第4話 2週間後に死ぬ占いが出る?

「とりあえず、その救済じゃないってのは後で公式に確認してもらうとして」


 ひとまず、誤解を解くのは諦めて、現状に戻す。


「もしかして、これからそのうち魔物が攻めてくるってこと?」


『いつの段階の世界かわからないけど、そういうことかも?』

『何か日付わかるようなやつない?』


 聞かれて考えてみる、


「えっと、最近あったこととしては、自分が錬金術師になったり」


 あとは、


「そうそう、同期の人が自称勇者とか名乗り始めたりしたね」


『勇者なんていたっけか?』

『始まりの街にはそんなのいなかったはず』

『詳しく』


「あ、えっとね、私の同時期に祝福受けた人がいるんだけど、旅人の認定を受けたりしてたね。旅人って国からは魔王討伐を期待されてるんだけど、そいつがどうしようもないやつでね」


『……』

『なんか聞いたことある設定だな……』


「旅人になってから1週間くらい経つのに、未だにゴブリンにすら勝てなくていつも泣きついてくるんだよ」


 酷くない? と私が言うと、


『うん、わかった』

『さすが運営、えぐいわぁ……』


「うん? どういうこと?」


 なんか視聴者さんが、呆れた感じ。


『その自称勇者な……、俺たちだ』


 えっ?


『アリスちゃんの同期、国から魔王討伐を期待された旅人の認定。明らかにプレイヤーの初期設定です』

『まぁ、流石に1週間でゴブリン倒せないやつはいなかったけど』

『いや、いたのかもよ?』


 どうやら、ゲームのプレイヤーの設定がそのままらしい。


『つまり、運営的には俺たちがどうしようもないから、アリスちゃんが魔王討伐に出かけることになったという設定かと』

『なにそれ、やっぱえぐすぎね?』

『まぁ、あの運営ならやりそうなことではある』


 だから、設定とかじゃないんだけど。まぁ、いいや。


「一応言っておくけど、私がどうしようもないと思ったのはうちのどうしようもない勇者だからね。今見てくれる人たちのことじゃないから」


『わかってるけど』

『まぁ、ちょっと運営の悪意にはイラッとしたけど、ヨシ』


 ヨシなのかな?


「えっと話をまとめると、話の流れとしては私が代わりに魔王討伐にいかなきゃいけないってこと?」


『おそらく』


 えー、そんなこと私にできるはずがないじゃない。

 いや、でもひょっとしたら何か方法があるかも?

 どうしたらいいかなと聞いてみることにする。

 しかし、


『うーん、ぶっちゃけわからん』

『せやな』


 えっ? どうして?


『そもそも、まだ魔王の姿とか公開されてないからな』


 あ、あー、そういうこと……


「そういえば、ゲーム始まって一年とか言ってたっけ」


『そうそう、もうちょいで1周年だね』

『魔王はまだシルエットみたいのしか公開されてないね』

『一周年イベで公開されるという噂は聞いた』


 へぇ、なんかちょっと楽しそう。私が当事者じゃなかったらだけど。

 そう当事者の私としては、ちょっと笑えない事実に気がついてしまった。


「そういえば、さっき言ってたイベントって結局開始どのくらいだったの?」


 嫌な予感がひしひしとしている。


『あー、それによってはまたあの四天王襲来が発生する可能性があるのか』

『そういえば、さっき旅人に指名されて一週間とか言ってたっけ?』

『それだとあんまり時間なさそうだな』


 おや、なんか怪しい気配がしてきたぞ?


