二十二人目 すねこすり

 ちょっとした自慢なんですけど、私、知らない場所でも不思議と迷子にならないの。

 あ、迷ったかも、と思っても、目的地に辿り着くんです。不思議でしょ?

 私には何かパワーがあるのかも……なんてね。

 でもね、こんなこと言うと孫が恥ずかしいからやめてよ、なんて言うの。私も分かりましたよ、と返したんだけど、やっぱり不思議なのよ。

 私に何かパワーあるんじゃ……と思っても仕方ないじゃない?

 でもね、うん。どちらかというと、いざなわれてるのかしら……。あらやだ。怖いお話じゃないから!

 ああ。これね、昔からなのよ。小さい時から。

 私と一緒にいれば迷わないからって一緒に遊びたがる子も多かったの。山もそう。迷いそうな場所でも私と一緒なら帰ってこられるからって。

 だから、どこに行くにしても私といれば安心。先生もその点に関しては私に頼っていたの。あれはちょっとした自慢!

 あ、でもね、亡くなった母が言うにはね、あんた、一回、山で迷子になりかけたのよ、と言うの。

 その時も帰ってこられたんでしょうね……。

 あまり覚えてないのよ。

 でもね、あの時、猫ちゃんが泣いてる私に、すりすりと頭をこすりながら、一緒にいてくれたことを覚えてるの。

 その日からなのかしらね……。

 あのね、私がこっちかなーと足を向けようとすると、足にすりすりっと何か通るのよ。無視して通るとね、違う、と言わんばかりに通せんぼするの。

 だから迷わないの。がっかりした?

 でも不思議でしょ。そのすりすりっとしたものに従うと迷わないのよ。

 そうそう。あの子みたいでしょ。そう。うちの犬。少し猫に似てる子! そうそう。

 あの子もね、私が違うところに行こうとすると、すりすりっと通せんぼするの。

 今も大きな体で玄関の前にいてね、番犬の役割を果たしてるのよ。

 あら。そういえば、あの子、何年、生きているのかしら。長生きねぇ。

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