第26話 潜入開始

「問題は穴の大きさと、抵抗値。それを補う、導電率をもった液体。無論吸音効果も持たせる。先に浸透させてから、作業をすればいけると思うの」

 紡はそう言いながら、洗面器の中の液体を混ぜている。


 俺は何故か、風呂場でマットの上に寝かされて、それを見ている。

 静流は道具で拘束されて、離れた場所に転がされている。


 ペタペタと体に塗ると、紡は静流に向かう。

 静流にも液体を塗り、なでなでと刺激始める。

 ジタバタしていた静流がおとなしくなり、鼻息が荒くなってしばらくすると動きを止める。

「ふぐっ。んぐぐ」

 そうキャップ付きの口枷で、口もきけないようにされている。


「その全身用の拘束具は、作ったの?」

 紡に聞いてみる。

「んっ?これは、大昔からあるもの。SM用の道具。無論相手が静流だから、強化をしてるけど。こんな事も出来るのよ」

 何かのボタンを押す。


「ふぐっ。んんー」

 そう言って、静流がジタバタし始める。

 もう一度、ボタンを押すと。ジタバタが止まる。

 随分鼻息が荒い。


「やはり、自分が言ったことは実践して貰わないとね。心配しないで、プログラムしておくから。うまく行けばいけるわ」

 そう言って、転がっている静流を見下ろす。


「さあこっちは、楽しみましょ」

 そう言って、俺にも液体を掛ける。

「粘性がね。以外と重要でさ、導電性は良いけど浸透性をあげると、さらさらで足場もぐちゃぐちゃになるから、ある程度粘性はほしいし。そうすると浸透させたくても浸透しない。普通なら振動子を先端に付けて浸透を補助するけれど、一発でセンサーに感知されるでしょ。だから、こんな風に押し込んで、圧入をしないとね。んんっ。あっ」


 意外とヌルヌルとして、気持ちが良いな。

 向こうからの静流の目が怖いが、ふと、眉間にしわが寄ると、ふぐふぐ言いながら。身もだえ始める。

 ああ。プログラムタイマーで、刺激が与えられるのか。



 まあそんな検証?を2時間ほど行い。

 最後だけ、静流の相手をする。

 無論。紡の指示。

 意外とよかったようで、気を失った。



「さて。行ってみましょうか」

 静流が今回。元気が無く、紡が指揮を執る。


 おなじみ地下の通路から侵入。

 新たに、経路を設け。直接目的の場所へ到着する。

 うちから流れた物品と、情報の削除。

 そしてうまく行けば、国側の新技術をデータごと貰う。

 失敗すれば、対策され二度と入れなくなる。


 物資の調達先は減るだろうが、必要以上のリスクは必要ない。


「さて、此処だね」

 紡が機械をセットして、スイッチを入れると、自在錐の様にゆっくりとアームが回転する。一周して中央部を引き抜くと、丸く切り取ったコンクリートの固まりが抜けてくる。

 紡と2人で引き抜き。そっと床に置く。数100kgあるが、今の俺たちなら軽い。


 直径は50cm。持って行く道具を考えるとギリギリのサイズ。

 内側には、自動で展開する枠をはめて、崩落を防ぐ。

 先に、紡お手製の導電性液体の圧入機を走らせ後に続く。無論、1番手は中根。

 掘った後に、素早く枠をはめていく。とっても危険。

 ただ、こいつを後ろにすると、尻をなで回す前科があるから、必然で順番が決まった。


 紡が改良した液体は、最初粘性が低く。時間の経過と共にスポンジ状に固まる。

 だから、タイミングを間違えると、凄くネバネバする。

 そして、失敗すると。今の中根のように、ズボンが固まり脱げることになる。


 半ケツの中根が、ジタバタしている。

「音を立てるな。もう少ししたら、センサーの範囲内になるから。そこからはお喋りも禁止」

「ちっ。分かったよ」


 進行するにつれ、勾配が地味に効いてくる。

 俺たちは良いが、今回も当然連れてきている凪が遅れ始める。

 プレートを静流に渡し、最後尾に下がる。


 後ろから、凪の尻を押上すすむ。

 今回は、この前と違い難易度が高いが、距離はそんなに長くない。


 押し上げ押し上げ進んでいると、凪の歩みが、ちょいちょい止まる。

 そして、這いつくばると体がこわばる。

 ヤバイ。俺は思わず抱え込み。口を押さえる。


 すると、凪がぐったりとする。

 あれだな。前回情報を吐かすために、結構無茶をしたから俺に触れられるだけで、いくようになったのか。

 さっき、お尻を押し上げているとき、湿っていたのが分かったんだよな。

 紡に習った方法で、凪に素早くロープを掛ける。背中側にシートを引く。


 それで、引いていくことにした。


 追いつくと、すでに目的地である監置ダクトの、壁面切断に入っていた。

 俺がロープを掛け、引きずっている凪を見て、静流がうらやましそうな目をする。

 紡に習った、人にロープを掛ける結び方なんだが、何か間違ったか?


 コンクリートの壁は分厚いため、こちら側の大部分は粉砕して、砂にする。

 最後だけは、目隠しの蓋を作るために綺麗にくりぬく。


 垂直の壁を這い上がるため、凪をそのまま引き上げる。

 途中でこちらを見た紡が、目を見開く。

 おもわず、何かを言いそうになったのか、自身で口を押さえる。

 やがて、目的の倉庫の壁に到着。

 こそっと、紡が俺に告げる。

「それ。確かに人を縛る方法だけど目的が違う。特殊な愛し方用。まあ。吊っているから、間違いじゃないけど、凪はもう意識が飛んじゃっているわね」

 どうも、習ったのは亀甲縛りと言う方法で、目的が違ったらしい。

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