閑話12 夜LINE⑨【朝陽志乃・川咲日向】
午後十時半頃にて。
朝陽志乃
『日向起きてる?』
ひなた
『起きてるよー! ってか志乃も起きてたんだ』
朝陽志乃
『うん。今日はちょっとね』
ひなた
『ふむふむ。それでどうしたの?』
朝陽志乃
『あ、いや。その』
朝陽志乃
『兄さんに電話……したのかなって』
ひなた
『ははーん? 志乃、さては不安なんでしょ? あたしと司先輩がイチャイチャしてないかどーか!』
朝陽志乃
『イ、イチャイチャって……。それでどうなの!』
ひなた
『あ、志乃想像して恥ずかしくなってる』
朝陽志乃
『日向!』
ひなた
『してないよん』
朝陽志乃
『え?』
ひなた
『え?』
朝陽志乃
『電話……』
ひなた
『してないよん』
朝陽志乃
『え?』
ひなた
『え?』
朝陽志乃
『あれ。日向、兄さんに電話しようかなって言ってたよね……?』
朝陽志乃
『あれ……?』
ひなた
『あーいやあのね、電話しようと思ったの!』
朝陽志乃
『うん』
ひなた
『スマホを持ってうおおおおいくぞお!! ってところまではいったの』
朝陽志乃
『うん』
ひなた
『でもやめちゃった』
朝陽志乃
『え、どうして??』
ひなた
『たしかに司先輩の声聞きたいな~話したいな~って思った! それはその通り!』
ひなた
『だけど!』
朝陽志乃
『だけど?』
ひなた
『恥ずかしくなっちゃった』
朝陽志乃
『えぇ……』
ひなた
『あ、今絶対口に出して言ったでしょ! えぇってホントに言ったでしょ!』
朝陽志乃
『だって日向……』
ひなた
『待って! ちょっと考えてみて!?』
朝陽志乃
『なにを?』
ひなた
『仮に電話するとするじゃん?』
朝陽志乃
『うん。それで?』
ひなた
『そんなのもう、あたしは先輩のこと好きです~! って告白してるようなものじゃん!』
朝陽志乃
『え』
ひなた
『先輩たちはがくしゅー強化合宿だっけ? それで三日くらい会えなくて……』
ひなた
『そこでトークじゃなくて電話を選ぶってことは、それもう好きじゃん! 先輩に会えなくて寂しくて嫌です~! って遠回しに言ってるようなものじゃん!』
朝陽志乃
『待って日向。あの……日向って兄さんのこと好きだよね?』
ひなた
『好き! って恥ずかしいこと言わせないでよ~!(〃ノдノ)テレ』
朝陽志乃
『じゃあ別にいいんじゃないの……?』
朝陽志乃
『それに兄さんのことだから、多分そこまで気が付かないというか……ただ日向から電話かかってきたな~くらいにしか思わないんじゃ……』
ひなた
『それは! たしかに!』
朝陽志乃
『だから別にいいんじゃ……って』
ひなた
『そもそも! 夜に電話なんてカップルみたいじゃん!』
朝陽志乃
『え』
ひなた
『恥ずかしくて無理~!><』
朝陽志乃
『日向、グイグイいくんじゃなかったけ?』
朝陽志乃
『それに日向って、そういうの気にしないでガツガツいくタイプだとばかり……』
ひなた
『そ、それはそうなんだけど! あたしだってちょっと臆病になるときがあるといいますか……なんというか……』
朝陽志乃
『日向』
ひなた
『ん?』
朝陽志乃
『例えばだよ? 例えば兄さんじゃなくて昴さんが相手だったら電話できる?』
ひなた
『え? 昴先輩?』
朝陽志乃
『うん。例えばの話ね?』
ひなた
『あー昴先輩なら楽勝かも。なんなら今からでも鬼電できるかも』
ひなた
『昴先輩だったら気を遣わなくてもいいしね』
朝陽志乃
『それ、昴さんが聞いたら怒るんじゃ……』
ひなた
『えー? でもなんだかんだ文句言いながら話に付き合ってくれるでしょ? あの人そういう人だし』
朝陽志乃
『電話かけるってなったら緊張とかする?』
ひなた
『全然? 普通にポチーってできると思う。いまさら昴先輩相手に緊張とかしないって』
朝陽志乃
『うそ』
ひなた
『え?』
朝陽志乃
『あ、ごめん。その、兄さんと昴さんの違いはなんなのかなって……』
ひなた
『そんなのもう好きかどうかでしょ! 今電話して迷惑かなぁ、嫌いになったりしないかなぁ、邪魔じゃないかなぁ、って思っちゃうじゃん! 昴先輩はーまぁうん。好きだけどそういう好きじゃないし』
朝陽志乃
『え』
ひなた
『なんか今日の志乃、えって言うの多くない?』
ひなた
『別に志乃は司先輩に電話してもいいんじゃない?』
朝陽志乃
『兄さんに?』
ひなた
『だって家族だし、電話してもおかしくないでしょ? それにあたしみたいに恥ずかしくなって緊張したりしないだろうし』
朝陽志乃
『それは……まぁ、そうだけど』
ひなた
『いいなぁ~! 好きな先輩と夜の電話イベントとかもう女子の憧れだよ~! きゃ~!』
朝陽志乃
『好きな先輩と夜の電話……』
ひなた
『うんうん! あ、そうだ志乃さ』
ひなた
『あれ? 志乃?』
ひなた
『急に既読つかなくなっちゃった。志乃ー?』
ひなた
『まさか寝落ちした!? この流れで!?』
× × ×
思わずLINEを閉じてしまった。
日向からまだメッセージが来ているけれど、今はちょっと考えごとを優先したくて……。
――『それもう好きじゃん! 先輩に会えなくて寂しくて嫌です~! って遠回しに言ってるようなものじゃん!』
――『そんなのもう好きかどうかでしょ! 今電話して迷惑かなぁ、嫌いになったりしないかなぁ、邪魔じゃないかなぁ、って思っちゃうじゃん! 昴先輩はまぁうん。なんでもいいや』
――『いいなぁ~! 好きな先輩と夜の電話イベントとかもう女子の憧れだよ~! きゃ~!』
あれ……?
私、さっきまで……昴さんと電話してたよね?
トークじゃなくて……ちゃんと話してたよね?
昴さんに最初メッセージを送るとき、私なんて思ってた?
迷惑じゃないかな。
今も勉強してるんじゃ……。
邪魔にならないかな。
嫌なヤツ……って、思われないかな。
何回も見直して……実際に送るまで時間をかけて。
どうにでもなれ! って思いで送って。
いざ電話がかかってきたら嬉しくて……だけどすごく緊張して。
スマホを握ってるのに……出るときに一回深呼吸なんかしちゃってて。
前までだったら……緊張なんてしなかったのに。
きっと日向のように軽い気持ちでメッセージを送れたのに。
それに私、通話が終わるときなにを思った?
そう。
寂しい……って、思った。
――あれ?
もしも日向の言った通りだとすると……。
……私、もしかして――
いや。
いやいやいやいや。
待って。
待ってよ。
それだと私、まるで昴さんのこと――
……いや。
まさか、ね。
昴さんは私にとってもう一人のお兄ちゃんみたいな存在だし。
きっと兄さんと話しても同じように思ったに違いない。
……うん、そうだ。きっとそう。
そういうことだよね。
ビックリしたぁ……。
「あ、日向に返信しなきゃ」
『この感情』の
私はまだ、知らない。
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