第34話 抵抗
「これこそが龍帝より受け継がれた力!人の身を極限まで龍へと近づける龍化だ!」己の力に笑みをこぼすギルベルト。だが、フィークスたちのやるべきことは変わらない。接近し攻撃を叩き込もうとするフィークス。セティたちも魔法で援護する。しかし、ギルベルトが周囲に発した波動により、それらの攻撃は打ち消されてしまい、フィークスも吹き飛ばされてしまった。
「そんな!波動だけで攻撃を打ち消すだなんて、」
「ははははは!この通りだ!貴様らは私に攻撃を仕掛けることすらできない!もはや何をしても無意味だ!」ルチェスはこれに対して
「そんなのやってみなくちゃわからないだろ⁉」そう言って先ほどのように全身の力をためてギルベルトに一瞬で接近またしても獣人の力で崩そうとする。しかし、今度は楽々大剣で防がれてしまう。
「一度見た攻撃だぞ?それに身体も強化された以上受け止めることもたやすい。獣と龍には天と地の差があるとわからないのか!」そう言ってルチェスを弾き飛ばし、無防備なところを魔法で攻撃した。
「ぐああ!!」攻撃されて落下するルチェス。間一髪のところでトーマスが受け止めた。
「ご、ごめん」
「一人で攻めかかっても駄目です。ここはみんなで協力しないと!」そう言って5人はトーマスを先頭にして攻撃をしようとした。先ほどの波動攻撃にも対抗できていた。トーマスですら攻撃をすることはできなかったもののそこはルチェスたちがカバーできる。ギルベルトも短い時間で同じ攻撃は連発できないはずだ。全員で攻撃し隙を作る。そこをフィークスが攻撃すればいい。そう思ったとき、
「ほう、全員で一丸となって来たか。1方向の攻撃に特化するのは悪くない。だが、」ギルベルトは大剣に力をため始めた。
「それは、力を合わせれば相手に勝てるときにのみ有効だ。単純な力だけでは私には勝てない!」気づいた時には後ろにいたフィークスの背後に回っていたギルベルト。そして
「神狩」全員の間を強烈な斬撃が通り抜けた。突風のような勢いに再び全員が吹き飛ばされてしまう。
「うわああ!」それぞれはおろか、全員で一丸となってもダメ、いったいどうすればこの難局を突破できるのか。いや、本当に突破する方法などあるのだろうか。
「い、いったいどうすれば」
「どうすれば?希望のちからもここまでのようだな。方法などない!貴様らはここで私に倒されるのだ!」畳みかけようとするギルベルト。だが、
「む?まだパワーが体になじんでいないか。少しばかり、体の自由が利かないな」この姿になって初めてギルベルトが隙らしい隙を見せた。人知を超えた力にはやはり代償もあるものだ。
「フィークス!レダンに使ったあの技よ!」吹き飛ばされた位置が偶然近かったセティがフィークスに呼びかける。火龍斬なら、ギルベルトにも対抗できるかもしれない。
「わかった!頼むセティベルエグに魔法を!」セティがボルケーノをベルエグへと付与した。神狩のダメージはかなりのはずだが仲間のため、この国のみんなのため、フィークスは再び立ち上がった。
「くらえ!火龍斬!!」距離を詰める間にもベルエグの纏う火は威力を増していった。もうすぐ攻撃が届く。そんな時
「動けなくとも貴様を止めることなど造作もないことよ!はぁ!」そう言うとギルベルトはその場で手を地面につけた。その瞬間フィークスの足元の地面が割れ、龍のような魔法がフィークスを突き上げた。
「大丈夫か兄ちゃん⁉」体勢を立て直したルチェスがフィークスのもとに駆け寄る。火龍斬を叩き込むことすらできなかった。動けないタイミングすらしのがれてしまう、どこまでも隙が見当たらない。立つことができないフィークスにギルベルトが詰め寄る。
「ここまでのようだな。どうだ?貴様らのこれまでの力では歯が立たないどころか使うことさえできない状況というのは」止めようとするルチェスを軽くあしらい、とどめを刺そうとするギルベルト。しかし、そこに割って入るものがいた。トーマスだ。接近して攻撃を仕掛ける。それだけでなくエルダも光の魔法で援護する。攻撃を軽々とかわすギルベルト。
「どれだけやっても無駄だ。いい加減あきらめろ!」
「あきらめるわけにはいかない!あいつが、ジェイクが守ったこの人を、ジェイクが守りたかったこの国を!もうお前に奪わせはしない!」槍と盾の攻撃によってギルベルトに詰め寄る。エルダも魔法によって支援。
「その光の魔法は見切っている!」
「ならこれはどうです!今まで見せてこなかったこれなら!」エルダは今までのものとは異なる魔力をため始めた。放たれた魔力は風の流れを呼び、ギルベルトのもとへと突き進んでいく。
「くっ<ブロー>か、初級魔法ごときで、ぬう!?」ブローは風の初級魔法だ。これがエルダの二つ目の属性だったのだろう。しかし、
「その魔力、初級魔法のそれじゃない、いったいなぜだ!」
「私も同じです!フィークスさんがこの世界の希望ならそれを私は守りたい!そのために戦うんです!」
「感情の昂ぶりが魔法の威力を高めたか、小賢しい!」魔法によるダメージとそれによって体制を崩したギルベルトをトーマスの槍による攻撃が襲う。二人の連携は見事で、ギルベルトを追い詰めていった。
「やるな。だがお前たち、少々前に出すぎたようだな!」そういってアデルマードでエルダとトーマスを吹き飛ばした。
「うわああ!」「きゃああ!」これで残るは三人だけ、ここで二人分の戦力は削いだ。あとはどうやっても勝てる。そう思った時だった。背後だ。フィークスとセティが魔力をためていた。ギルベルトが気づいた時にはすでに打ち出すところまで来ていた。
「「食らえ!合体魔法<緋龍>‼」」2人がそう言って魔法を放つ。イザベーナを倒したときのように炎の体の龍がギルベルトへと進んでいく。
「おのれ次から次へと!」大剣での防御だけならかろうじてできる。しかし、先ほどまでのダメージもあり、緋龍の勢いがギルベルトを追い詰める。二人も必死に魔力を送る。それに呼応して龍のアギトも大きく開きギルベルトをかみ砕こうとする。大剣だけでは防ぎきれない二人の渾身の一撃が襲い掛かる。
「なめるな!」そう言ってギルベルトは緋龍を切り裂いた。炎の龍は体を悶えさせ、空中へと消えて行ってしまった。
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