第15話 お昼休み 絢爛豪華、賤ヶ岳七本槍揃い踏み



昼休み


 皆仲がいい者同士でお弁当を食べている。

 その中で一際皆の注目が一点に集中していたエリアがあった。遠足用ビニールシートを何枚も合体させた大型テリトリーには、幼馴染みの仲良し達が持ち寄ったお花見クラスである彩り豊かできらびやかな弁当を囲って談笑していた。


「銀河お姉ちゃん、いいの? 教師がここで食べてさ?」 

「幼馴染みが集まるのに私だけのけ者にする気か? 勘九郎」

「かかっ! 銀河先生未だに硬派気取っているから恋人もいないでぼっちだからなぁ」

「それが僕達の銀河お姉ちゃんの良さだよ」

「うるさいクソガキ共」


 早速お腹が減っているダイワは唐揚げにかぶりつく。その僕を挟んで反対側には銀河お姉ちゃんが枝豆をつまみにビールを美味そうに呑んでいた。

 僕はというと強制的に手渡された女神姉ちゃん特製おにぎりをご相伴に預かる。


「それにしても僕達の注目がとても痛いんですけど……」

「まさかの七大美少女、賤ヶ岳七本槍勢揃い……圧巻だわなー」

「やっぱ注目度すご。まあ、そのうちの幼馴染み五人がそう呼ばれているからおめえら目腐っているぞと言いたくなるわ」

「ははは……」

「美少女ならここにもいるぞ!」

「はいはい、銀河先生昼間からお酒はやめましょうねぇ」


 加藤統星(カトウスバル)学園一のカリスマ優等生。


 福島北斗(フクシマホクト)演劇部の絶対エース。


 糟屋陽輪(カスヤヒノワ)体育会系陸上のアイドル。


 脇坂星雲(ワキサカキララ)メカ好きの不良で学園の問題児。


 片桐水瓶(カタギリアクア)不思議系水泳部の人魚姫。


 平野女神(ヒラノヴィーナス)生徒会絶対女王


 加藤織音(カトウオリネ)スバルの妹。映研のニューヒロイン。


 絢爛豪華にして艶やか清らか、天上天下唯我独尊、白河桜華学園が誇る七大美少女『賤ヶ岳七本槍』揃い踏み。


「——キラまた喫茶店のバイト欠勤したんだって? そのうちクビになるよ」

「うっせー、バカヤロウ。その時はまたてめえの家に転がり込むからな覚悟しろ勘九郎。にしし!」

「キラは出入り禁止だよ。まえに違法改造のせいでうちがボヤ騒ぎになったんだからな」


 僕の斜め向かいに座っている脇坂キララことキラはノートパソコンをいじっている。メガネっ娘キャラのくせして、相変わらずガサツな男みたいな話し方だ。

 

「ああん? もう許してくれたんじゃねえのかよ?」

「今日が特別な日だから特例」

 

 ちぇ、ケチかよとまるで子供のように拗ねる。


「それより放送部のお前の信頼度すごいな。別名黒田二十四期。母里とか後藤なんかお前の信者じゃん」

「そんなんじゃないよ。昔、銀河先生の依頼で放送部改革に色々提案したら僕を受け入れてくれただけさ」


 そのとなり無気力不思議ちゃんの片桐アクアはタブレットでお絵かきに没頭。隣にいる女神姉ちゃんに袖を引っ張って催促。口だけ開けて食べさせてもらっていた。昔からCGとか背景が得意でキラとコンビを組んで依頼をこなし小遣い稼ぎをやっている。


 加藤さんは妹の織音ちゃんも連れてくる。なので普通ならありえない七本槍揃い踏みに生徒達のシャッターが止まらなかった。


 その姉妹は女神姉ちゃんと趣味とかで花を咲かせていた。


「この前の作品は納得できないのだよ。何故に途中でヒロインを殺したのか。監督がたわけとしか言えない」

「そうですよねー。作品は監督の采配次第ですから幾らいい役者揃えていても意味ないですよ」

「会長、織音は無謀にも映画監督志望なんですよ。映画マニアこじらせまして」

「ほうほうすごいなー。今注目の俳優とかいるの?」

「やはり竜石堂漆葉(リュウセキドウウルハ)ですね。この学園の卒業生でバスケ部と演劇部のエース。今は海外で活動してます。あの人ならいずれオスカー取ると予想してます。次席に神取ミヤビですね。元軍人と外交員という異色の俳優で竜石堂ウルハの師匠でもあるんです。今でも初恋の相手に横恋慕しているみたいですよ。あとはプロじゃないけど、神が宿っている演技力『ぎあまん』です。投稿演劇系動画配信ユニットで凄い視聴率を誇ってます。特にリーダーのナナホシとシナリオが神なんですがシナリオライターだけシークレットなんですよねー」

「へーそうなんだ。僕は聞いたことないな。シナリオには結構うるさいけど」


 興味をもった僕は織音ちゃんに詳しく聞こうと思ったが、突然程よく酔った銀河先生が絡んできてビールの酌を要求。口移しでとくっついて離れないので身動きが取れなくなった。


「こほん、妹ちゃんや、そんな些事より加藤君の失敗談聞きたくはないかな? 嬉し恥ずかしいエピソードの数々」

「是非聞きたいです!」

「ああ会長やめてください! 姉の威厳がぁぁぁ!」


 織音ちゃんの興味が大好きなお姉ちゃんに変わると盛り上がりもヒートアップする。


「相変わらずうめー」

「ヒノワ慌てて食べると喉つまらせるよ」


 向かいには介抱しているホクトと端には喉をつまらせて苦しんでいるヒノワが陣取っていた。


「そういえばヒノワ今日おかしくない?」

「ドウシテ」

「僕を見て話さないじゃないか」

「ソンナコトナイヨ」

「風邪でも引いているのかな?」


 僕はヒノワの額と額をくっつける、「ホエエエ、ヤメレェ……」体温が伝達してきた。


「勘九郎おいしい?」

「うん。うまいよホクト」

「そう、よかった」


 久々に食べたホクトの弁当。当時のままだった。表情は変わってないが嬉しそうなのは伝わってくる。

 

「本当に凄く久し振りに全員集合した。とても嬉しいよ」

「正月以来だからな」

「それ以上だよ」

「そうかい」


 凄く久し振りに感じるほど心待ちしていたのかな。

 その僕達のやり取りを無言で凝視する幼馴染み達と加藤姉妹。

 ヒノワと女神姉ちゃんなんて泣いていた。

 大袈裟な。たかが久々に話したぐらいで……。

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