第16話 初仕事終了
ぐったりして、荒い呼吸を繰り返す彼女。
そして、サイドテーブルの上では、彼女の端末を介して、管理局のサーバを仲間が蹂躙しているはず。
「ねえ。どうしてこんなに。おかしいわ」
「相性が良かったのかもね。疲れたならお休み」
そう言って、優しく彼女にキスをする。
酔いと疲れ。
色々なものがあったのだろう。
せめてものお礼に、体を巡る気をつかって、マッサージをしていく。
こりを、解し。リンパや血液の流れを活性化と正常化をする。
一時的に、体温が上がる。
「おっと。気を流しすぎたか」
慎重に、続けていく。
険しい顔で眠っていた、彼女の顔がくつろぎ。穏やかな表情になっていく。
どのくらい経っただろう。夜が明け、外が白み始める。
俺は起き出し、そのままになったテーブルを片付け。
ついでに、あり合わせの材料で、朝食を作る。
きっと彼女が、今度会うのは、俺のような偽物ではなく本物の彼。
誰だったか? ああ会計経理課。予算管理係、上島貢だったな。
彼も独身だが、どういう反応を彼女にするのだろう。
温厚な性格で生真面目かぁ。良い奴であることを祈ろう。
玄関は、オートロック。問題はない。
すべてをチェックし、逆に発信器やGPSを付けられていないか、チェックする。
「よし、それじゃあ。また会える日を楽しみに」
そう言って、彼女の部屋を後にする。
一度、拠点に戻り。張り紙の通り掃除をする。
夜までは、動けないから、使った毛布などを、洗濯して乾燥。
床で仮眠をして、行動開始に備える。
そして、公園でダンゴムシを蹴散らし、マンホールへ。
何とか、脱出成功。
そして、時間は朝に戻る。
やかましい、目覚ましを止める。
睡眠時間は、いつもより、恐ろしく短かったはずなのに。ひどくすっきりしている。体も軽い。5歳以上若返った感じ。
彼の姿がないのが残念だけれど、いたらきっと大騒ぎになるわね。
ふと唇に残る感覚で、つい、てれっとなる。にやけている自分の顔が分かる。
「あっ足も軽い。凄いわ。満足ができるエッチって、こんな効果もあるのかしら?」
シャワーを浴びて、肌の張りに驚く。
テーブルの上にある、朝食にほっこりし、メモがないことに落ち込む。
何か一言くらい。残してくれても良かったのに。
化粧中にも、ノビに驚く。
「凄いわね」
何もかも若返った彼女は、元気に出社する。
若返ったのは、体液と一緒に摂取した、ナノマシンの効果。
彼女の、若返りは2年ほど続いた。
これは、流生も知らない真実。
まあ。しばらくして、予算管理係、上島に会いに行き、自身のことを覚えていなくて落ち込むが、会った瞬間になぜか、違うと理解できた。
「夢かうつつか。それとも、疲れていた私へ、神様からのご褒美か」
前向きに、考える事にした。
また会えることを期待して。
「おかえりぃ。どうだった。初女たらし」
「ああ。心が痛む」
「あらまあ。それじゃあ。行きずりの、アバンチュールができないわよ。楽しければ正義なのに」
「そうなのか?」
じっと目を見て、そう聞くと、静流の目が泳ぐ。
「真実の愛を知ると、もう無理」
そう言って、そっと抱きついてくる。
「任務だと分かっていても、焼き餅を焼いちゃった。こんな事初めて」
「そうか」
そう言って、頭をなでる。
「体の具合はどうだい。不具合は?」
30時間以上動いても全然平気だ。
もう一種の化け物だな。
「なら、静流だけではなく。ぼっ。私も相手をしておくれ。30時間は無理だが。私もプラントを埋めてみるか?」
そう言ってぶつぶつと、考え込む。
「ちょっと、シャワーを浴びてから。休憩をするよ。すべてはそれからで良いかい。情報部にも。話を聞いてこないといけないし」
「うん。一緒に浴びる」
「私は、インジェクションタイプをちょっと作って、試してみる。後で部屋に行く」
10日ほどしか、空けていないのに。部屋に戻るとほっとする。
装備を、確認して収納をする。
ぽいぽいと服を脱ぎ、ランドリーマシンへ放り込む。
シャワーを浴びながら、なんとなくバスタブにも湯を張る。
「もう入っているの?」
「ああ」
「お邪魔。あっ洗ってあげる」
当然それだけではなく、愛し合い。風呂に入って、疲れて出てくる。
久々だったからか、風呂場で良かったのかもしれないが、ぐったりした彼女を抱き、体を拭きながらベッドへ運ぶ。
軽食を取り仮眠をする。
しばらくして、紡がやって来たが、体が変に熱い。
寝かせて、気を使い流れをチェックする。
胸の周りに、5つのカートリッジが埋められ、そこから、ナノマシンが広がらず。炎症を起こしている。
活性化しているのを、強引に命令でおさえて、体全体に広げていく。
各部へ広がり、定着してから、カートリッジの活性を元に戻す。
5つのカートリッジは、バラバラだったが、四肢と頭。それぞれに目標を定めたのか、無理なく動作を開始し始めた。
だがそれにより、また熱が始まる。
これはまあ、異物が入ったときの、免疫反応だから。ある程度すれば落ち着く。
ゼイゼイ言っていた、呼吸も落ち着いたから大丈夫だろう。
2人の、幸せそうな寝顔を見て。つい嬉しくなった。
「帰ってこれたな」
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