第27話 結果オーライ

「まあ。おとなしいし良いか。このままで」

 引き上げて、蓑虫のように吊っておく。


「とりあえず、なんだったっけ。倉庫とサーバ?」

 静流が確認してくる。

「うちから流れた物品と、情報の削除。うまく行けば、国側の新技術をデータごと貰う。たから、サーバーにアクセスできる端末で良い」

 そう説明を返す。


「今時端末からなんて、データの持ち出しが出来ないでしょ」

「プリントアウトして、担いで帰るのよ」

 にまにましながら、紡が静流に説明する。

「嘘でしょ」

「嘘よ」

 危なく静流が、落ちそうになった。


「何とかするのは、そこでピクピクしながら、ぶら下がっている人」


「確か、データを取って端末ごと、クローンを作るって言っていたよ」

 俺が一応説明する。かわいそうだが、凪裏切り者と認識されている。

 上には、今洗脳と依存をかけていると説明してある。

 そのため、基地内では俺たちが側に居ない状態では、歩き回れない。


 ただこの状態。

 なんとなく、自分の中で楽しくなって、やばいと自覚している。

 人を御する? そんな、悪い事が楽しい。

 とても、危険な発想。静流や紡に聞くと、もっとと言ってくる。

 良いのかそれ?

 今何とかしようとしている、政府機関の連中は、こんな快楽にとらわれた連中ではないのか? そう思える。



 そんなことを、思っていると穴があき。

 今回は、中へと侵入する。

 センサーは入口側に一つ。

 絶対的な自信があるのか、セキュリティが甘い。


「さあてと、どれがうちの物だ?中根が棚の上を物色する」

「まだチェックが終わっていない。触るな。持ち上げた瞬間にボンと行くのはいやだろう」

「おう。すまん」

 本当に、潜入のプロなのか疑いたくなる。

 そんな思いが、目に出たのか、いいわけをしてくる。

「そんな目をするな。俺は潜入捜査が専門。泥棒は慣れていない」

「そうか。へまするな」

「分かっている」


 そう言いながら、懲りずにまた触る。

「あっ」

 そう言って、中根の動きが止まる。

 見ると持ち上げた物の後ろから、ひもが棚の後方に繋がっている。


「引っ張るな。緩めるな」

 そう言ってから、ひもの先を見る。

 棚の下に伸び、その先に重りがぶらぶらしている。

 なにかの計測器のようだ。


「こっこれは。先に重りが付いている」

「ああ? それで、どうした」

「なんかの計測器用かな。ちょっとゆっくり下ろして」

 中根が下ろすと、重りはギリギリ下の棚板に触れない。


「これ、もしかしたらトラップか?」

 俺が気になって言う。

「そんなことは、無いだろう」

 そう言って、重りに中根がそっと触れる。

「キュイイイイイ」

 触っている瞬間だけだが、轟音で鳴く。


「バカ」

 全員が、身を潜める。

「あっ。うんん」

 縄が食い込んだのか、凪がうめく。


 来るなよ。皆が思うが、来るよね。

 ガチャガチャと音がして、ドアが開く。

 入ってきた奴は、真っ直ぐ棚へ向かう。


「変ね。何も触れていないじゃない。もうぼちぼち壊れ掛かったのかしら?」

 隠れる所が無く俺はドアの影に潜んだ。

 振り返れば、見つかる。

 仕方が無い。

 後ろから忍び寄り、口をおさえる。

「ごめんな」

 そう言いながら、頭に対し思念波を流しながら、洗脳していく。


 おとなしくなってきたので、服を脱がし、中からも情報と洗脳内容を流し込んでいく。気による洗脳。

 やがてガクガクと痙攣しおとなしくなる。


「初めて見たが、エグいな」

 中根がニヤニヤとしながら、感想を言ってくる。

「まあ確かにそうだが、効き目は強い」


 相手の女の子は、放心状態。


 情報を貰う。

「施設および物品管理課。押収品担当。関谷真琴です」


「此処にある物は、なんだ?」

「ここにあるのは、レジスタンスからの押収品」

「これは?」

 さっき鳴いた奴を指さす。


「これは、縦坑の深さを測るもの。底に付けば鳴きます」

「そうか。此処にトラップは?」

「これとこれに、GPSを仕込んでいます」

「ありがとう。君のIDで、端末操作と情報の抜き取りは出来るのか?」

「はいできます」

「じゃあ。此処で開発された機器や武器の情報を、なるべく多く。詳しく知りたい」


 端末は、隣の部屋ですが、絶えずモニターされています。

「じゃあこれを、使って」

 光記憶素子を渡す。

 ポートはUSBX。記憶容量は256ゼタバイト、大抵の物は記憶できるはず。


「はい少しお待ちください」

 そう言って彼女は、隣に行こうとした。

「ちょっと待った。服は着ていって」

「えっ、でも。ご褒美は、ないのでしょうか?」

 泣きそうな顔で聞いてくる。


「あー戻ってきたら、あげるから」

 そう言うと、嬉しそうな顔になり、部屋を出て行く。


「あーあ。彼女も流生の僕か。もう普通の結婚は出来ないよ」

「人聞きの悪い。繋がりができたと思えば、良いじゃ無いか」

「まあ。そりゃそうだけど、目の前で他の娘とするのは、あまり嬉しくないもの」

「分かっているが、今日のは中根が悪い」

 そう言うと、皆が中根を見る。

 当然、中根は顔を背ける。


「でもね。影でされるのはもっと嫌なのよね」

「そうそう。わかるわ」

 静流の言葉に、紡が賛同をする。


 やがて、彼女が帰ってきて、メモリーを渡してくれると、流れるように下を脱ぐ。

「あー。流生なるべく早く。でも満足はさせてあげて」

 そう言って、中根以外が、壁を向く。


「見んな」

 中根を睨む。

「分かったよ」

 そう言いながら、向こうを向く。

 凪だけが、行為を見ながら、涙を流していたのに、気がつかなかった。

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