12 十年前の出来事 3

「それでは、やはりベルンハルト家を陥れたのはシュタイナー王家だけではなく、『タリス』王国の王族も絡んでいたのね……二つの王家は共謀してベルンハルト家を滅ぼしたのだわ」


悔しさで歯を食いしばる。


「ええ。確かにベルンハルト家が滅ぼされた直接の原因は二国間の王族たちのせいではあると思いますが……シュタイナー王家は『タリス』に騙されたのかもしれません」


考え込むようにエドモントが口を開いた。


「そうですね。危険な戦地で戦わされているのは『アレス』国の者達ばかりですから。この国は戦火に見舞われているばかりか、戦死者も数多く出ています」


ラルフが鎮痛の面持ちで言う。


「それでは……シュタイナー王家は『タリス』に騙されたということ? この国の剣と言われるベルンハルト家がいれば『アレス』を手中に収めることが難しいと判断して、オフィーリア王女は……」


もともとクラウス王子は私が婚約者であることを良しとしていなかった。そこへこの国を狙う『アレス』王国がオフィーリア王女を使って、クラウス王子に近づき誘惑をした……?


「どうしたんだ? ユリアナ。顔色が真っ青だ」


ジェイクが心配そうに声を掛けてきた。


「い、いえ……大丈夫です」


「しかし、どのような事情があれどベルンハルト公爵家の方々を処刑したのはシュタイナー王家です。つまり、我々の仇はこの国と『タリス』国で間違いはないでしょう?」


ラルフがエドモントに尋ねる。


「ああ……そうだ。だから我々は革命軍を結成し、仲間を集めているのだからな」


「革命軍……? 一体それはどういうことなの? そう言えば、あなた達は十年もの間、今までどうしていたの?」


私は二人に尋ねた。


「「……」」


すると、二人は気まずそうに顔を見合わせ……エドモントが驚きの言葉を口にした。


「実は……我々はつい最近まで、謀反の罪を犯した罪人として地下牢に囚われていたのです。私とラルフは同じ地下牢に囚われていましたが、戦争の火種が地下牢にまで及び……砲撃で破壊されたのです。けれど、それが功を成したのでしょう。地下牢は破壊され、我々は脱出することに成功したのです」


「え! そ、そうだったの……!」


まさか十年もの間、地下牢へ囚われていたなんて……


「私達は運良く地下牢から脱出出来ましたが、他の者達はどうなったのかはまだ分かりません。そこでこの場所を拠点とした革命軍を結成し、仲間を集めている最中なのです。かつてベルンハルト家に仕えていた者達を探しながら……」


エドモントの話はショックだった。


「それでは……他の人たちの行方はまだ分からない……ということね?」


「はい。生きているかどうかも……今、賢明に探している最中ですが……何分我々が自由の身になれたのは最近のことですので」


ラルフが悔しそうに語る。


「……そんなことになっていたなんて……」


『ウィスタリア』に戻ってくれば、なんとかなると思っていたのに……


私は自分の考えが甘かったことを痛感した――

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