第9話 大きな岩を動かすには?

「この岩をどかせる方法があるんじゃないかしら?」


 伊織とニャフが周囲を探す。

 ニャフが、軽やかに岩の上に飛び乗って、周囲を見渡す。


「あったぞ! 何か変な物が!」


 ニャフが指す方角には、大きな皿がある。


 ……天秤?

 柱を挟んだ反対側には、ロープがついていて、天秤が動くことで、ロープが引っ張られる仕組みになっていると、岩の上に登ったニャフが教えてくれる。


「我が載ってみようか? その天秤の皿に」


 ニャフが提案する。

 ニャフは、ぴょんと岩を軽やかに渡って、天秤の皿に載ってみるが、天秤はちっとも動かなかった。


「この様子では、グルルが一緒に載っても、微動だにしないだろうな」


 やれやれとニャフがため息をつく。


「きっと、どこかにヒントがあるはずだよ! だって、ホズミは、巻物の持ち主に先へ進んで欲しいんだもの」


 きっとそうだ。そうでなければ、そもそも巻物も暗号も残す訳がない。

 僕らは、天秤の周囲をランプで照らして調べる。


 見つけたのは、『アリ一匹の力で大きな壁は崩れる』という言葉。

 天秤の横に書かれていた。


「アリ?」


 どういう意味だろう? 


「ねえ、これ」


 周囲を探索していた伊織が見つけたのは、巻物の形をした小さな穴。


「入れろってことかな?」


 不安そうに伊織が僕を見る。


「たぶん……そうじゃない?」


 もし、違ったら、この穴から巻物を取り出せるのだろうか?

 失敗したら、あんなに期待していたニャッタールダ十四世は、どんな顔で悲しむだろう。

 でも、他に方法は無さそうだ。


 ドキドキしながら、僕は巻物を穴に入れてみる。

 巻物は、穴に吸い込まれ、奥で、カコンと、何かに当たる音がする。


 カン、ゴン、ガン、ドゴン、ガシャン、ガタン……。


 音がドンドン大きくなっていく。

 壁の向こうで何が起こっているのだろう?


 そういえば、確か、アリの小さな力で小さな壁を倒させ、その力を徐々に大きな壁へと伝えていくと、アリの力でも大きな壁を倒すことが出来るという実験は、聞いたことがある。

 

『アリ一匹の力で大きな壁は崩れる』


 つまり、小さな巻物一つの力で、この巨大な岩が?


「ニャフ! 危ない!!」


 グルルが叫ぶ。

 見れば、ニャフの載っている天秤の皿の上に、大きな岩が落ちてくるところだった。


 ドゴーン!!


 大きな音を立てて、岩が天秤の皿に命中する。

 ニャフは、ひらりと身をかわして、僕らのところへ鮮やかな身のこなしで降りてくる。


 巨大な天秤が動き、僕らの前に立ちはだかっていた、大きな岩がぐらりと転がる。


 岩が転がって、暗い洞窟に日の光が差し込んでくる。

 天井が空いた部屋がある。


「なんだ。これは……」


 ニャフが言葉を見失う。

 

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