第5話 猫の神殿
え、何? どういうこと?
「待て! 猫!!」
伊織が猫を追って鏡に腕を伸ばす。
伊織の腕は、そのまま鏡の中へ。
「い、伊織?」
伊織は、猫を追って鏡の中へ消えてしまった。
どうしよう? 大人を誰か呼んでくるべきか……。
「ほら! 友介も来るの!」
伊織が鏡の中へ、僕の腕を引っ張り込む。
「うわぁぁぁ!」
僕は目を閉じる。
引っ張られた僕は、そのまま鏡の中へ転がり込む。
「すごいの! 見て!!」
伊織に言われて目を開ければ、そこは、とても豪華な部屋だった。
ギリシャ神殿みたいな太い柱が、建ち並ぶ。
明るい日が窓から差し込む部屋。
小さな部屋の真ん中の祭壇に、うやうやしく鏡は飾られている。
「あ~あ。グルルのせいだぞ。人間なんか連れて来て」
トラ猫が、グルルと呼ばれたブチ猫を睨む。
グルルは、耳を伏せてシュンとしている。シッポも垂れて、憐れな様子。
「だって。まさか人間があそこにいるなんて思わないだろう? ニャフよりも俺が先に顔を出しただけじゃないか」
グルルの言い訳を、ニャフと呼ばれたトラ猫が、仁王立ちして苛立たしく足でタンタンと床を踏みながら聞いている。
「しゃべっている。猫が!」
伊織の目が輝く。
「かわいい! ねぇ、ここは猫の国なの? なんであの鏡は、あの家に?」
「うるさい人間! 我らは、国王ニャッタールダ十四世様の騎士。頭が高い!」
色々と質問をする伊織にニャフが言い返す。
騎士なんだ。
「昨日、お魚を運んでいた?」
「ああ、あれは、ニャッタールダ十四世様のご命令で、人間界より魚を仕入れる重要任務。決して雑用ではない!」
別に雑用かどうかなんて聞いていないのだが。
「ニャフは納得がいかないんですよ。いっぱい訓練して頑張って騎士になったのに、ニャッタールダ十四世様から申し付けられる仕事は、雑用ばかり。まあ、人間界に行くのは、危険が伴いますから、騎士の仕事と言えなくもないんですが」
「うるさいぞ! グルル! 人間に余計なことを教えなくていい!」
「なあに? この猫。超生意気!」
伊織がニャフのほっぺをグニグニと引っ張る。
髭のついたモフモフほっぺ。触り心地は良さそうだ。
「と、とにかく人間! お前達は、ニャッタールダ十四世様の前に突き出す。お前達の処遇は、国王がお決めになる!」
ニャフが、剣をこちらに突き出してくる。
これは大変だ。
もし、死刑だなんて言われたらどうしよう。
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