15 夢の話

「キャアアアアアッ!!」


思わず悲鳴を上げ、私は目を覚ました。


「な、なんて……夢なの……」


身体を起こし、震えながら自分の両手を見つめた。当然その手には血など付着していない。


「一体どうしたのですか!?」

「ユリアナッ!」

「何事ですか!?」


エドモント、ジェイク、そしてラルフが部屋の中に飛び込んできた。


「あ……みんな……」


額に浮かんだ寝汗を拭いながら、私は三人を見渡した。


「今すごい悲鳴が聞こえましたが……何かあったのですか?」


心配そうに声をかけてきたのはエドモントだ。


「い、いいえ……なんでもないの。ただ、ちょっと夢を……」


「夢? 一体どんな? 差し支えなければ教えてもらえないかな?」


ジェイクが尋ねてきた。


「え……?」


彼の顔はとても真剣なものだった。


「で、でも……本当にただの夢なのよ?」


「ですが、あの悲鳴はただ事でありませんでしたよ?」


ラルフまで夢のことを聞きたそうにしている。


「……分かったわ。そこまで言うなら……」


そこで私は先程の夢の話を始めた。

真っ暗な森の中を何者かに追われていたことを。何とか逃げ切り、近くを流れる川で水を飲もうとした時、自分の身体にベットリと何者かの血が付着していたこと。

そのショックで川の中に転落し……意識が遠のいていった夢を――


私が夢の話をしている間、三人は一言も口を利かずに神妙な面持ちで聞いていた。


「だけど、本当に夢とは思えないほど真実味があって……それで悲鳴をあげてしまったのよ。ごめんなさい、驚かせてしまって」


「いえ……そのような夢なら悲鳴をあげて当然ですよ」


ラルフが笑みを浮かべる。


「それにしては随分事細かな夢ですね。夢にしては随分リアルですし」


エドモントが首をひねると、ジェイクが真剣な目で私を見つめていることに気づいた。


「ジェイク? どうしたの?」


「いや……少し気になることがあって」


「気になること?」


「ああ。もしかしたら、ユリアナが見た夢は……本当の出来事だったんじゃないかな?」


「まさか……?」


ジェイクの言葉にエドモントが驚きの表情を浮かべる。


「ユリアナ、これは俺の勘だが……もしかしたらその夢は実際にあったことなんじゃないだろうか?」


「え……?」


「おそらく、その身体の持ち主の記憶が夢となって現れたんじゃないかと俺は思うんだ。ユリアナはその身体の記憶がまるきり無いのだろう?」


「え、ええ……」


「あまりの衝撃的なショックで記憶が無くなってしまったのかもしれない。もし、この先も今のような夢を見た場合は教えてもらえないか?」


何故、ジェイクがこれほどまでにこの身体の持ち主のことを気にかけているのかは分からないけれども……


「ええ、分かったわ。これからも妙な夢を見た場合は報告するわ」


私はジェイクに返事をした――



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