13 隠れ家での夜
「ユリアナ、大丈夫かい? 顔色が真っ青だ」
隣に座るジェイクが心配そうに尋ねてきた。
「え、ええ……大丈夫です……」
けれど、エドモントが首を振った。
「いいえ、無理をなさらないで下さい。今にも倒れそうな顔色をしていますよ。少し休まれたほうが良いのではありませんか?」
「そう……ね。そのほうが良いかも……」
考えてみれば私とジェイクは闇夜に紛れてイカダに乗って川を下って、この地に来たのだ。そして隠れ家まで歩いて、やっと辿り着いた。
「この奥には簡易ベッドが置かれている部屋があります。そこで休まれたほうがいいでしょう。そちらの人も一緒に」
エドモントはジェイクに視線を向ける。よく見れば、彼も顔に疲れがにじみ出ていた。
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせて頂きます」
ジェイクは余程疲れているのか、エドモントの提案をすんなり受け入れた。
「では、参りましょう」
エドモントが立ち上がったので、私とジェイクも席を立った。
「ゆっくり休んで下さい」
ラルフに見届けられながら、私達は部屋を後にした。
「どうぞこちらのお部屋をお使いください」
「あ……もしかして、ここは……?」
「はい、ここはユリアナ様がこの隠れ家を使用された際に使われていた部屋です」
部屋の状態は以前と同じだった。簡易ベッドが置かれ、かつて使用していたライティングデスクもそのままだった。
「私とラルフはユリアナ様の遺体が見つかってはいなかったので、ずっと心の何処かで、生きていらっしゃるのではないかと信じておりました。なのでこの隠れ家にやってきた際に、お部屋を整えておいたのです」
「ありがとう、エドモント」
まさか、私が生きていると信じていたなんて‥‥…。
結局私は死に、別人の身体でこうやって今存在しているのが不思議な気分だった。
「それでは…‥えっと」
エドモントは背後に立っていたジェイクを振り返った。
「ジェイクです。どうぞジェイクと呼んで下さい」
「それではジェイク。部屋を案内しますよ。ユリアナ様は今夜はもうお休みください」
エドモントが再び私に声を掛けてきた。
「ええ、分かったわ。おやすみなさい。エドモント、ジェイク」
「おやすみなさい、ユリアナ様」
「お休み、ユリアナ」
エドモント、ジェイクが交互に挨拶をして部屋を出て行くと私はひとりになった。
「ふぅ……疲れたわ……」
上掛けも何もないベッドに横たわった。
「無事に隠れ家迄辿り着けたけれど……ここからどうしよう…‥」
エドモントとラルフに出会えたのは、とても喜ばしいことだった。けれども、まさかベルンハルト家の騎士達が全員反逆罪で囚われていたとは思いもしなかった。
「恐らく……それだけ私達が邪魔者だったということよね……」
それにしても黒幕は一体誰なのだろう? やはり『タリス』の王族なのだろうか?
「……分からないわ……でも『タリス』も……シュタイナー家も……私の敵で…あることに……変わりは無いのだから……」
旅の疲れが余程たまっていたのだろう。
私はそのまま眠りに就いた――
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