彼女が大親友にNTRれた僕は学園一のカリスマ美少女へ嫌われているけど毎日軽い気持ちで好きだよと言い続けた結果、暫く会ってなかったら有無を言わさずベロチューされた
第42話 キスしてキスしたらキスしていた(スバルサイド)
第42話 キスしてキスしたらキスしていた(スバルサイド)
◆
二学期始業式 朝九時 体育館一階渡り廊下
長かった長かった夏季休暇。久しぶりの通学に待ち遠しかった私の胸が熱くなる。
私にとって有意義だったロングバケーションは終わりを告げ、くろーとの真実の恋に気付いた今、怖いものが無くなる。
それを人は開き直り、またの名をオーバーフロー呼ぶ。
私の別れ話をもみ消した彼氏が隣で登校中ウザ絡み、学園長の全然役に立たないくだらない昔話を右から左へ聞き流し、女神会長の挨拶と共に始業式は終わる。学生達は粛々と墓場という名の勉学の間へと戻っていった。
全然寝てないがアドレナリンが分泌していて絶好調を維持。
私の脳内ではベートーヴェン『第九 合唱』がリピートしていた。
まあ、それはいいのだが私は待っていた。好機が来るのよ。神風。
ターゲットが逃げられないようにど真ん中で腕組みしながら仁王立ち。くろーを待ち伏せだ。
夏休みの間、私をこんなにも切ない気持ちにさせた代償を払って貰わないとね。どんなに殴っても気が晴れない。
性は黒田、名は勘九郎、フルネーム黒田勘九郎がいつものようにぽややーんと渡り廊下を歩って来る。予想通り女神会長に雑用を頼まれ一番最後に体育館を出てきた。
くろーは状況がいまいち理解が追いつかないでいた。
皆いなくなり静まり返った一階渡り廊下。遠くの教室群から和気あいあいとしたトークが、夏の余波として風と共に流れてくる。
先程から真正面にくろーが小動物のように可愛らしい仕草で私を見つめる。すぐさまお持ち帰りして色々と躾してしまいたい衝動を抑えた。
テンパで癖毛の強い黒髪ウェーブヘア、優しい瞳、オシャレな眼鏡、柔らかい唇、わが校規定の半袖ワイシャツ、青いチェックのネクタイ、青いズボン。
同じ図書委員以外接点がないから、二人きりになるチャンスは少ない。なのでその行く手を思いっきり遮断。
王子様としては相談に乗ってもらえるが、普段は別段すごい仲良しでもないし、友達と表現するには向こうからしたら図々しいかな。第一こんな
ポンコツ駄目女、向こうから見限ったのに今更なんのようだと言われそうだ。こんな面倒くさい女に付きまとわれてさぞ迷惑なんだと思う。
それでもね、それでも私はくろーに言いたいことが山ほどある。
夏休み中、毎日バイト先の喫茶店でコーヒー飲んでいたが接触できなかった。わざと大和とデートしてもなんの反応もない。少しぐらい無視しないで絡んでくれてもよかったのにと怒りが湧く。
「やあ、加藤さんおはよう、お久しぶりだね」
「おはよう黒田君。お久しぶり、元気そうで良かったよ」
念願の挨拶。やっと話せた。
何気ない挨拶。そう、いつも通りだ。くろーと話せた。嬉しい。
くろーくろーくろーくろーくろー。会いたかったよ。私の王子様♡
「じゃあ加藤さん僕は教室戻るね。また放課後に——」
「ごめんね、通さないよ黒田君」
くろーの進行方向を速やかにブロック。私は速やかに袖を掴む。行かせないよ。行かせるわけがない。この日を来るのをどれほど待ちわびたか……。
私はぶん殴ろうと思った。実際拳を握っていた。でも、くろーの、愛しいくろーの唇を目の前にすると別の衝動が私を包み込む。
「ええ……? か、加藤さん?」
私はくろーをそのまま引っ張るように抱き寄せて、「…………あむ」唇と唇を重なり合わした。衝動のままに舌で口中へ強行突破。舌で舌をおしくら饅頭。
ハグを強くしてゼロ距離で感じるくろーにご満悦。私達はそのままバランスを崩して地面へ倒れる。でも離れようとジタバタするから私は逃さない為に両足でロック。別名だいしゅきホールドをかけた。
