第5話 群れと暴と暴
「さっきからペラペラ気持ちよく長セリフを言ってる所悪いけど」
「はい、どんな質問にも答えますよ…うぎゃん」
ぶっ叩いた。
「何すんで、ぐご!?」
息もつかせぬ連打で、目の前の黒髪制服女を殴る。殴る。
無駄にバカみたいな修羅場を潜ったOL舐めんなよ!
「さっさと戻せよ、戻せよ! 私は明日も仕事があるんだ!」
「ちょ、こっちの話もう少し聞いてくださいよ! わたしが消えたらあなたは学園に完全に喰われるんですよ!」
「うっさい、問答無用だ!」
「なんで普段はコミュ障陰キャなのに変なところでキレてドッカンドッカン来るんですか、あなたは!?」
「おまえが私の何を知ってんだ、おら、まだまだ行くぞ!?」
「知ってるに決まってますよ、あの家で見てましたから!」
「デタラメ言うな、おまえなんて知らない」
少なくとも私の狭い交友関係にこんな外面清楚系少女はいないし。
「…とにかくそろそろあの生徒さんたちがこっちに気付いてやってきて、いがみ合ってるわたしたちをスプラッタな目に遭わせようと集まる頃です、一旦教室に入って迎撃しますよ」
…それもそうですね、はい。
しばらくして。
血の匂いがする教室の真ん中で私は住居侵入不審者少女(仮称)と向かい合って話をしていた。さすがにもう落ち着きましたよ、うん。社会人だからね。
「それでえっと、裏内さん?」
「宇羅でいいですよ、游理さん。フレンドリーに友好的に」
「裏内さん」
すねるな、命を狙ってきた相手に、最低限の礼儀をもって接する社会人の良識に感謝しろ。
「あんたの言葉にはおかしな点がある」
いつものように相手を見据えて、
「乾森学園? そんな学校聞いたこともない」
服装は、いつものスーツ姿。だけどいつもの道具がないのは致命的だ。まああれはあったらあったで何が起きるかわからないんだが。
大事なのは体力よりも胆力
仕方ない、逃げの一手。
「そんな大量怪死事件があったなら、今の世界で知らずにいることは不可能だろう」
動く屍から、いつも通りに逃走しながら話を続ける。
「ただでさえ祟りなんてありふれてるんだから、そんな重要事案、速攻で解体されるだろ」
そう言い終わるタイミングに合わせたように、ドアがゆっくり開いて、
この世界ではよくある怪異、蠢く死者の群れが教室に入り込んできた。
くそ、こいつら映画やいつもの現場みたいに知能はないのに、数が多い。
こいつの話を信じるなら300名以上!? さすがに逃げ切れないかも、いや宮上さんがいるならまだしも私は無理だなこれ。
「まあ、世の中がこんなバカげた状態になってるのも、今の状況と関係があるんですがね」
一振り
群れに腕を一振り。
「『北塀』」
次の瞬間、蠢く無数の屍は、
何の変哲もないコンクリートの塊で潰されていた。
「…ええ…何これ」
「何って、わたしたちの家の『塀』をちょっと見繕って射出しただけですよ」
「当然のことのように話さないで。真面目に祓おうと考えてたこっちがおかしいみたいになる」
コンクリートによる物理的除霊。
新機軸すぎる。
「しつこいのが一旦片付いたんで説明に戻りますよ?」
「は、はい」
あんまりな暴力を目にして思わず敬語になってしまった…
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