第33話 驚き
相手の思惑は完全無視して、一気に目的の八十一階へと到着。
八百十号室が入り口。フロアに突入後はハンドサインで、目的へと向かう。
「何故だ。どうやって、七十九階と八十階の境。あの分厚い壁を越えた」
そう。踊り場部分に張り出してきた分厚いコンクリート。厚さ五十センチメートル。中央部には、厚さ十センチメートルの鉄板が入っていた。これを抜くのは容易ではない。
だが、こちらは非常識の塊。
横にある階段の手すり部分。二十センチメートルのコンクリートを壊した。
「政府って、どこか抜けているよね。予算の問題かしら?」
「どうして馬鹿正直に、相手をしてくれると思うのかしら?」
静流や紡が、思い思いに文句を言う。
一気に、目的の八十一階へと到着。
八百十号室が入り口。フロアに突入後は、ハンドサインで、目的へと向かう。
七十階のエリアとは違い、防御システムはない。
すぐに、部屋を見つけ。鍵をクラック。
情報に乗っていない、未知の防御システムを警戒しながら、突入する。
「賊、突入しました」
「どこへ」
「ここです。降下用階段占拠。すぐ後ろに」
「そう。いま、あなたの後ろに居るの」
静流が嬉しそうな顔で、オペレーター達を気絶させる。
「すみません。私の権限では開かなくって」
そう言ってしょんぼりするのは、抱えられている文子。
「まあ、ダメ元だったから」
すでに立つ事の出来ない文子を、椅子に座らせ、軽くキスをする。
「そこまでは、セキュリティ。ザルじゃなかったようね。経営戦略チーフ。エリートなのに」
「すみません」
そう言って、文子は頭を下げる。
「さあ、今から本番だ、工作班。サーバ室占拠と解析。中間通路にはブラスターとガス。認証を間違えると、檻へ向けて床が開く。さあおっさん。お仕事だ」
そう言って、この管理フロアの、リーダーと札を掛けたおっさんを、引きずって工作部隊が移動する。
〈こちらキョウト、制圧終了〉
〈了解〉
そこから、一時間から二時間で、オオサカやナラも制圧。
翌日、レジスタンスのリーダーや重鎮が布告する。
それを、京都行政中央管理センター管理室で見る。
「軍部独裁の歪んだ政治形態を、本来の民主主義。議員内閣制に戻す。平等で開かれた国家運営を行っていく。今はまだ、制圧途中で軍部の抵抗もある。国民の皆さん協力をお願いします」
そう言って、頭を下げる。
だがその内容よりも、ならんでいるメンバーに驚く。
親父や、親族のみんな。
それが、立っている。
俺が驚いているのに目ざとく気がついた、静流が聞いてくる。
「どうしたの? 完全に鳩が豆鉄砲を食らった顔よ」
思わず、彼女の腰を抱き、くるりと回転をさせ、膝の上にのせて抱きしめる。
そして、考える。
あの時、不測の事態で逮捕されたが、そうでなくても関わっていた? きっとそうだよな。うちにあった場違いな設備。そして、オフラインの情報。
それなら、変に悪目立ちした俺は、盛大に足を引っ張ったことになる。
勘違いなのか未だに不明だが、あの時未希が、レジスタンスに接触し、何も知らない俺は、助けようとした。
それで結果的に、逮捕。だが、未希があの時。レジスタンス側への連絡していただけなら。おじさん達の足を引っ張り、あのレジスタンスの女の人。無駄に危険にさらした? そうだよな認識阻害シートを奪ってしまった。それなら、俺は未希のこと。
だが、俺を、捜査官に突き出したのは何故だ。やはり考えすぎか?
そんなことを、ぐるぐると考える。
「あんっ。ねえぇ。流生」
「うん、どうした?」
真っ赤な顔で、静流がきいて来る。
「凄く気持ちいいけど、さすがに恥ずかしい」
見ると、周りから、注目されている。
悩みながら、手が無意識に静流に愛撫していたようだ。
「あっごめん。少し考えことしていて」
「良いけど、帰ったらゆっくりしましょ」
そう言って静流は離れる。
「それで、どうしたの?」
「ああ。あの、リーダーの右に居るのは、親父を含めた親族だ」
「えっ」
静流が見たこともない顔で、驚いている。
「どうした?」
「どうしたって、流生。そうか、そうよね。望月流生。どうして気がつかなかったの」
そう言って、がっくりと、落ち込む。
「望月源清って。ひょっとしてお父さん?」
なんだか、静流がこわごわ聞いてくる。
「そうだよ」
「そうだよって」
しゃがみ込んで、頭を抱え始めた。
「どうしたの? こんな所でいちゃついて。注目の的で、メンバーの男性。みんな一部が元気になっていたよ」
紡が上機嫌で帰ってきた。凪を連れて、サーバの方に行っていたはずだが。終わったのか。
「そりゃ悪い。無意識で、静流をかわいがってしまった」
「それで、静流は恥ずかしかったの? 床に埋まりそうだけど」
「違うわよ。恥ずかしかったのは確かにだけど。紡。流生って、望月流生なのよ」
「そういえば、そうだね」
思い出して、あっ、そういえばという感じの紡。
「さっきモニター見ていて、お父さんが居たって」
「モニター? おとうさん…… て、まさか」
「うん。望月源清」
「あはっ。御曹司。改造しちゃった」
そう言って、紡は尻を突き上げた、変な格好で倒れ込む。
静流と紡。実にシュールな画ができあがる。
そこに、ささっとやって来て、無防備な紡の尻を触り、股間を蹴られる中根。
シュールさが、増した。
「何をしているんだ一体?」
そう言うと、じとっと、二人に睨まれた。
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