第28話 さて。やるか

 用事が終わり、彼女を開放。

 当分動けないだろうが、満足そうに寝ている。


 壁の穴を埋め戻しながら、脱出を始める。

 部屋の内側から見たときに、コンクリートの目がずれないように、慎重に閉めて、速乾の接着罪で仮止め、シールを行い、小型ファイバーを引っこ抜き、穴を埋める。


 後は、どんどん高速重合の樹脂を詰めていく。

 むろん見た目や、壊れ方はコンクリート。


 一番外まで来たら、又綺麗に目を合わせて蓋をする。

「よし、これで良い。結局、凪は縛られ、吊り下げられに来ただけだな」

「喜んでいるから、良いんじゃない」

 静流が以外と冷たい。

 まあ基本裏切り者だからな。


 また、斜めに開けた穴も塞ぎながら降りていく。

 こっちは使うかもしれないので、50cmだけコンクリート風樹脂。他はウレタン風の軽いもの。要するに充填しただけ。


 意外と早く、脱出が出来た。



 基地まで、途中でトラップや追跡を気にして、手順を踏み帰る。


 今回持ち帰った情報は、解析に回し性能評価や、新型武器開発に使われる。


「君達のチーム評価が一気に上がり、クラスA1となった。これからも頼む」

「ありがとうございます」


 評価は、A~Eまでありその中でさらに5段階。

 つまり一般では、トップチーム。

 だが、どこにでも例外は居る。

 クラスS。彼らは、個人個人が何かのスペシャリスト。


 どこかの作戦で、会うこともあるだろう。


「今どういう状態?」

「持ち帰った情報の解析。レジスタンスなんて、闇雲に起こしたって意味はない。必要なときに必要なところへ仕掛ければ効果が上がる。労力は少なく結果は多く。それが基本だ」

 何故か俺らの家に居着いている、中根先生の講釈だ。


「今しばらくは、作戦はない。帰れ」

 当然静流だ。

 まったりするつもりが、じゃまされ、機嫌が悪い。


 そしてその横で、怪しい銃を無言で、組み立てている紡。

 見た感じは、おもちゃのBB弾だが、あれってこの前、実験していた炸裂弾や超振動破壊弾だよな。思わず中根逃げろと言いたくなるが、言わない。

 この場でいじっているなら、そんなに物騒じゃないだろう。


 一個の、玉がコロコロと転がりテーブルから落ちる。

「「あっ」」

 おれと、紡の声がかぶる。


 床に落ち、ずむっという、腹に響くような振動と衝撃が来る。


「「「どわぁ」」」

「なんだ一体?」

「対人用衝撃弾。まだ、音がでっかいな。改良の余地あり。リポートデータ通りだね」

 紡が淡々と説明をする。


「この前貰ったデータか」

「そう。以外と使える。人道的な物も非人道的な物もあった。銃の弾でさ、針金が折りたたんであって、物にあたると開く奴とか、撃たれるとひどいことになるよ。気を付けてね」


「体の中でか?」

「当然」


「それで、さっきの奴。使えそうだけど駄目なのか」

「玉の殻がね。堅いと使えないし、弱いと撃てない」

「そりゃそうだ」

「銃は、なるべく静音のためにもガスを使うでしょ。するとある程度丈夫になるから、2液や3液だと飛ぶ間に交ざることもあるし、対象が堅いとは限らないし。ねっ悩むでしょ」


 思いついたことを言ってみる。

「隔壁に重量物。ああ発射で駄目だな。じゃあ、段階的に加速。銃身は長くなるが」

「そうねえ。せっかく軽量小型なんだけどね」

「撃ちだすときにだけ、外側に柔らかな物で、中はあたると針で隔壁を破るとか」

「外。銃弾型で先端があたると押し込まれる。これでどうだ」

「あー良いかもね。開発に言っておくわ」

 そう言いながらも、スプリングピストン機構みたいな物をいじっている。


 何かの拍子に、玉がコロコロと中根の方に転がっていく。

「どわぁ」

 息を吹いて、止めようとするが止まらない。

 足下に落ちる。


 ズムズムと炸裂音。

 中根は、踊っている。

 それを見て、静流が悪乗り。

 ぽいぽいと、玉を投げ出す。


 おバカな、中根がつい蹴り返そうと足を出す。

 威力が強く、その場で蹴り出した右足が、爆発により一気に背中側へと、振られる。その場で、一回転して背中から落ちる。

「がぁっ」

 頭も打ったのか、ゴンといい音がした。


「ひでえ。冗談じゃすまんぞ」

 さすがに怒ったのか、姿勢を低くした瞬間。

 上から紡が降ってくる。


「どわっ」

 潰れた、かえる状態。

 腹ばいで、ジタバタしている。


「なんだよ、おまえ達」

「言ったじゃない。じゃま。帰って」

「ちっ。分かったよ」


 やっと出て行く中根に。

「忘れ物」

 紡が盗聴器と共に、玉を投げる。


「どわー」

 又、数m一気に吹っ飛んでいく。


「いい加減丈夫だな」

「あいつは、G並だからね」


「あっ。こんな所にも、カメラがあった」

 壁の天井付近。


「いつの間に付けたんだ?」

「どさくさで、指弾でもしたんでしょ。あいつは元々忍者の家系だから」

「そうだっけ」

「そうよ。おかげで質が悪い」

「Sとも、絡むことが多いしね」

「諜報エリートよ」


 何かが引っかかった。

 だが、そんなことより、紡と静流に待ったが出来なかったようだ。

 服を置き去りにして、目の前に飛んできた。

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