第7話

 早朝の鴨川。さすが、京都。まばらではあるが、人が居る。

「手、繋いでもいい?」

 頷く。……。恋人繋ぎ。まあ、いいか。朝だし。

 隣を見る。を着た少女。流されるまま、記念撮影。

 視線を太ももに下ろす。同じスカート。空いた手で上着のポケットを探る。

「これ、どうぞ」

「わあ、ありがとう」

 二人で、写真を覗く。同じ顔をした、僕の妹。葬式の写真。花嫁さながらの真っ白なワンピース。花に埋もれて。

「綺麗…」

 小石川奈摘こいしかわなつみが、零す。

「うん、間違いない」

 顔は対岸に向けたまま、視線だけ寄越す。

「おりりんは、花嫁になったんだよ!」

「はい?」

 見つめ合ってから、首を傾げる。

「知らない? 死後結婚ってやつ」

「聞いたことはある…」

 確か、東北地方の…。

「いいなあ。やっぱり、私も、死んだら白いワンピース着せてもらおうっと…」

 少女と呼ぶには、あまりにも痩せぎすの…。

「ねえ、私たち、口付けしましょうか?」

「え、何故…」

 んーと、唇を引き伸ばす。

「あのね、今、あなたはおりりんの制服を着ているの。だから、今、あなたはおりりんなの。そう、だから、私とチューしてもオッケー。解った?」

 思いきり、顔をしかめる。

「チュー…。うん、え? チューしはったん?」

「チューくらいします。名門女子校だもの」

 どういう理屈だよ。

「はん。私、知っているのよ。あなた、いとこの竹乃たけのちゃんとラブラブなんでしょう。男子高校生たるもの、意中の人が居たら、チューくらいしているでしょうに」

「は…」

 開いた口が塞がらない。うちの妹は、どこまで親友に伝えていたのか。顔を背ける。ナツの身体が、傾く。身体を支えると、キスされた。そして、どこかから水が溢れる音。

 違う。血だ。血を吐いているのだ。

 慌てて、ナツを横向きに寝かせる。

 震えながら、血を吐いている。青ざめた顔。

「ナツ…。大丈…」

 生温い血。対岸から見ていた人が、やって来る。結局、車をつかまえて、家の病院まで送ってもらった。

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