!


『朝早くにすみません! 隣に住むジェイクです!』


するとすぐに扉が開かれ、女性が顔をのぞかせた。


『あら、ジェイクさん。おはようございます。こんなに朝早くどうしたのですか? 夫ならもう畑仕事に行きましたけど?』


『実は、川で魚釣りをしていたところ……若い女性が流されてきたのです。慌てて助け出したのですが、意識もなくてずぶ濡れで着替えも無くて……申し訳ありませんが、手を貸して頂けませんか?』


『まぁ! そうなのですか!? 私の服で良ければお貸し致します。すぐに用意してうかがいます』


『ありがとうございます。では俺は先に戻っていますので』


お礼を述べると、急いで俺は隠れ家へ戻った。


『ミレーユ!』


彼女の名を呼びながら扉を開けるも、やはりミレーユは意識を失ったままだった。そっと身体に触れるとまるで氷の様に冷え切っている。


『ミレーユ……』


その時――


ドンドン!


ノックされる音が響き渡ったので急いで扉を開けると、先程の女性が衣類を手に立っていた。


『ジェイクさん、その女性はどこにいるのですか?』


『はい、暖炉の前に寝かせています。


『ではすぐに着替えをさせますので、ジェイクさんは外に出ていて下さい』


『ええ、お願いします』


そして俺は小屋を出て、ミレーユの着替えが終わるのを待った。



****


『ジェイクさん、着替えは終えたのでベッドに運んで頂けますか?』


しばらくすると、扉が開かれて女性が声を掛けてきた。


『はい、分かりました』


小屋に入ると、そこには服を着替えたミレーユが横たわっていた。


『すみません、私一人ではベッドに運べなかったので……』


『いえ、本当に感謝します。いずれお礼をさせて下さい』


『お礼なんていいですよ。ジェイクさんは人助けをされたのですから。それでは私は子供たちの世話があるので、もう行きますね』


そして女性は帰って行った。


『ミレーユ……』


早速、ミレーユを抱き上げてベッドに運んだ。


『早く……目を開けてくれ。ミレーユ』


俺はミレーユの目が覚めることを祈った。


そして、次に目が覚めた時……ミレーユは自分のことを『ユリアナ』と名乗ることになる――

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