第22話 帰路

「物はこの裏だ。音響や振動センサーは無いと思うが、気を付けろ。突き抜ける前に、シート型のセンサーが、張ってる可能性がある」

「ああ。物が貫通したときに、鳴る奴ですね」

「そうだ、ピッチがいくつか分からないが、XYどっちだろうが断線すれば鳴る」

「細い線なら、電圧降下があるから、シートは広く無いはず」


 非破壊の超音波探傷器または、厚さ計を駆使して、各部分の計測をする。

「この上側にあるのが、コネクター部分だろう。そこに向けて穴を掘りコネクター脇からアクセスをしよう。此処と此処二カ所だな」


 ポイントをマークし、ドリルで穴を空ける。

 ドリルにはストッパーを、2mm手前でマークをしてある。


 二手に分かれて、慎重に穴を空けていく。


 ほとんど無い足場。そこで、両手を使う恐怖。後ろから周りを監視している俺たちが背中を支えているが辛い体勢。

 さすがに、中根もふざけていないようだ。

 ちなみに、中根は山本凪を支えている。


 俺は、出浦紡を担当。静流は蓑虫状態で休憩中。


 やがて、ストッパーまで穴があき、その先を慎重に突き崩す。

 穴を空けた切削屑は、集めて樹脂に混ぜ。埋め戻しに使う。


 ファイバースコープと棒を使い、コネクター分を見る。

「あれだな、ラインを貼り付けてある。少しだけテンションを掛けて浮かせろ」

「いけたよ」

 山本さんが嬉しそうに周りに報告をする。

 マニュピレーターを追加で差し込み。接続されているケーブルの中から、目的の信号ラインを探す。


 見つけたのだろう、片側のマニュピレーターを引き抜き発信器を掴み穴に差し込んでいく。


 もう片側で、余分なラインを避け、ラインに発信器を引っかける。

 もう片側でクリップをさせる。


 よし。出来た。

 その時、穴から音が聞こえた。

 サーバ側を、硬質な靴で歩く。カツカツという音。

 ピッピッと言う、音が聞こえ。すぐそばで何か作業を行っている。

 全員が息を潜めて出て行くのを待つが、なかなか離れない。


 後残っている作業は、ファイバースコープやマニュピレーターを引き抜き、穴を埋め戻すだけ。焦って抜きたくなる。

 だが人間。曖昧な視野の範囲内でも、動くものには反応する。

 いま、ファイバースコープやマニュピレーターは、向こう側。


 動くことは出来ない。

 と、思っていたが、山本さんはマニュピレーターを、ゆっくりと引き抜いていた。

 ものすごく、慎重にゆっくりと。

 昔あった、徐々に変化をする画で、人間が変化を認識できないというのがあったが、そんな感じ。


 引き抜かれた、マニュピレーターを受け取る。


 ファイバースコープを、少し抜き。そこへ向かって、チューブを差し込む。

 無論樹脂と砂を混ぜたものを押し出すためのもの。

 すでにチューブの先まで、物は押し出されている。

 少し手前で、チューブから押しだし、器用に出した樹脂をチューブの先で押し出す。手の感じで、数mmだけ押すと、一転手前に引きながら樹脂を押し出しながらチューブを引き抜く。


 手前側は、適当に埋める。

 中は中空になるが、仕方が無い。


 もう片方も、引き抜き埋める。


 すべてを、片付け。

 一息つく。


 皆を、懸垂下降で下ろした後。

 岩のクラックに、噛ましてあったナッツを引き抜く。

 そして、自分は適当に飛び降りる。

 イメージはカモシカ。

 昇るには、大変だったが、以外と早く降りられた。

 無論。中根と山本さんは、固まっていたが。


「さて、帰りだ。安全で楽なのは水の中。途中、数カ所刃の付いたラダーがあるが、どうだろう?」

「ああ。流れていけば良いから楽だな。刃の手前で止めてくれ」

「分かった、じゃあ僕が先頭で行こう」

 そう言って、ラッコのように寝転がり流れていく。


 来るときにあった、ラダーは二カ所。

 気を広げ、ソナーのようにイメージを受け取る。

 

 しばらく下ると、押さえつけられるような感じが頭に感じる。

 流れるのをやめ、立ち上がる。

 この先10数mだろう。

 流れてくる皆を受け止める。

 用心をしながら、下っていく。だが、背後で声が聞こえる。

「あっ」

 そんな声と、水音。


 あわてて、水中に手を差し込む。

 滑って流れたのは、山本さん。

 仰向けなので、アップアップしている。


 右手は差し込んだままなので、左手で背中を引き上げる。

「ありがとうございます」

 そう言っているが、態度がおかしい。

「あにゅ。あの、手を抜いてください」

「ああ。ごめん」

「ひゃん」

 流れるのを止めたため、丁度股の間に腕が入っていた。

 ドライスーツは、ぴったりの薄手だから、以外と触感が伝わるようだ。


 ゆっくり下り、順に向こう側へと渡す。

 

 その後は特に問題なく下る。

 滝の所も、皆には懸垂下降をして貰い、僕は飛び降りる。


 センサーの位置は、大体覚えている。



 そして、センサーエリアは抜け、無事に脱出を行った。


 そして、残置してあったワイヤーを、先に昇り。ロープを垂らす。

 山本さんは、引っ張り上げた。

 穴を出て、一般的な登山者の装いに着替えると、一般の登山道に向けて歩き始める。


「何とか。終わったな」

 皆の顔が、にやける。

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