第15話 サジタリウス
「いいのかよシルミド…… 」
「もってけ泥棒」
「すまねえ恩に着る。これで子供達に服を買ってやれる」
「泣くのは無事に家族に顔を見せてやった後だ、早く名乗りを上げろ勇者殿。これからが大変だぞ? 国の報奨金やらスカウトやらでお前は忙しくなる。何せ災害級の
「シルミドは? 」
「俺は未だ落ち着くには早ぇんだ。やりたい事があってな。さてと、それじゃあ早速だが俺はちょいと
「はぁ⁉ シルミド⁉ 歯科検診って一体何を――― 」
「ぶっ刺したら直ぐに離脱しろ! 後はIM達の出番だ。近接戦は此処までだからな? 本当の勝負はこっからだ。此奴をどうにかぶっ倒さなけりゃ話にならねぇ」
「本体
≪どうぞキャプテン≫
「勇者が確定した。軌道演算し座標を固定
≪カシコマリマシタ。ケッテイケンシャのセイモンをカクニン。メイにより、サジタリウスきどうイタシマス≫
直後、判定の為のドローンがチャッピーの姿を確認すると、勇者確定の照明弾が打ち上り、詳細が全チームに届く。続いてドローンより雑音の酷いメッセージが鼓膜に響き渡る。
「各チームに一斉伝達。勇者確定。繰り返す、勇者確定。チームコヨーテのチャッピーが
遅れて現れた部隊が次々と合流を果たす。すると突然今迄大人しかった狂獣が一気に暴れ出しその頭を大きく振り上げた。余りの勢いに表皮に磔にされると急激に振り下ろされる―――
「チャッピー離脱しろ――― 」
「あぁダメだシルミドそんな‼ 」
「いいから行け‼ 俺に構うな――― 」
シルミドは咄嗟にアンカーを足元に打ち込むと振り下ろされる衝撃に備えた。襲い掛かる風圧が頬を歪め、横目でチャッピーが離脱したのを確認すると、突如訪れた最悪な運命に、最後の希望の欠片を探す。
咄嗟に2発目のアンカーを狂獣の鋭い牙の先端に微かに引っ掛けると、信じた事も無い神に祈りを捧げ飛び出した。
「クソだぜ全くついてねぇ」
アンカーの巻き取り装置が悲鳴を上げ火花と煙を吐き出す。
「「シルミド――――― 」」
仲間の叫びに無線が狂気に包まれた―――
ワイヤーに手を伸ばすと、掌を滑るワイヤーは皮膚を裂き代わりに血潮を
地表への衝突寸前、身体を大きな牙の裏側へと滑り込ませると、今迄味わった事の無い衝撃が同時にシルミドを襲った―――
―――ドッゴオォォォォン―――
打ち付けられた半径は砂が立ち上がり激震に映像が歪む。無線からはその衝撃から受けた被害により悲鳴が随所に上がった。バケモノはその頭をゆっくりと
頭を強打しヘルメットのバイザーに
「さぁ、とっとと俺を吐き出してくれよ。クソ息が臭くてたまらねぇ」
ドドドンと背後から迫る爆風を背負うと、一気にウィングジェットに勢いを乗せ飛び出した。遅れて
―――勝利に飢えた狼は自らの名をコヨーテと呼ぶ―――
堪らずバケモノは雄叫びを辺り一面に響かせる。
「ギャアアアアァ――― 」
「「シルミド‼ 」」
「「リーダー―――‼ 」」
「悪かった皆、俺は無事だ、一気に削るぞ」
≪コチラブレイン。サジタリウス、ジュンビカンリョウです≫
「了解。こちらコヨーテのシルミドだ全チャンネルへ警告。直ぐに距離を取ってくれ巡行弾をぶち込むぞ」
『聞こえたか‼ 全機退避しろ―――― 』
誰かが叫ぶ―――
「ブレインかましてやれ」
≪サジタリウス3・2・1
船からボシュンと放たれた巡行弾は、射出されると同時に2枚の主翼が飛び出し、一瞬フラフラとその場に留まった。その後燃料に点火されると垂直尾翼が立ち上がり、猛烈な推進力を得ると射出ハッチを焦がし軌道を描き目標に向かい飛んで行く。
≪キドウ4%シュウセイ。ザヒョウモンダイなし12ビョウゴにモクヒョウにトウタツします≫
低空で砂を巻き上げながら驚異的な速さで迫り来る飛翔体は、光の矢へとその姿を変える。弾頭は徐々に回転を始め更に加速すると、雲を引き、雷鳴と共に瞳の端に光った輝きは、
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