吸入するくろーの優しいビター系の体臭がわたしの頭をおかしくする。私が使っている柑橘系歯磨き粉の味とくろーのミント系歯磨き粉と程よくブレンド。口内を隅々まで犯す。私の色に染め直す。そのまま絞め技で意識が遠退き——そしてくろーは見事に堕ちた………。
「もう逃さないぞ♡」
◆
同日 正午 保健室
ベッドの上にはくろーを寝かせてある。
先生には気分が悪くなったと嘘をついた。我ながら中々の悪童ぶりだ。昔取った杵柄がこんなどころで役に立つとはね。
これで私とくろー、二人だけの時間を作ることを成功した。邪魔するものは誰もいない。本来だったら学外へ脱出するのが正解なんだが、さすがにくろーを抱えてそこまでのミッションをクリアする体力はないし、見つかるリスクも考えると合法的に乗り切るのが一番だ。
「……あれ? ここはどこ?」
「おはよう。ここは保健室だよ。お目覚め? くろー」
私は色んな衝動を抑えながらにこやかに努める。
「加藤さん……? 何で?」
「言いたいことはいっぱいある。一杯一杯ある。でも、取り敢えず最初にいうことは、もう突然私の前からいなくならないこと。それと私は黒田勘九郎が大好きです」
「え? なんの冗談?」
「冗談じゃないよ。私は本気。いつの間にか好きになっていたんだ」
「でも、加藤さんにはダイワがいるじゃないか?」
「関係ない」
「関係あるよ。大ありだよ」
くろーは上半身だけ起き上がる。私が力ずくで押さえ込んだから身体が痛そうだ。
「それと私のことはすーちゃんと呼べって言ってるでしょ?」
「あのデート限りで終わっている」
「気が変わった。だから言ってね」
「加藤さん……いや、すーちゃん、連絡を絶ったことは謝るよ。ごめんなさい。でも友達でもダイワの恋人と仲良くしていたら悪い噂もたつし、本人も面白くない」
「だから自分が身を引いたと? ふざけんな! くろーには自分がないのかよ? 自己犠牲すぎるだろうが!」
そう、くろーはそういうやつだ。分かっていた。他人の為に自分を殺す。欲がないと言うか、自暴自棄になってると言うか、だからほっとけない。
「僕は君を好きにならない。そんな資格はないんだ」
「だから私にはそんなこと関係ないんだって。私がくろーを大好きだから。何度でも何度でもあんたを抱きしめてやる」
そう言ってまた抱きしめ無理やり唇を奪った。
どうして拒絶してるのかはわかる。分かった上で私は上書きしようとしていた。これしかくろーをホクトから開放ひいては、幼馴染みの呪縛から奪還する手立てがないと結論付けたから。
「でも僕は……」
「うるさい! うるさい! あんたは私のものになれ! 私を信用しろ! 私は絶対にくろーを裏切らないし、あんたの側からいなくならない!」
「でも、君はダイワの彼女だから……」
すかさず私は大和に電話する。勘九郎にも聴こえるようにスピーカーをオン。
「あ、大和?」
『統星学校サボって一体どうしたんだ? 何処にいる?』
「やっぱり私と別れてよ」
『だからそれは出来ないと』
「うっさい。うっさい。もう決めたんだよ。じゃあね。さようなら」
『ちょっとまて——』
スマホの電源を落とす。
「はい。これで大和との関係も精算できた」
「うわ、強引だね」
「それで私はフリーだよ。付き合おう勘九郎! ちなみに拒否したらまたキスする」
「了承したら?」
「またキスする」
勿論こんなもので納得するとは思ってない。でも私は覚悟を決めたんだ。もう私の気持ちを遮るものは誰であろうと関係ない。
嫌なものいや、嫌いなものは嫌い、好きなものは好き。そしてくろーが大好き。
それを大事にしていくと。
私は抵抗をやめたくろーを抱きしめて深く深く口づけを交わした。
彼女が大親友にNTRれた僕は学園一のカリスマ美少女へ嫌われているけど毎日軽い気持ちで好きだよと言い続けた結果、暫く会ってなかったら有無を言わさずベロチューされた 神達万丞(かんだちばんしょう) @fortress4
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます