第32話 作戦開始

 文子がぐるぐると考え込んでいると、作戦が始まる。

 無論作戦は、ここだけではなく、秋津国、すべての場所で同時に開始する。


 出入り口には、分隊三十人を残し、突入を開始する。

「行くぞ」

 文子を抱っこし。一気に連絡の奥へと走って行く。


 作戦が始まり、兵達の緊張が増していく。

 そんな中。流生に抱っこされ、体に伝わる。体温と匂い。

 鼻腔の奥に残っていた、記憶が。やはりと思い出させる。

「あなたは」

 そう言い出そうとして、自身の舌を噛む。

「ふぐっ」

「口を開けると、舌を噛むぞ」

 心の中で、遅いわ。もう噛んじゃったと、文子は痛みのため、すこし涙を流す。


 でも、この安心感。

 あれからずっと、探していたもの。それを見つけられた。そんな幸せが彼女の心を包む。

 やがて、兵達は、連絡通路の分岐とエレベーターホールに到着する。


 エレベーターは、到着すると爆薬を積まれ上昇する。

 建物には、すでに警報が鳴っている。一般の職員は利用することはないだろう。


 階段の防火壁を開けたままロックし、一気に駆け上がっていく。

 ナノマシンで強化された隊員達は、人並み外れたスピードで駆け上がっている。


 その頃。

「なんだ。何が起きた? 詳細を伝えろ」

 ここは、京都行政中央管理センター管理部。

 モニターの至る所でレッドマークが点灯し始めた。


 どう考えても、スピードがおかしい。

「上階の方は、バイオセキュリティが中心になるから隔壁は開かないはずだ。エレベーターの封鎖と、防火扉をすべて下ろせ。この時間に残業している馬鹿は何人居る? チェックしろ」


 矢継ぎ早に、指示が通達される。


 指示通り、エレベーターを停止させた瞬間。

 起爆装置が反応。


 エレベーターは墜落する。

 管理部の室内にも振動が伝わる。


「エレベーター爆発」

「どれが?」

「全基です」

「畜生。階段は?」


 オペレーターが情報を確認する。


「今、十五階以下、真っ赤です」

「隔壁はどうなっている?」

「隔壁すでに、封鎖中です」

「なら、何故止まらん」

「不明です」



「封鎖したってさ、元々が火災用だから、ドアがついているし。ドア部分の、このロック。上下にシャフトが刺さるタイプだもの。押せば開くよね」

 静流は片手で、めきめきとロックを破壊する。


 後ろで、その様子を見ていた中根が、いつものように馬鹿なことを言う。

「静流。やっぱりおまえの尻は絶品だな。やっぱり、俺と突き合わない?」

 ちらっと後ろを確認し、粒子砲をかまえる。

「尻を出せ。思う存分。おまえが満足するまで突いてやる」

 中根は、それを見て、両手を挙げる。


 隔壁といっても火災用。良くある鉄製のドアが、バタンと閉まっているだけ。

 強化された、レジスタンスにすれば、大したことはない。



「侵入者。止まりません」

「上階に行く前に止める。火災用のハロゲン化合物消火剤。敵が来たら、スイッチを入れろ。その間に、耐侵入者プログラム起動。もう、職員の避難は終わったな?」

「はい。全員上部フロア。七十五階の一室を避難用に開放。全員入って貰いました」

「七十階に侵入者が踏み込んだら、スイッチを入れろ。七十一階から、戦闘要員展開。フロアも戦闘用に変更」


 七十一階から七十四階までのフロアが変化を始める。

 壁から、防弾用の張り出しが廊下の双方から出っ張ってきて、エレベーターフロアから見ると、壁で閉ざされているように見える。

 実際には、壁は交互に出って居るため、ジグザグに進めば進めるのだが。知らなければ驚くだろう。


 だが、そんなことは知らないと、レジスタンス達は上階を目指す。


「コントロールルームはどこ?」

 先頭を走る、静流が聞いてくる。


「八十一階の八百十号室が入り口。そこから下に降りる。勢いよく行くと落っこちるぞ」

「了解」

「後設備は、壊すな。後で使いたい」

「えー。撃てないの?」

「小さな奴でちまちまか、ぶん殴れ。設備を壊したら、お尻ペンペンだ」

「よし壊そう」

「じゃあ、またお預けにしようか?」

 意地悪く、言ってみる。

 それを聞いた、静流の表情が変わる。

 

「それだけはやめて。本当に辛いの」


 紡にされたのが、ほぼトラウマになっているようだ。

 たまに夢に見るとぼやいているが、その夢を見ると、自分が目が覚めた瞬間人を起こして求めてくるから質が悪い。


 その時。流生に抱っこされ、揺すられまくっている文子は、すっかりおとなしくなっていた。


 階段を上り始めた当初、少し気持ちが悪くなり、目をつぶる。すると触れられているところに意識がいく。当然、体が何かを思い出す。触れられる触感と揺すられる動き。

 下腹部がきゅっとなり、力が入る。

 あっと思うと、何かがあふれる感覚。

 その刺激だけで、達してしまう。

 すでに、八十階近い。そこまでに繰り返されてきた愛撫。

 あふれた物は、彼女のスカートを通り越し、床にしたたるほどであった。


 実は、彼女が気持ち悪そうなので、流生が気をそらそうと遊んだ結果でもある。

 幾度でも達するので楽しんでいた。

 周りの仲間も気がついて、もじもじするという、悪影響まで与えて。

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