『えっと、第一回イベントが開始3週間とかだったね』

『初回イベの悲劇だからな』

『ってことはこのままだと』


「あれ? 私、というかゲームのアリスちゃんて、そのイベントで死んだのでは?」


 いや、今の私が生きているから、そのゲームのアリスちゃんのことはいいとしてもだ。


「ひょっとして、2週間後くらいに四天王の一人が街に攻めてくるってこと!?」


 予想外の情報に思わずびっくりしてしまった。



『なるほど、つまりこの放送の趣旨としてはだ』

『2週間後の四天王襲来イベでアリスちゃんを生存させること』

『くっそアツイ展開じゃないか!』


 なんか視聴者さんが盛り上がってるけど、当事者の私としては、お前2週間後に死ぬ占いが出てるぞ? なんて突きつけられた気分だ。


『そういうことであれば全力で支援しなければだな』

『せやな。きっとここを生き抜けば救済になるんだろう』

『俺たちがアリスちゃんを助けるんだ!』

『やっぱり、くっそアツイ展開じゃないか!』


 視聴者さん凄い盛り上げってて頼りになりそう。



「えっと、私どうしたらいいかな?」


 これだったらなんとかなるかも?


『計画を練ろうか』

『だな、ひとまず、ステータスを見よう』


 ステータス、えっと、見せてあげたいんだけど、どうすればいいのかな?

 さっき見れたステータスから、この放送画面? に切り替わったから戻せばいいんだろうけど、もどしたら放送画面見えなくならない?


『もっかいステータスって唱えれば開くで、配信画面と同時に開けたはず』


 困惑した私を見てか、視聴者さんが、教えてくれた。

 お礼を言いつつ、ステータス画面を開いてみる。

 配信画面が横にずれてステータス画面が開かれた。

 これをカメラにうつしてあげればいいのかな?


「これで見えます?」


 なんとかカメラをステータス画面に向けてみた。


『見える見える』

『見えた……けど……』

『ああ、これは……』

『『『酷い』』』


 酷いのコメントが羅列した。

 というか、明らかに10どころじゃない数流れているんだけど!?

 見ると、視聴者数が30になっていた。3倍になってる!?

 って、今はそれはいいや!


「なに! 何が酷い!?」


 むしろ、そのコメントが酷くない?


『だってなぁ……』

『ああ、錬金術師なんて地雷なんて言われてるし』

『ステの振り方も酷い』

『スキルもなぁ……』

『キャラリセットしたほうがマシまであるな』


 散々な言われようだった。


「そ、そんなに酷いの?」


『うーん、いや、生産職ならこんなもんじゃない?』


 おっ?


『あー、だな、四天王討伐ってことを考えなければ生産職としてはまぁ普通』

『俺氏、元錬金術師、レベル1の頃はこんなもんだったかな』


 おおっ、元錬金術師さん。うん? 元?


『ちなみに今は薬師に転職した、錬金術師はなぁ、ちょっと使えなさすぎて……』


 そもそも錬金術師は駄目らしい。


『作れるものの数はダントツなんだよなぁ』

『そうそう、なんでも作れるって触れ込みは伊達じゃない』


 おお、良い点もあるじゃない。


『でも、それ以上にデメリットがでかすぎてね』

『レベルを上げるのが辛すぎて殆どの人は諦めて他に転職する』

『今だとほとんどみない希少職だね』


「レベル上げが難しいの?」


『そうそう、そもそも他の職業に比べて必要経験値が高かったはず』

『確か薬師にくらべて5倍くらいだったはず?』

『しかも、適正レベルのアイテムを作るのも成功率が低い、俺氏の体験談』

『そのくせ作れるものは他の職業に比べて劣る』

『そりゃ育てるの辞めるわなってレベル』


 わーお、散々な上に散々だね。

 確かに、何度か錬金術もやってるのにレベル上がってない気はしてた。


『アリスちゃん、転職ってできないの?』


「転職……、私の知る限り聞いたことないけど」


『一応行ってみようぜ、できれば戦闘職がいい』

『というか、戦闘職じゃないと魔王討伐は無理でしょ』


 うん、まぁ、行ってみるのもやぶさかではない。


「それじゃあ、試しにできるか行ってみようか。どこでできるか教えてもらっていい?」


『いざ! ハローワークへ』


 ハローワークはなんか違う気がする、いや、違くないのか?

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