第4話 龍王様に会える?
「……樹の葉っぱ。宝物にしよう」
胸にしまった樹の葉をチラリと確認すると、自然と笑みがこぼれる。
何とも言えない気持ちで心が満たされ、部屋に戻っている足取りが、フワフワしているのが分かる。だって先ほどの不思議な出来事を、樹の葉を見る度に思い出してしまうのだから。
「お帰り〜翠蘭」
部屋に戻ると明々が起きていた。
「こんな時間にどこ行ってたの?」
「え? ちょっと……夜風を浴びに?」
「なんで疑問系なのよ。起きたら翠蘭いないしさぁ、ちょっと心配しちゃったじゃん」
明々が少し口を尖らせた後、クシャリとはにかんで笑う。
「ふふふ。その調子ならもう大丈夫だね」
「そう、そうなの! 翠蘭ありがとね。飲ませてくれた薬が効いたんだよ。傷跡も薄くなったし、こんなに効果があるなんてこの薬すっごく高いんじゃ……」
自分についた痣を見たあと、申し訳なさそうに私を見つめる。きっと自分なんかに高価な薬を使わせてしまって、などど考えているんだろう。
「大丈夫だよ。それは私が調合して作った薬だから、高くないよ」
「で……でも、効果のある薬草を買うのも高いでしょ?」
「薬草も私が自分で採取した物ばかりで、買ってないから! 安心して」
だってその薬草は、樹の木がある秘密の場所で採って来た物ばかりなんだから。
「……そうなの?」
「そうなの!」
そんな事を考えると、また先程の事を思い出してしまい顔に熱が集まるのが分かる。
「んん? 翠蘭の顔赤くない?」
明々が顔を覗き込んできた。
「ああああっ赤くないよっ! さっ、まだ朝まで時間あるし。も一回寝よ寝よ」
私は話をそらす様に、明々が座っているベットに慌てて潜り込んだ。
★★★
「んん〜っ! よく寝た」
窓から入ってくる木漏れ日が、寝坊したんだよと教えてくれる。
「寝坊しちゃったね。ん? 明々?」
明々に向かって話しかけると。
隣で眠っていたはずの明々が、ベットからいなくなっていた。
慌ててベットから飛び降り、明々を探そうと扉に向かうと、扉が外側から開けられ。
「え?」
驚き固まっていると。
「おはよ〜翠蘭! 朝食を貰ってきたよ」
明々は両手に朝食を持ち、足で器用に扉を開けながら元気よく入ってきた。
「わぁ! こんなにいっぱい。よく手に入れられたね」
「えへへ。昨日のせめてものお礼にと思ってね。朝食が配られるのを並んで待っていたんだ」
「明々っ! ありがと」
気持ちが嬉しくって、明々をギュッと抱きしめる。
「わっ!? いきなり抱きついたら、折角の朝食を落としちゃうじゃん!」
「ごめん。ごめん。嬉しくって」
私たちが食べるご飯は、時間になると建物内にある大きな食堂に、色々な料理を龍人族の人が用意してくれる。それを私達は毎回取りに行くのだ。
貴族様は、自分が連れてきた侍女などが朝食も取りにいってくれるけれど、私たち平民は自分で取りに行かないといけない。
それに時間に遅れると、ほとんど食べ物が残ってなかったりする。
その理由は、貴族の侍女が根こそぎ持って行ってしまうから。かなりの量を用意してくれているのに残らないって。
どうせ半分以上残すのだから、食べる分だけ持って行ったら良いのにと、ゴミ収集場所に廃棄された料理を見て、毎回思ってしまう。
貴族様ってのは何かと見栄っ張りだ。
「そうそう! それでね? モグッ……ゴクン。
「もぐもぐ……ゴクッ!? ふぇえ?」
龍王様が私達のお屋敷に!? なんで? このお屋敷を訪れるのは、まだずっと先だと思っていたのに!
「その話本当なの?」
「マジっぽいよ? 新しいドレスを用意しろって、氷水様が躍起になってるんだって。それで『そんなすぐに用意できないよ』って困ってた。だって氷水様って
明々が悪戯っ子みたいに笑う。昨日あんな怖い目にあったのに、そんな事が言える明々って本当芯が強いんだなと改めて思う。普通なら怖くてバカに出来ないと思うんだけれど。
「明々は強いね」
「ええ〜? 私達は雑草だからね? 踏まれてもすぐ元気に起き上がるんだ。そうしないと生きていけないよ」
「ふふっ。そうだね」
「「ねーっ」」
二人で顔を見合わせて笑い、用意してくれた朝食を再び口に入れる
……そうか。
やっと龍王様が見れるんだ。
こんな
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