第18話 次の仕事

「データは大分。取れたようだ。今必死で暗号化を解除している」

「デコードユニットが無いと、取り出された瞬間。暗号情報になるのは面倒だな」

「かといって、サーバごとは盗んでこられないだろう。どこかの山の地下に分散配置していて、集めると野球のドーム並みらしいぞ」

「そうなんだよな。システム全体を地下水で冷却。エコだね」


「ところがだ、そのユニットの一部が、北アルプスにあるという情報が取れた」

「ユニットの一部?」

「そうだ、暗号化アルゴリズム。此処で計算され、デーコード用データが配られている。そこに潜り込み。ばらまき装置を勝手に設置。今の使いにくいサービスに対して改善をこちらで勝手に行う。税金も掛けず良い国民だろう」

「まあな。設置は難しいのか?」


 そう聞くと小さなユニットを見せる。

「本当なら、ネットワークラインの間に噛ませば良いが、通信がどうしたって切断するからな。周囲のケーブルにクリップするだけで良い」

 そう言ってみせるのは、ノイズカット用のフェライトコアのような物。

「懐かしいな。しかし、光ラインにこんな物。怪しくないか?」

「そりゃ、分かる奴が見たらだが、気にしないだろう」


「丁度、中根も帰ってきたのだろ」

「ああ。帰ってきたばかりだが」

「施設で1年以上も遊んでいたんだ。仕事させろ。潜入者の本領発揮だ」

「ああ分かったが、ぶつくさ言われるのは俺だぞ。全く」


 だが、思ったより回答のレスポンスは良かった。

「メンバーは、望月流生に上月静流。出浦紡。中根慎一と山本凪。凪は通信系のプロだったな。まあ5人良いか。うん? 望月流生。今回潜入をしてデータを引っ張った本人じゃ無いか。掘り出し物か。いや、望月? 関係者か。まあいい。若いから色々やってみる事だ」


「うし。と言う事で、命令だ。北アルプスにピクニックだ。お弁当が必要だぞ」

 そう言って作戦内容と、メンバー表を見る。

 下に小さく手書きで、5分後に燃え出す事があると書かれている。


 まあ燃えれば燃えたときだ。要点だけかいつまんで見る。

「地下の水脈を遡ると言う事か」

「そうだ。その辺りは体力と根性。水温は15度以下だ」

「ちょっと待て、私は体力が無いぞ。確かに対象はサーバだから、うってつけだが」

「大丈夫だよ。潜入者中根様に任せろ。おぶってでも連れて行ってやるよ」

「僕も始めてなので、よろしくお願いしますね」

 そう言って、山本凪さんに、ニコッと笑い。握手をする。


「あっはい。サポートお願いしますね」

 そう言って、ぽっと赤くなる。


「こら、凪まで盗るんじゃ無い」

「盗るんじゃ無いって。何よあんた。数回寝ただけで彼氏面するんじゃ無いわよ。あっ。いや。若い頃はさあ、色々あるから。いまは何にも無いから安心してね」

 そう言って、俺の方を向いて、ニコッと微笑む。

 静流がおとなしいな。どうしたんだ?


「静流おとなしいな。どうした?」

「あーうん。大丈夫。流生が居るから。がんばりゅ」

「がんばりゅ? 本当に大丈夫か」

 そっと額に手を当てに行ったが、そのまま手を捕まえ自分の頬にあてる。そして、ため息を付く。


「ああ。大丈夫。そいつは洞窟が怖いだけだから。地下のトンネルには、お化けがいるから怖いんだよなぁ。ぐはっ」

 うん殴られて、飛んでいった。今。大分強くなったからな。


 静流もコアを埋めたからな。

 紡が、言った一言。

「細胞の活性化と老化がおかしい。流生と私は凄く長生きになるかも。よろしくね」

 その一言で、埋めた。

 話を聞いた瞬間。引っ張っていったもの。

 紡が手術する間もそばにいて、見張っていた。

 術後になって、意識の戻った静流に問われる。

「私の心。綺麗だった?と聞かれて、答えに困った」

 胸を開いて、心が見えると、それはヤバイ世界になりそうだ。


「ああ。うん。安心して」

 そう言うと、安心してまた眠った。

 気を使い。流れをまともに整えると、結構早く回復をした。


 そして復活後。僕に勝てると自信満々にチャレンジをしたが、早々に気絶をした。

 必殺、感受性強化の技。これは一子相伝の技で、経絡秘穴を突き。……嘘です。

 気をコントロールして、センサーを活性化させるだけ。そのままあげると、痛みを感じるから調節は難しい。

 体全体をなで、安心と暖かさを伝えていく。

 反応から、首筋や胸。望んでいるところを、じらしながら刺激する。

 まあ後は、色々と。


 それはさておき、準備は、薄手のドライスーツや赤外線ライト。暗視スコープは赤外タイプと音響タイプを持って行く。

 ワイヤーや、アイゼン。かぎ爪などの冬装備もしていく。

 ただし、クライミングカムは使えるが、ピッケルやハーケンなどは打ち込んだまま残置するし、打ち込むのに音がする。そのため使えない。

 

 無論、衣服や手袋は、すべて赤外線を通さない。


 登山者を装い歩いてはいるが、途中から、夜間行動で温度の高い水脈を探す。

「他より数度高い。これだろう。上に上がって、どこかクラックか洞穴があれば良いが、無ければ直接アタックでセンサーと根性試しだな」

「私は、それでもいいぞ」

 静流は、穴へ入りたくないのだろう。

「却下。最後の手段だ」

 中根はそう言い切って、登り始める。

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