ママのごはんは たべたくない

もちっぱち

ママの ごはんは たべたくない


 「もうママのごはんはたべたくない」

 


 けんたは、リビングを とびだした。

 


 テーブルには、ほかほかの あたたかい おやこどんが のって いた。



 ママは、さびしい そうに もくもくと ごはんを たべた。

 

 けんたは リビングを でると、ぷんぷんおこりながら ろうかの すみに しずかにすわって  いた。



(ママが いけないんだ。おこりながら

 つくったごはんは おいしくない って  いうから)



 けんたのおなかが、おおきな おとを

 だした。

 

 ぎゅるるるるるーーーー




 すると、だれも いないはずの となりのへやから わらいごえがした。



「ねぇ、きいた? いまのおと。ぜったいおなかすいてるよね。」


「うん、きこえた。」


 おそるおそる のぞくと、となりの わしつには、まっしろい にわとりと、ちゃいろのあたまが とんがった  たまねぎと 、ちいさな ひよこがいた。




たまねぎ「あのさ、おなかすいててもたべたくないときあるとおもうけど!」




にわとり「えー、おなかすいたらたべるよ。ぼくはいじでもたべる!」



ひよこ「あたしは、どっちでもいいわ。おいしければ。」




「あのさ、きみたちなにしているの?」



 けんたがよこからくびをつっこんだ。




「え? うわ、うわ。ちょっとごほんにんとうじょうだよ! ほら、ほんとうのことききなよ!」




 あとずさりしながら、たまねぎが にわとりの うしろにいく。




にわとりは あいたくちが ふさがらない。ひよこは とおくに にげた。



「ぼくたちは、みてのとおり。にわとりと、たまねぎとひよこだよ。わかるじゃん。」



「いやいや、あたりまえでしょみたいなかんかくでいわれても。なんでうちにいるのよ。」



 にわとりは、ためいきを つく。



「だから、さっきのゆうごはんのメニューなんだったの?」



 たまねぎは うしろから こたえる。



けんたは あごに ひとさしゆびを つけてかんがえた。



「え、あーー。おやこどん?」



 たべようと しなかった  おやこどんがあることを おもいだす。



「ごめいとう! そのとおりだよ、けんたくん。」



 にわとりに はなまるの ついたかみを ペタッと  あたまに はられた。



「へ? どういうこと?」



「つまりだね。ぼくたちはきみのゆうごはん。おやこどんってわけ。わかる?」



 にわとり、たまねぎ、ひよこが よこいちれつで ならんで せいれつした。



「え?ちょっとまって。にわとりは とりにくでしょ?  たまねぎは そのままだ として、なんで ひよこ? ふか してるじゃん。おやこどん じゃないよ!」


※ふか・・・たまごが かえること。




「まぁまぁ。たまごは あるけないでしょ。あしが ないし ころがって  われるでしょ?  あるけるものを だしたいんだよ。 きいろいから いいじゃん。そんな まじめに かんがえないで、えほんだからさ。」



「え? いみ わからないんだけど」



 こちらの がめんを みてくるけんた。



 にわとりたちは あわてて ひっぱり もどす。なにごとも なかった ように つづける。



「そういうことで、ぼくたちは おやこどんズ  なんだよ。」



 おうぎがたの くみたいそうを する   にわとりたち。



しっかり きまったらしい。ドヤがおを された。




「お、おう。そっか。んじゃ なんで ぼくのまえに でてきたんだ?」

「それは、さっきの はつげんに あります。」



 とつぜん めのまえに モニターを  だされた。



けんたの いちぶしじゅうを ろくがされていた。



まきもどしされて ふたたび さいせいボタンを おした。




「ここ、ここの はつげんです!」



 ゆびさしぼうで めがねを かけたにわとりは、さししめした。



『もう、ママのごはんは、たべたくない』



 エコーで  こえがなんども ひびいた。



「あ、それね・・・」




「けんたくん! これは どういうことか せつめいして いただきたい! はっきり ここで。」



 ひやあせを かいたけんたは かべにおいやられた。



「これは、つまり、ママが おこりながら つくったごはん だったから たべたくなくて・・・だからつい、いって  しまいました・・・ごめんなさい。」




 けいじドラマの とりしらべの ように 3人から つめよられたけんたは すなおにあやまった。




たまねぎ「いや、かちょう。これは、いかんですな。どうしますか?」



にわとり「うーん、これはちょうづめあんけんですな。ソーセージになるけいですな。」



 「えーーーー。ちょうづめ? ソーセージ?」



 にわとりと たまねぎは ミラーガラスのむこうで、おおきなこえで いっていた。



「じょうだんだよ、けんたくん。それはさておき、なんできみは たべたく なかったんだ?ん?」



 めがねのにわとりは といつめる。



「それは、まえにママが おこりながらつくったごはんは おいしくないからっていっていたから ぼくは たべたくないって、まえもっておいしくないって  わかるものたべないでしょ?

