第4話 プログラムの欠陥
妙子は神山の話を黙って聴くだけだった。あたかも生徒が教室で授業を受けているかのように。−−
本年度の本校の入学試験は、大変厳しいものでした。
実際に問題を解かれたお子さんはお感じになったと思いますが、今年はこれまでと出題の傾向や解答の形式を大きく変えました。
ですから、過去問題集などを中心に勉強されてきたお子さんには気の毒だったかもしれません。
その証拠に、今年の試験の出来は例年に比べて、総じて悪い結果となりました。
公表こそいたしませんが、総合点で8割に達したのはお一人だけです。トップ合格の岩村君というお子さんです。7割に達した子もごく僅かでした。
そんなこともありまして、今年の入学者数は例年より減らしました。
ご存知のとおり、志願者総数は、本校始まって以来、最も多ございましたが、今後も徐々に数を減らしてお一人おひとりに丁寧な指導を、と考えております。
そんな中、京也君の答案が教員達の間で話題となりました。
京也君の算数は満点です。国語もほぼ満点です。
国語については、記述式解答の問題で、採点した教員達の間で意見が分かれました。
サンカクで一部減点、という者もあれば、正解とする者、二重マルで加点したいとする者、ただ、実際に加点はしない決まりです。
結局は、公平な採点をしなければなりませんから、我々が予め用意した標準解に照らして不足がないか、という基準によって、2問をサンカクとしました。
私は国語が専門ですが、個人的な意見と前置きして言わせていただくと、京也君の答案は、我々が用意した正解のレベルを超える120%の解答だったと、今でも思っています。
我々の間では、よく「光る答案」という言葉を使いますが、京也君の答案がまさにそれでした。
ですから、岩村君が新入生代表をご辞退されたと聞いて、私が京也君を推した次第です。
神山は、理科と社会の答案には触れなかった。恐らくは、母親を通じてこの話を京也が理解するだろう。だから、ここまで話せば十分だと思ったのである。
京也は青葉英朋に敗けたのである。
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