第21話 到着

 必死で持ち上げた体。視線の先にはびっしりセンサーが貼ってある。

 センサーの少ない方へ、トラバースしようとするが気になり見る。

 見上げると、5m位先に、赤外による動体センサー。

「あーなるほど、経費削減か」


 くぼみは駄目。壁面に張り付き体重を支える。

 ――滑るなよ。滑ると終わる――


 中根は、低い気温の中で、盛大に汗をかき。温度センサーが大丈夫かと思いを巡らせ昇って行く。

 そして出てくる、オーバーハング。

 心が折れそうになる。

 回り込もうとするが、動体センサーが当然ある。

 ――そりゃそうだ――


 突っ張りながら、身を乗り出し。エッジにセンサーがありませんようにと、祈りながら手を掛ける。

 すると上から、ロープが下がってくる。

 目前に現れた、それ掴んで、這い上がる。

 軽やかに、登り。窪地に体を納める。


 そう。体を納めたのは窪地。ここから少し、オーバハングが連続をする。

 もういい加減。脇を流れている、水の中へ入ったら楽な気がするが、すぐに気を失い落下だろう。かなり水量はあり。相当な高さを落下してきている。


「あー。ありがとう。まいったな。助けて貰うとは」

「若い分。体力がありますから」

「ぬかせ。しかしここから、オーバハングの連続か。どのくらいあるかな?」

「意外と、短いと思いますよ。水が浮いていますから」

 望月に言われて、気がつく。確かに水が、壁から離れている。


「岩の大きいのがあっても、あんな感じにはならないでしょう」

「そうだな。じゃあそれを希望に、行ってみるか。ただ、水平部分に移るところは、危険ポイントだ。水の中から、行った方が良いかもしれんな」

「動体センサーですか」

「ああ」

「分かりました」


 そう言って、望月はヌメヌメと岩肌に張り付き。昇って行く。

「あいつは、トカゲか?」

 すると、静流や出浦も同じように昇って行く。

「なんなんだ一体?」

 いい加減、限界が近い体を奮い立たせ、岩に張り付く。

「手がかりも、足がかかりもないじゃないか」

 ぼやきながら昇って行く。


 5mも上がれば、繰り返しのオーバーハングはなくなったが、上を覗くとこのハングの上はもう横穴だ。ここから、水の側へ移動し、水に負けず中を移動した方が良いだろう。

 だが問題は、背負っている山本さん。

 さすがに、頑張って貰わないとヤバイ。

 彼女のすぐ後ろについて、踏んづけて貰いながら移動をするか。


 背中から降りて貰い、今の状況を説明する。

「踏み台?」

「ええ。2人並んで水を受けるよりは、縦になる方が水圧を受けなくてすみます」

「それはそうだけど、大丈夫かしら?」

「水の深さに寄りますが、水面からあまり出ると、センサーに引っかかります。ボンベを使っても良いのですが、なるべく残しておきたい」

「そうね。少しは頑張ってみます」

「お願いしますね」


 会話中に、皆が上がってくる。

 この上がすぐに、横穴になっていることを説明し、トラバースしてここから水に入ることを説明する。

「大変だが、その方が安全だろう。先頭は水圧がキツいが誰が行く?」

「山本さんを先頭にして、その真後ろに僕がつきますので、踏んで貰った状態で押していきます」

「まあ。先頭は水圧が強いから、気を付けろ」

「はい」

 自信なさげに、山本さんが答える。



「じゃあ、行ってみるか」

 うまいことに、段差は滝の中まで続いていた。

「じゃあ、行ってください」

 彼女が手を伸ばした瞬間に、水圧に負け。めくれて飛んでいきそうになる。

「駄目。これ」

「うーん。先に登り、水よけをを作るから。静流。彼女を押し上げてくれ」

「分かった、気を付けてね」


 エッジ部分に手を掛け、昇るが。

 これは、確かにキツい。

 気を放ち、自分の体の周りに、くさび形にシールドを張る。

 這い上がり、体を回転させ、足を上流側に向ける。

 そのままシールドを張り、水を分ける。


 左手のみを伸ばし、彼女の手を取る。

 静流が押し上げたのだろう。一気に上がってくる。

「そのまま這い上がって。ちょっと待っていて」

 ついでに、静流達も引き上げる。


 這い上がってきた、中根が目を丸くする。

「どうなっているんだ。これは?」

「気を使ったシールドです。このまま先頭を行きますので、付いてきてください」


 水の中でとどめるようにシールドを張り続け、赤外線スコープで周囲を探る。

 範囲は、5m。奥側にもう一段。


 流れの中を進み、途中で檻に触る。

 これはきっと、テンションのセンサー入りだろうな。上流側には刃が付いているし、20cm上には赤外線が走っている。

 見回すが、他にはなさそう。


 陸に上がろうと思い、ふと音響センサーを見る。

 一個付いていた。有効範囲は壁から来ているせいで楕円形。水から30cm手前まで。 

 ラッキー、水際はどう確認しても、センサーはない。


 だが手を突こうとした瞬間、いやな予感がする。

 そっと、手を戻し。立ち上がる。


 川底から、センサーまでは70cm。

 水が落ちれば鳴ってしまうため、十分体の水を切った後。馬になる。

 背中越しに、渡って貰い。はたと困る。

「自分が渡れない」

「馬鹿だろ。おまえ」

 中根が反対側から馬になってくれた。

 何とか飛び越え、事なきを得る。


 そんなことを、繰り返し、数時間後。やっと、マップ上は装置の裏へとたどり着く。

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