ねぇ?ぼくまちがっている?」




「でも、おなかすいているんだよね?」



「うん。それでもたべるならおいしいものたべたいじゃん。だったらそういうこといわないでほしいよ。」



「けんたくん。おかあさんは、なにをつくったんだい?」



「おやこどん。」



「きみはおやこどん、つくれるのかい?」



「つくれない。こどもだから。」



「うん。それじゃあ、こどもたからおかあさんがつくっているところ、ろくがしているからみてごらん。」



 にわとりはまたモニターをだしてきて、こうそくまきもどしをした。



もどるのは まえのひの えいぞうから だった。


 モニターみると、おかあさんはまえのひのおひるからおやこどんをつくるとかんがえて、メモにかいものリストをかいていた。



そして、けんたといっしょにスーパーでかいものしている。



けんたは、そのときにおやつコーナーでかってかってのおねだりをしていた。



それをみてはずかしくなったけんたはうしろをむいた。



 かったものは ぜんぶで 五しゅるいだった。


 とりももにく

 たまご

 たまねぎ

 めんつゆ

 おこめ


「ママはまえのひからおやこどんのじゅんびしていたんだね。きづかなかった。ぼくはおやつのことばかりかんがえていたよ。」



「そうそう。ぼくたちおやこどんズをつくるにはそのざいりょうがひつようなのさ。」



 たまねぎがよこからひょこっととびだしていった。


ひよこはひとみしりでうしろにいた。



「まだつづきがあるよ。」



 ママはかってきたものをれいぞうこやものいれたなにいれた。



「ここのひきだしはぼくのすきなおやつがはいるんだよ。ほら、ぼくチョコレートいれてるよ。」



 けんたはとくいそうにいった。


3人は、はいはいとうなずいた。


つづけてモニターをみた。


にわとりは、こうそく はやおくりを した。



「ここからは、ゆうごはんづくりをしているところまですすめるよ。ぼくたちがもうすぐたべられるところ・・・」



 にわとりとたまねぎがなみだをながす。


よこにいた ひよこは へやに ころがっていた びーだまを ころころ あそんでいた。


けんたはひよこをみてあきれていた。



 ママはおやこどんづくりをはじめた。


 おこめをおみずであらって、

すいはんきにいれてタイマーを

セットする。



 おなべにサラダオイルをひいた


 そこにまないたで

 ちいさくしたとりにく、

 たまねぎのじゅんにいれていためた。



 おみずとめんつゆをいれて、

 グツグツにこんでひがとおったら 

 わってまぜたたまごをそそぎいれた。



 あつあつごはんに

 かけたらできあがり。

 

 「ぼくたちのかんせいだ。」



 また おうぎがたくみたいそうを

 してみせた おやこどんズ に

 けんたは かんどうを おぼえた。



「すごいね。こんなふうにおやこどんってできていたんだね。こんなにがんばってじかんをかけたママはつくってくれたのにたべたくないっていっちゃった。わるいことしたなぁ。」



 りょうあしを かかえて すわった けんたは おちこんでいる。


 すぐよこでおやこどんズは

 おうぎがた のまま はなし

 はじめた。



たまねぎ「だいじょうぶ。いまからでもおそくないよ。」


にわとり「ママだっておこりたくておこったわけじゃないよ。いっぱいやることがおおくてつかれているだけ。」



ひよこ「そうそう」



 はじめて ひよこが はなした。

 けんたのめが とびでた。



「おこってつくっているなぁっておもったら、むりしないでやすんだらってこえかければいいじゃない。」



 やさしいこえで 

 ひよこは はなした。



「つかれているときはパパがかえってきてからでもいいでしょう。パパにてつだってもらおうってけんたくんがいえばいいのよ。」



 パタパタとんで、

 キラキラかがやき はじめたひよこにいちどうがあぜんとする。



「ひとみしりのひよこがあんなにはなすなんてびっくりだけど、とにかくだ。ママにありがとうっていうだけでうれしいとおもうよ。」



 にわとりがめがねを

 つけなおしていう。


 たまねぎは おおきくうなずいた。

 けんたは、じぶんのしたことを

 おもいだして、たちあがった。



「うん。いってみるよ。ママ、がんばってつくってくれたごはんおいしくないはずがないから。ありがとう、みんな。」



 けんたは、かけだして、ママのいるリビングにむかった。


 おやこどんズは

 うしろからはたをふって

 エールをおくった。


 ママとなかなおりして たべた

 おやこどんは、すごく

 あたたかくて おいしかった。


 おいしすぎてぜんぶたべてしまった。



 けんたは、あの3人がきになって、

 わしつにいくと、




 ひよこが あそんでいた 

 びーだまと けいじドラマごっこして




 つかっていたデスクライトだけが

 ぴかりと ひかって のこっていた。


                                    





おしまい

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