第29話 歴史は繰り返す

 翌日、上のものに呼ばれ、作戦が大きく変わったことが伝えられた。

 上位チームだけで5チームも来ている。


 各地での陽動と、無力化。

 それを、同時に行う。


 今回拾ってきたデータと、暗号の解析。

 それにより、相手の弱点が見え、5カ所の拠点を占拠し、後は末端で攻撃を進めれば、秋津国を制御できる。


 そこで、今の軍主導から、民主主導の国家へと戻す。

 議員内閣制の復活。


 平和な時代の復活を目指す。

 人類の歴史は、この繰り返し。民意を中心から中央集権。

 そして又、全体主義へと。


 市位(しせい)に潜んでいる同士達も、今回は一斉に動く。



「色々と、準備に日数が掛かるが、今回一発で決めねばならん。再戦というわけにはいかない。君達も作戦書類を読み込んで齟齬のないように、又下の者達にも徹底し、言うまでもないが、漏洩がないように気を付けろ。以上だ」


 分厚いファイルを幾つも貰う。

 静流と2人、ファイルを抱えて、部屋へと戻る。


「お疲れ。私たちはどこ?」

「京都行政中央管理センター」

「あらまあ。占拠と掌握でしょ。建物が大きいから大変ね」

「ああ。通路という通路は、数カ所を残して、発泡弾ですべて潰す」

「あれ特殊薬剤を持っていたら、一発で溶けるわよ」

 紡が教えてくれる。


「4液タイプで特殊らしいぞ。従来の有機溶媒だけでは、溶けないって書いてある」

「まあ破壊すると、建物の構造もダメージがあるし、後で使うのを考えればそうなるのかね」

「そうよね。潰して終わりじゃなく。これからの方が重要だから」



「どうだった?」

「今回が、最終決戦ぽいな」

「やっと任務が終わりか、結局10年以上居たぜ」

「データ化して、流すか。わざわざ印刷物にしやがって、重たくて仕方が無いし。紛失したらただじゃすまない」

 男がうんざりという顔で、ぼやく。


「あら? 余所のを貰ってくれば良いじゃない。黙ってだけど」

「黙ってか…… どこがいい?」

「最近成り上がった、僕ちゃんのところで良いんじゃない。ここに来て、幾つも大きな仕事をこなしたみたいだから、潰しておかないと駄目でしょ」

「そうだな、驚異の目は潰すか」

 リストを確認して、望月流生と上月静流の文字を見つける。

 チーフが望月でサブが上月。チーム名は規定によりMUとなっている。


「チームMUね」

「ムー?」

「ええ。何か?」

「怪しい技術でも持っていそうだな」

「オカルト的な?」

「まあ、気を付けろ。おまえの色仕掛けなら、まだ18歳のガキなど一ひねりだろ」

「もちろん。焼き餅焼かずに待っててね。すぐファイルを持ってくるわ」

「藤子。任せたぞ」

 軽く挨拶のキスをリュパンにして、部屋から出て行く。藤子。


 

「流生、これから偶然でも何でも、近寄ってくる奴は気を付けて。内部での諜報が活発化するから。単によそのチームの情報狙いなら良いけど、政府の犬がいる可能性もある。気を付けてね」

 流生は静流の忠告を思い出す。


 さっきから、曲がり角の向こうで潜んでタイミングを取っているのだろうが、壁の脇から、自身も把握できないサイズの胸。それの先っちょが見えている。

 赤いドレスで、ノーブラなのか?


 まあ来るなら来い。そう思いながら、真っ直ぐ進む。

 近くに行くと出てきて、わざとらしく倒れ込み、丁度胸で顔を埋める。

 あっ、これやばいかも。

 息ができない。

 顔をそらして、息をする。

「あんっ。そこに息を吹きかけちゃ駄目よ。感じちゃう」

 そう言って離れるが、まだ彼女の右膝は、わざとらしく俺の股間を刺激している。


「ごめんなさいね。あら? チームMUの望月君じゃない。最近の活躍を読んだわ。凄いわね」

「ありがとうございます。おけがはありませんか?」

「ええ大丈夫。でも、あなた。立派なものを持っているのね。お姉さんちょっと興味が湧いちゃった。お話しできる?」

 そう言って、ウインクしてくる。右手の人差し指は口の脇。


「話ですか?」

「そう、今度の作戦とか。打ち合わせ。どう?」

「まあ、今なら時間が取れますし、大丈夫です。あの、あなたは?」

「誰でも良いじゃない。でも、名前は呼んでほしいから。藤子って言うの。よろしくね。流生ちゃん」



「と、言うことで、政府の犬で、ファイルを盗みに来たようだ」

 ベッドの上で、痙攣をしている藤子を見る。


「チームAMというと、結構古参よ」

「ずっと潜入か、しかしこんなに入り込まれていて、今度の作戦。大丈夫なのかしら?」

「情報がばれている前提で、動くしかないな」

「まあ、そうよね。動き出せば、今回は止まれないわ。おらっ起きな」

 静流が、藤子の体を揺する。


「ひゃう。あー。もっとぉ」

 そう言って、にじり寄ってくる。


「流生ってば、もうやばい薬状態ね」

「きっと抱かれていると、脳内のエンドルフィンとか、限界突破で出ているんじゃない」

 紡が、自身にはない胸のお肉を見つめながら、つまらなそうに突っついている。


「これが少し、私にもあればなあ」

「紡はそれで良いんだろ。ダイレクトな感覚。って言っていただろ」

「それはそうだけど。うんっ」

 さわっと、胸をなで上げる。

「ほら、良い反応」

「もう」

 ぺちぺちと叩きながら、じゃれてくる。



「なんだと。チームAMがスパイ?」

「そのようです」

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