二十一人目 煙々羅
ゆうらりふるふると煙が喪服に纏う。
線香の煙が喪服の上を泳いでいる。まるで天翔ける龍のようだ、と煙の行き先を眺めていた。
可哀想に、と声が聞こえる。
あの言葉を幾度、聞いてきたことだろう。
可哀想に。
同情の言葉でありながら、人を傷つける言葉を容易く吐けるこの場所に煙がいっそう、濃くなっていく。
彼らは、彼女達は、可哀想に、と囁くことで私はこんな風にあなた達を案じていますよ、と仮初の悲しみを面に出すのだ。
それならばいっそのこと、何も言わずに悲しめば良い。なのに口にせずにいられないのだろう。
可哀想に。
煙が重く、彼らに纏う。
あの言葉は誰に向けたものだろう。
いや、誰が言ったものなのだろう。
弾かれたように顔を上げる。煙に霞む人の中で、あの声は誰のものだったのか。
可哀想に。
むしろこの声は、誰に言われたものだったのか。
黒い喪服の上で煙がぐるり、と動く。
私を覗き込む見覚えのある顔に私は触れる。
喪服を伝って頬を撫でる煙が消えていく。
ああ、これは私の声だった。
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